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本編
目覚めと痣
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のそり、とベッドから恐ろしく怠い上半身を起こす。
頭が重痛い。寝すぎた時特有の鈍い頭痛だ。この痛みも久しぶりに感じる。
一体どれだけ寝ていたのだろうか。そう思って時計を見ると昼前。いつも通りならそろそろ午前の授業が終わる頃だ。
「マキナ」
小さく、そして掠れきった声だが、どうにか音は出た。
しかしマキナからの返事はない。どこか別の場所に置いてあるのか、それとも魔力が足りなくて動いていないのか。
部屋には誰かいる気配もないので、とりあえず起きて部屋を出てみようとベッドから抜け出す。
その時になって、初めて気づく。どこも不自由がない。先程の頭痛以外はどこも痛くもないし、動かない所もない。
…ふむ、身体に異常はない、か。
先にこちらの方が気になったので、軽く服を脱ぎつつ、脱衣場の鏡で身体を隅々までチェックする。
見たところ肌も全身きっちりあるし、身体を大きく裂いていた傷は塞がり、最後の鎧魔族の時には感覚が無くなっていた膝も完治済み、剥がれかかっていた右の手のひらも傷は多少残っているが、それぐらいか。
そこまで視線が行って、そう言えばまだ治っていなかった右手の痣を見る。
…明らかにこれ、だよな。
傷が治ったとはいえ、それはあくまで俺の主観の話。治してくれたであろうアーネの話を聞かないとちゃんとした判断は下せ──ん?
廊下の方から音が聞こえる。
足音、複数。話し声も聞こえるが、誰の声で何の話かはまるで分からない。
あぁいや、一人だけ聞きなれた足音と声がした。
アーネだ。
という事は、ほぼ間違いなく部屋に帰ってくるか。とりあえず真っ裸だと不味いので服を着ておこう。
そう思って服をさっさと着、脱衣場から出た所で、部屋に入るアーネとちょうど鉢合わせた。
「!?」
「よぉアーネ。おはよ──んぶる!?」
突然強烈なタックルもといハグを食らい、脱衣場に後頭部を打ち付けかける。髪で支えられなかったら再びベッドコースだった。
「貴方、もう大丈夫ですの!?」
「傷は見た感じ全部完璧だったと思うが。つーか、治したお前が分からんかったら俺も分からんぞ」
そのまま髪で身体を押し上げて立ち上がる。いつもの厚底ブーツも履いてないから身長差がいつも以上に大きく感じる。
「傷はとっくの昔に治ってると知ってますわ。ただ…傷が治ったのに三日も寝たきりで、生命力もどんどん減っていきますし…もしも今日中に目覚めなかったら保健室で本格的に調べるつもりだったんですの」
何気に不味い状況だったらしい。というか三日か。随分と寝ていたようだ。
「そうか、なら俺の方は問題ない。問題ないんだが…そっちの後ろにいる奴らはなんだ?」
ほとんど視界いっぱいにアーネが広がっているのだが、頭を少し動かせば多少は視界が確保できる。
何人かいるっぽいのは分かるのだが、それぐらいしか分からない。そう思って聞いたら、アーネの代わりに聞き覚えのない声がした。
ただし。
「コイツが《緋眼騎士》なんけ?えらい可愛らしい奴やんな」
聞いたことのある喋り方で。
頭が重痛い。寝すぎた時特有の鈍い頭痛だ。この痛みも久しぶりに感じる。
一体どれだけ寝ていたのだろうか。そう思って時計を見ると昼前。いつも通りならそろそろ午前の授業が終わる頃だ。
「マキナ」
小さく、そして掠れきった声だが、どうにか音は出た。
しかしマキナからの返事はない。どこか別の場所に置いてあるのか、それとも魔力が足りなくて動いていないのか。
部屋には誰かいる気配もないので、とりあえず起きて部屋を出てみようとベッドから抜け出す。
その時になって、初めて気づく。どこも不自由がない。先程の頭痛以外はどこも痛くもないし、動かない所もない。
…ふむ、身体に異常はない、か。
先にこちらの方が気になったので、軽く服を脱ぎつつ、脱衣場の鏡で身体を隅々までチェックする。
見たところ肌も全身きっちりあるし、身体を大きく裂いていた傷は塞がり、最後の鎧魔族の時には感覚が無くなっていた膝も完治済み、剥がれかかっていた右の手のひらも傷は多少残っているが、それぐらいか。
そこまで視線が行って、そう言えばまだ治っていなかった右手の痣を見る。
…明らかにこれ、だよな。
傷が治ったとはいえ、それはあくまで俺の主観の話。治してくれたであろうアーネの話を聞かないとちゃんとした判断は下せ──ん?
廊下の方から音が聞こえる。
足音、複数。話し声も聞こえるが、誰の声で何の話かはまるで分からない。
あぁいや、一人だけ聞きなれた足音と声がした。
アーネだ。
という事は、ほぼ間違いなく部屋に帰ってくるか。とりあえず真っ裸だと不味いので服を着ておこう。
そう思って服をさっさと着、脱衣場から出た所で、部屋に入るアーネとちょうど鉢合わせた。
「!?」
「よぉアーネ。おはよ──んぶる!?」
突然強烈なタックルもといハグを食らい、脱衣場に後頭部を打ち付けかける。髪で支えられなかったら再びベッドコースだった。
「貴方、もう大丈夫ですの!?」
「傷は見た感じ全部完璧だったと思うが。つーか、治したお前が分からんかったら俺も分からんぞ」
そのまま髪で身体を押し上げて立ち上がる。いつもの厚底ブーツも履いてないから身長差がいつも以上に大きく感じる。
「傷はとっくの昔に治ってると知ってますわ。ただ…傷が治ったのに三日も寝たきりで、生命力もどんどん減っていきますし…もしも今日中に目覚めなかったら保健室で本格的に調べるつもりだったんですの」
何気に不味い状況だったらしい。というか三日か。随分と寝ていたようだ。
「そうか、なら俺の方は問題ない。問題ないんだが…そっちの後ろにいる奴らはなんだ?」
ほとんど視界いっぱいにアーネが広がっているのだが、頭を少し動かせば多少は視界が確保できる。
何人かいるっぽいのは分かるのだが、それぐらいしか分からない。そう思って聞いたら、アーネの代わりに聞き覚えのない声がした。
ただし。
「コイツが《緋眼騎士》なんけ?えらい可愛らしい奴やんな」
聞いたことのある喋り方で。
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