大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

魔法と確認

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「おし、ありがとうアーネ。
「はい?どういたしましてですの」
「……あの、理由を教えて欲しいのですが…」
ふむ、そうだな。
「魔法の仕組み、って分かるか?」
「はい、一応は。火をおこして水を沸かせるのですよね?」
「…は?」
なんぞそれ。
「あ、それは有名な例え話ですわ。魔力を薪に見立てて、それを燃料に魔法をおこし、それで結果お湯を得るという、子供に良く使う例ですわね。…もちろん、他に色々と細かい手順などがあるのですけど…」
「…ほーん」
初めて聞いたが、なるほどわかりやすい。
「まぁ、わかってはいるんだな?」
「はい、一応人並みには。でなければ復元魔法どころか治癒魔法すら使えませんので」
そりゃそうか。
俺の膝元でクエスチョンマークを大量に飛ばしているシエルはわかってない風だが、また今度アーネにでも詳しく教えてもらえばいいだろう。
「それで、それがどうかしたんですか?」
「もちろん、それがどうかしたんだなぁ」
と、口調を真似たのがあまり面白くなかったらしい聖女サマがムッとした顔をした。
おぉ怖い怖い。あんまり聖女サマをイラつかせない方が良さそうだ。
「今のたとえだと、魔力を燃料にした結果、人が消えた訳だ。自発的に」
「そうなのでしょうね。私は寝込んでいので知りませんが」
「…?」
「…はい?」
「だから、どうやって?肉を焼くなら火をおこせばいい。喉を潤したければ水を飲めばいい。髪を乾かしたければ風を起こせばいい。だが、人を払わせる人払いの魔法…何をすれば屋敷から全員人が出ていくんだ?」
「それは…火事の幻影を見せた、とか…」
「それならモーリスさんとかは屋敷から重要な書類とかを持ち出したりしそうだし、そんな幻影が見えれば絶対に誰かが通りの人に水をかけるのを手伝うように言ったりしそうだが、そんな様子は一切無かったぜ?」
「では、家族が危篤だという話を聞いて…」
「シエル、お前の家族は?」
「………おかあさんだけ、だよ?」
その答えに若干心苦しさを覚えるが、頭を撫でてやり、何となく有耶無耶にする。
「他は?」
「……咄嗟には思いつきません。…というか、シエルさんはどうして部屋を出たのですか?」
まぁ、聞けば早いよな。
しかし答えは。
「………わかんない。ここに、いたくないって、おもったか、ら?」
答えにならない答えだった。
「さて、ここで確認しようか」
聖女サマを一度見ると、だからどうしたと言った風な顔をしていた。とはいえ気にもなっている模様。
まぁ、神父を斬ろうとした話と魔法の話は俺以外からすると繋がってそうにはないわな。
「燃料とお湯はあるのに火がない。こんな事は魔法で出来るか?答えはアーネが言ったようにノーだ。だけどな、この魔法という技術…?」
そこでアーネと聖女サマの顔がなにかに気づいたと教えてくれた。
「妖魔族──魔族が関わってるに決まってるだろうが」
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