大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

文字の大きさ
上 下
534 / 2,022
本編

答えと確認

しおりを挟む
当然、俺の問いに聖女サマは首を振る。
「先に言っておくが、鉄線を個人で練習していた可能性はゼロじゃない。…ゼロじゃないが、魔族と同一人物ってことの方がまだ確率が高いよな?」
「それは…そう、ですね…」
俺は聖女サマが崇めるグルーマルとかって名前の神について、どんな信仰がされているのかはほとんど知らないが、少なくともいい感情はないだろう。
いや、我らが敵って言ってたから、普通に何のひねりもなく、恨んでたり憎んでたり、そういうのかも知れない。
そういう存在と、手を取り合えるのか。
少なくとも、どれだけ丸くなろうとも勇者には無理だろう。
そして、聖女彼女にも。
シエルはあくまでイレギュラー。
俺の手のひらに乗れる例外は一人までだ。
「さて、これで聖女サマの質問についての答えにはなったか?」
黙って頷く聖女サマ。
「あ、あの…少しいいですの?」
「ん?なんだアーネ」
恐る恐ると言った風に手を上げるアーネ。
「昨日の昼、私と聖女様が休んでいる時にあなたが外出、護衛はシエルちゃんに任せている間に聖女様が攫われ、あなたと私、そしてシエルちゃんで情報を探した結果、色々あって前の晩に行った教会が怪しいと判断したあなたが一人で特攻。その間に私はエルストイに警備を強化するように言って来て、丁度そこに走ってきた聖女様と偶然出会って教会へ向かうと、教会の近くにあった地下への階段を発見、下へ降りて──」
「………アーネ、はなし、ながい」
「そーだそーだ。もっとまとめて言いやがれ」
「あの、その辺は分かってますので…」
周りから文句を言われ、一度閉口するアーネ。
そういやコイツ、頑なに俺の名前呼ぼうとしねぇよな。嫌いだからってのにしても酷いもんだ。
一度咳払いをし、もう一度口を開く。
「…失礼しましたわ。では質問をしますわね」
「おう、最初からそうしてろ」
「半分正解、と言ってましたけれども、何がどう半分正解なんですの?」
「……あ?」
俺そんなこと言っ…たな。
「文字通りだ。半分魔族」
「──ッ!?」
その言葉に過剰反応したのは聖女サマ。が、質問したのはアーネなのでそのままアーネに答える。
「俺、お前達が用意した聖女サマ用の変装魔導具みたいなのって効かねぇらしいんだよ。つまり、同じような変装してたら見りゃわかるんだよ。…齟齬があると嫌だから、一応聞いとくと、神父の外見は?」
「確か…」
「目、髪、肌、全てが白でした」
答えたのは聖女サマ。
「そ。んじゃ同じだ。どっちの親か知らねぇけど、魔族の方の血があまり人外見表面に出なかったらしいな。けどまぁ、混血ならそういうこともあるだろ」
俺の膝元にいる混血児については何も言わず、そう言う。
「これで質問は?無い?あっそ。んじゃお終いだ。…ところで、俺ってこの部屋から出ていいの?」
しおりを挟む

処理中です...