大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

部屋と変装

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聖女サマの部屋に行くのはまぁ、簡単だった。
そりゃだって、ほとんど俺達の部屋に戻るだけだからな。
問題はその後。
「はい?外出ですか?」
「おう、飯とついでに鍜治屋行かなきゃならんから、一緒に来てくれねぇ?」
「…お一人で行けばよろしいのでは?」
「モーリスさんに「あんたが聖女サマから離れたらダメじゃん(超意訳)」って言われたから、離れる訳にはいかんのだよ…」
「は、はあ…?わ、わかりました。少し待っててください」
と言われて早三十分。
部屋からはドタバタと何やら騒々しい音がずっと止まらない。
ちなみに三十分前からお腹空いた、と言っていたシエルには、ちょくちょくメイドさんや執事さんが通りがかり、焼き菓子などをくれたので、お腹の方はそれなりに膨れているようだが、暇だったのだろう。
…いや、暇なのは分かるけどさ。
俺の髪で遊ぶの、止めない?
ちなみに今はシエルの注文でブランコを作って遊ばせている。
『何だかんだ言ってシエルの注文に文句は言わない辺り、甘いよな』
…まぁ、自覚が無いことは無いので否定はしない。
「……お待たせ致しました」
部屋から出てきたのは。
「ん?」
目をしばたかせると、目の前にはやはり聖女サマ。
違う点を強いて言うなら、長く伸ばしていた髪を巨大な三つ編みにしていることだろうか。
しかしついさっきココにいたのは──。
「………おねえちゃん、だれ?」
『…誰コイツ』
二人の反応を聞き、俺が今さっき見たものは間違いではなかったようだと思い直す。
『ん?詳しく言えホラ』
「あー、聖女サマ?アンタ今、もしかして変装したりしてる?具体的に、赤茶色の髪とこげ茶の目をした三つ編み…とか?」
「…えぇはい、お借りしている魔導具で」
ふぅん。じゃあシャルとかシエルにはそっちに見えてんのか。
「………まさか、効いていないんですか?」
若干青ざめた顔の聖女サマがそう聞く。
「あー、えー、うん、まぁ」
『…理由はなんだ?緋眼…は使ってるわけ無いよな?魔法返しはこの手の魔法にほとんど効かないし…』
んー…?あ。
「なぁ、その魔道具ってどんな効果なんだ?」
『心当たりでもあるのか?』
まぁ。
「えっと…『光を曲げ、色と形を変える魔法』がかかってるはずです」
納得した。
「んじゃ多分俺に効かねぇな。こっちのスキルが見たものを勝手に補整かけてんだと思う」
目に入った光とかを増やしたり減らしたりして、元のものを再現してるんだと思う。
多分。
「…はい?あなたのスキルは?」
「…説明が面倒なんだが、まぁ俺の身体は、多少無茶でも俺の思った通りに動いたりする。その応用で目に入った光が微調整されて、元の聖女サマになおってる…って事だと思う」
無意識下にやってるから分からんのだが。
「…はあ」
「まぁ気にすんな」
訳わかんない、みたいな顔してる聖女サマを適当に相手して、ようやくアーネの家から出る。
…ほとんど昼だよな、これ。
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