大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

乱入と教会

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アーネに街の何ヶ所かを案内されてから数日。あれから何回か鍛治場に行ってオリジン・ウェポンについて話を詰めたり、ふらりと一人で街を歩いたりと、それなりに自由にさせてもらっていた。
暦の上ではとっくの昔に八月に入っているが、聖学は登校日なんて無いのもあって、それなりに曜日感覚もボケ始めた頃。
「たっ、たたたたた、たたっ、た、大変ですのよぉぉぉぉ!?」
ドタバタという音が廊下から聞こえたかと思うと、急にアーネが俺達の部屋にノックも無しに飛び込んで来た。
俺はシエルを膝に乗せ、一緒に絵本を読んでやっていた所に姦し無駄乳娘の乱入。
「…なんだ?今夜の夕食のメニューが一品減ったのか?それとも食いすぎて体重計に乗ったら予想外の数字が出たのか?前者なら間食を勧めるが、後者なら毎日食ってるクッキー生活を止めることをオススメする」
「違いますわよ!!なんで食べ物関連ばっかりなんですの!?」
え…だって…個人的にはアーネ=食い物の方程式が成り立ってるんだが…。
「…まぁ、その辺りはどうでもいいとして」
「良くありませんわよ!?」
食いつくな。けど無視。
「何が大変なんだ?」
話が進まん。
「この街に来るんですわよ!!」
「だから何が」
「聖女様が!!」
「へぇ、いつ?」
「三日後ですわ!!」
「ふーん」
聖女サマねぇ…ふーん。
…は?
「聖女サマ?いつ?どこに?」
「だから、三日後に、ここ、ゼランバに!!」
……………。
『おーい、今代の?おーい』
「………おかあさん?」
ぺちぺちとシエルに頬を叩かれてやっと意識がこっちに戻ってきた。
「…エイプリルフールは四月だぞ?」
「嘘じゃありませんわ!!中央、王都から帰ってきたお父様とうさまから聞いた確かな話ですわ!」
あぁ、そうか。アーネの父親ってつい昨日帰ってきたのか。
しっかし。
「何でまた急に?普通、こういうのってもう少し早く伝えられて、盛大に宣伝しながらやるモンじゃねぇの?」
「わ、分かりませんわ…お父様が知り合いの聖職者様から極秘に言われた事らしいので…」
「ふぅむ……」
そういや、この街には一つだけ教会があったっけな。あんまり繁盛してる様子は無かったが、それなりに熱心な信者がいるらしく、誰もいない、寂れた教会って訳でも無さそうだったし。となるとやはりこっちに来る理由が分からんな…。
聖女サマの主な仕事って言ったら結界の維持にその修復、教会の教えを広める事と、あとは英雄を引き連れての辺境の魔獣討伐…か?どれもここゼランバにくる理由としちゃあ薄いな…。
「まぁ、わかったよ。極秘に、って話だったな?一応黙っとくよ」
実際は何一つ分かっちゃいないが。
それに、極秘の内容をなんでまた一商人に過ぎないはずのアーネの父親が知ってる?
俺が頭を悩ませる中でシエルが。
「………せいじょさま?」
一人だけ意味が分かっておらず、首をかしげていた。
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