大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

着地と緋眼

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「よし、頼むぞマキナ」
『了解。展開します』
真正面に立つ校舎、そこへ突っ込むように走る俺の前にマキナが即席の足場を作成。
そこに乗り、さらに足をグッとたわめた。
まぁ実際は。
即席の足場というより、もっと正確に言って射出機カタパルトなのだが。
『射出します』
マキナがそう言ったと同時に俺は跳ん──いや。
飛んだ。
「ィヤッハァー!!」
『大丈夫か?頭』
「よく分からんが最高にいい気分だ。今ならどんなことが起きても前向きに捉えられそうだ」
なんというか、幼い頃思い込んでいた全能感、万能感が身体を満たしているような気分。それでいて、心の底からプラスの感情がずっと湧き出し続けているような。
一瞬、校舎の上に陣取っている学校長と、そのサポーターだろうか。数人の先生や生徒と目が合った。
どデカい弓を構えて放つ先は訓練所方向。正面は完全に二つ名持ちに任せる形にしたか。
相当な初速で飛び出した俺にカタパルトとして置いてきたマキナがようやく追いつき、空中で鎧を纏い直す。さらに黒剣を再度腰に装備して完全武装。
落下地点は既に見えている。どころか、超速で近づいてくる。
無数の剣、飛び交う魔法。しかし、それらの量に見合わない少数の戦闘。
「派手に行くか」
『は?』
ポツリと呟いた俺の言葉に、シャルが一瞬呆けたように言った。
今までに無いような血呪の倍率を発動し。
握りしめた拳を遠慮なく、思い切り。着地と同時に叩きつけた。
「ハッハァ!!」
凄まじい破壊力の拳を地面に叩きつけると同時に、一度マキナが衝撃を吸収しきれずに爆散する。
しかし即座に再集合、再び俺の鎧に戻る。
「なん、だ?お前は…?」
俺の着地点は魔族と二つ名が戦っていた丁度ド真ん中。状況的には目の前に魔族がいて、すぐ後ろには仲間がいる。
それでも佇まいが少々異様だったのか、魔族がそう聞いてくる。
「さて、誰でしょう?」
肩をすくめてそう言うと、一瞬で距離を詰め、剣を抜く。
「速──!?」
長さはいつもの手頃な長さ。戦技アーツはまだ不要。
斬りかかった俺に対し、斬撃は効かないとでも思ったのか、魔族は横から叩き落とそうとする。
それを見て方向を微調整。腕に垂直に剣が落ちるよう直し、何の抵抗もなく腕をすり抜けるように振り抜く。
「え?」
まだ腕は落ちていない。だが剣がすり抜けるという異常な光景を見た魔族が不審に思う。
慌てて手を引き戻す隙が生まれ、その隙に逆の剣を抜いて胴を逆袈裟に切り裂く。
「あばよ」
なんの手加減もなくその魔族の胸を蹴り飛ばすと、斬られた腕と斜めの下半身だけが残って上半身が後方にすっ飛ぶ。
「…レィアか?」
ユーリアの困惑したような声が後ろからした。
「あぁその通り。よく見た格好だろうが」
そう言いながらゆっくりと振り返ると、何故か無数の剣が俺に向けられている。
「どうしたルーシェ?何で俺に剣を向けてんだ?」
「ッ………!」
ズタボロになりながらもこいつだけは、という決死の覚悟。しかしそれでいて、今の俺の反応で揺らいだような、謎の反応。
「率直に言うとだな、今の君からは人では考えられないような膨大な魔力を持っているのが感じられるんだ。それこそ魔族と見紛うような」
赤く光る緋眼でユーリアと《剣姫》を見ると、やはりどちらも満身創痍。特にユーリアは酷く、気のせいか熱もあるらしい。限界を超えて戦っていたようだ。
「あー?あぁ。まぁ。そいつはちょいと事情があってなぁ。気にすんな。そう問題は無い」
そう言って再度魔族の方を向く。魔族が動かなかったのは新しく乱入してきた俺を警戒していたせいだろうか。
魔族達の視線は俺に集められ──いや、俺の眼に集中しているような気がした。
それに気づいた俺は、黒剣にかけていた手を離して、腕を組んで名乗りをあげる。
「あぁその通り!俺はお前らの思っている通り、緋色の眼を持つ血塗られた殺戮者だ!千の怨みも万の呪詛も飲み干して、築いた屍の上でなおも剣を振る緋眼ひがんの騎士だ!かかってこいよ腰抜け魔族!震えて動けないなら──」
そっと腰に手を当てる。
数は残り五名。きっとこいつらが結界を破った奴らの最後の魔族。
「俺が行くッ!!」
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