大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

文字の大きさ
上 下
1,614 / 2,022
本編

魔族と戦闘2

しおりを挟む
「!!」
ナイフは鎧に一瞬阻まれるも、それを容易く貫通。俺の喉に横から食らいついた。
不味い、このまま抉られでもしたら──
「ッ!!」
黒剣を抜いて魔族がいるであろう場所へ攻撃。しかし手応えはなく、頭も動く。避けられたらしい。
「ッ、ガ!!」
引っこ抜いたナイフには小さな返しがついており、傷口がズタボロになるようになっていた。
「クソッタレ…」
引き抜くと同時に髪で縫って糸で補強してあるが、今のは結構ヤバかった。
瞬間移動のスキルなら、多分魔力でも消費してるんだろうが、魔族の膨大な魔力なら実質的な枷は無い。ユーリアのようなクールタイム式だと一番良かったんだが、あの連発を見るにそうでも無いらしい。
血を集め、カサブタを強引に作って傷を塞いだ所で再び武器持ち魔族が俺の目の前に現れる。
「不死身か?首を刺したんだがな」
「その程度で死んでちゃお前らの相手は務まらねぇんでなァ!!」
黒剣を抜き放ち、魔族目掛けて振る。
しかし予測されていたか、これを瞬間移動で回避。音も前動作もなく予測から外れた位置に飛ぶ瞬間移動が厄介極まりない。
「クッソが!」
後ろから斬り掛かる魔族の攻撃を伏せて回避、足を髪で拘束するも、やはり瞬間移動で抜けられる。
『何か弱点か…なくても目印ぐらいはあれば…』
一か八か、《終々》か《音狩り》で倒すか。
しかし構えを取る余裕とあの魔族を捕捉する余裕があるかどうか。
仮に一度でも不発すれば、この戦技アーツはそいつに対して絶対に発動しない。だからこそ、見誤ってはならない。だが早く決めなくてはユーリア達が不味い。
その僅かな逡巡が、付け入る隙を与えてしまった。
剣を持った魔族が再び背後に現れ、咄嗟に振り返る。黒剣で切りかかると、珍しく剣で受け止めようとした。
それごと断ち切ると、魔族は少々驚いたような顔をして、さらに瞬間移動。頭の上に出た。
「クソ!」
「成程、触れるのは危険か。覚えておこ、う!!」
どういう力を込めたのか。逆立ちの状態で出現した魔族は、俺の頭を両手で引っつかみ、身体の勢いを乗せて思い切り投げ飛ばした。
咄嗟に魔族も捕まえようと髪を伸ばすが、もう既に魔族は居ない。
『おいレィア、前──』
シャルが呻くようにそう言う先を見ると、そこは足の踏み場もない溶岩地帯。どうやって作ったのかは分からないが、あんなもんに放り込まれたら普通に骨まで黒く焦げる。
「マキナ!」
『了解しました』
即座に傘を開いて勢いを減速。ある程度弱った所でマキナによる足場を生成して溶岩地帯から離れる。
──奴はその瞬間を待っていた。
「がっ!?」
背中が焼けるような、それでいて鮮烈な痛み。背中に伝う嫌な感触は自分の血のもの。
マキナがほぼ解除されたこの瞬間を狙って、剣の魔族が新しい剣を携えて再び飛んできたのだ。
「浅いか」
「野郎…!」
偶然か、俺の髪をすり抜けるような縦斬りだったのが最悪だった。横方向なら髪が防いでくれるが、縦は都合が悪い。いつもの黒コートがなければもっと深いダメージを受けていただろう。
しかも魔族はさらに瞬間移動で飛び直し、俺の周りに縦横無尽に現れ、攻撃を仕掛けてくる。
黒剣の仕組みとして剣の鍔迫り合いは絶対に出来ない。というか、剣同士が打ち合う事が出来ないので必然的にほとんど回避しか出来ない。そのせいで足場をより多く必要とし、マキナの防御が薄くなる。
しかもこちらの攻撃は当たらない。今の不安定な足場では《終々》も《音狩り》も撃ちようがない。この場で可能性があるとすれば、第六血界による超加速ぐらいか。
どうする?
しおりを挟む
1 / 2

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

種族統合 ~宝玉編~

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:481

まほカン

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:32

【完結】辺境の魔法使い この世界に翻弄される

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:94

特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:85pt お気に入り:666

処理中です...