大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

緋眼と剣姫

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そんな訳でユーリアが再度魔法で地面を弄り、普通の地面に戻った後、とりあえず俺が壁の中に入る。
さてどうするか。聖学祭へ向けての調整という目的なら金剣銀剣を使わずに戦ってみるのも一興。しかしそのための武器も無ければ、無手で勝てる相手でもないか…
とりあえずマキナを装備し、首を傾げる。
んー…とりあえずで借りるか。
「おいユーリア!」
「どうしたー?レィアー?」
「悪いが剣貸してくれ!二本とも!」
「はぁ!?」
素っ頓狂な声を上げるも、とりあえずは放り投げてくれる辺りは良い奴だよな。
投げられた剣は上手いこと二本とも俺の目の前の地面に突き立つ。刃こぼれとかしないよな?と思いながら引き抜くが、とりあえずは大丈夫そうだ。
片手剣にしては長く、両手剣にしては短い銀の両刃長剣。元々これを両手で振っていたユーリアが、結局双剣になってもこれを片手で振り回しているというのは正直驚いた。いやまぁ、武器が変わると戦技アーツの調整が必要だから気持ちは分かるんだが。
しかし思った以上に重いな。マキナの補正を一時的にあえて切っているので、素直に今感じている重さがこの剣の重量ということなのだが…あれ?普通の金属の剣ってこんなに重かったっけ?
…え?つかユーリアはこれを片手でぶん回してんの?両手持ちだと少し軽いような感じとは言え、片手で持つなら結構重いと思うんだが…マジか。あいつ、実は筋肉ムキムキだったのか?いやでもよく考えたら初めて会った時もアップで筋トレをかなりしてた記憶が…
純粋な重さなら今の銀剣の方が圧倒的に重いのだが、そこまで常識外れな重さでは無いため、回転の威力を乗せるほどでは無いというのがまた絶妙に使いにくい。かと言って今から「スマンやっぱ要らん」というのもユーリアに申し訳ない。早くも思いつきで剣を借りようとしたことを後悔し始めた。
『おい、何剣握ってぼーっとしてんだ。《剣姫》が降りてきたぞ』
「ん、あぁ。マキナ、補正かけてくれ」
『了解しました』
自身の筋力がマキナによって底上げされ、結果的に剣が軽く感じる。ちなみに、マキナの重力魔法はマキナ自身にしか干渉できないので、この剣自体を軽くすることは出来ない。
軽く踊るように剣を振り、微妙に身体のバランスや剣の重心を把握する。
「ん…まぁこんなもんか」
リーチは双剣状態の銀剣よりやや長い。その影響か、剣の作りの関係か、重心がやや先端に寄っているため、尚更重く感じる。
「調子はぁ…大丈夫ぅ…?」
「ん…まぁ大丈夫だと思う…ユーリア!この剣って特別壊れやすいとか無いよな!?」
壁の上のユーリアにそう声をかけると、彼女は少し考えた。
「材質がミスリル多めだから、少し壊れやすいかもしれんが、余っ程な使い方をしなければ折れたりはしないと思うぞ!」
そういやユーリアの剣は杖としての機能も持ってたな。確かミスリルって結構柔らかいんだっけか?なら結構気をつけた方がいい?
ふむ、とはいえ、何気に普通の剣を握るのは俺が生きてきた中でも数えるぐらいしかない。どのくらい無茶しても大丈夫なのかよく分からんな。
まぁ相手が《剣姫》だし、最悪の場合は適当な剣一本ぐらい借りるか。
戦技アーツ大丈夫か?』
「さっきのアレで調整済みだ。把握はした」
感覚的に、いくつか身体に馴染んだ戦技アーツなら撃てると何となく分かる。ただ、それ以上は真面目にこの剣を慣らす時間が欲しい。
が、どの道聖学祭では剣は別の剣で慣らす必要があるのでこういう機会も悪くない。
「よし、やるか」
「そうだねぇ…じゃぁ………始めます」
向こうもスイッチが入ったらしい。
特に合図らしい合図も無く、互いが同時に動いた。
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