大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

別れと銀光

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「レィアさん、あなたには感謝しても感謝したりません。私が知らない世界を教えてくれたり、私を助け出してくれたり…戦う心得と、ぶ…道具と服すら頂きましたし…」
「ん?おぉ。気にすんな。それに服に関しちゃ、あそこまでボロボロになったもんは要らねぇから、アンタに押し付けたって言った方が正しいしな」
……?
いや、違うか?
聖女サマと話しながら、頭の中では視線のことを考える。
「一応、あなたにも言っておきますが…この事は他言無用でお願いします」
「わぁってるよ。あと、苦しくなったらいつでもメッセージなりなんなり飛ばしてくれ。アーネかシエルが受け取るだろうけど…まぁ、気兼ねなく」
「わ、私はそう簡単にメッセージを飛ばせる立場ではないのですが…」
よく考えれば、あの敷地はアーネの家の一部だ。
んでもって、アーネの家は防犯グッズとかを主に扱う商人。
それを自宅の敷地に使っていない訳が無い。
そして、あの視線は明らかに悪意…もっと言えば殺意に近い何かがあった。
あの視線を感じたのは、聖女サマが来る直前……。
流石に関連がないとは思えない。
誰が何故、そんな視線を俺に寄越したかなどは全くわからないが、一つだけ言えるだろうことがある。
「話し相手ぐらいにしかなれんが…まぁ、お前が好きな時に飛ばしてくれ」
「えぇ、わかりました。
それでは皆様、ありがとうございました」
もし。
もし、そいつが聖女サマに危害を加えるのなら。
この瞬間。
護衛もロクにおらず、この場にいる全員が気が抜けた今、この瞬間。
この時以外、暗殺するタイミングは無く。
同時にこの時が絶好のタイミングなのでは──?
その思考が脳裏に弾けたと同時に、俺は目の端にそれを捉えた。
普通なら、手を前に回し、片方の手をもう片方の手で握るようにして腰の前に置いて立っているメイド達、執事達。
その中で、たった一人。
数いるメイド、その中で、たった一人。
お前がその小さな手に握っている、手のひらからはみ出した無骨な銀の塊はなんだ?
『──!!ヤバい!あれは遠距離から一撃で対象を殺すことが出来る武器だッ!!』
シャルがその答えを知っていた。
それがどんなものであるかを知った瞬間、夏場だと言うのに、背骨が巨大な氷にすげ替えられた気がする程にゾッと身体が冷えた。
「ッ!!」
聖女サマを突き飛ばし、玄関の外に飛ばす。
「っきゃ!!」
「「聖女様!?」」
「レィアさん!?一体何を!?」
聖女サマが叫び、エルストイが困惑の声を上げるが、俺はそれに構っていられない。
メイドが握っている、鈍く光る金属はかなり小さく、細長い筒状のナニカ以外は手のひらに覆われて見えない。
しかしそれが、明らかに聖女サマ──ではなく、
いや、既に鎧は起動し始めている。
どれだけ速くとも、鎧に弾かれて──
バァン!!
それは、森で何度も嗅いだことのある臭い。
あるいは、この家に来た時にも聞いたことのある音。
火薬の臭いと、鼓膜を叩く音。
それを理解し始めた瞬間、胸が焼けた棒で貫かれた様な激痛が走る。
「ッ…ガ!?」
何が起きた?弓矢じゃない。しかし当然、剣でもないし投げナイフでも無い。
全くもって未知の攻撃。
今の一撃で集中が途切れたせいか、身体をほとんど覆っていた鎧が崩れ、無数の金属片となって転がる。
それでも反射的にメイドの方を見ると、そのメイドが持っていた細長い筒が煙を吐いていた。
やはり…あれが……何か………
「レィアさん!!一体何が──」
聖女サマの声を掻き消すように。
さらに二発。
左の太ももに一撃と、右胸に一撃。
遅れたように騒ぎになる中、身体を支えきれなくなった俺の身体は床にぶつかるように倒れこむ。
冷たい床と温かい自分の血液を感じながら意識を手放してなるものかとしがみついていたが、爆音と共に不意に強烈な衝撃を後頭部に叩き込まれ。
俺は辛うじて保っていた意識を絶った。
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