大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

狙いと再起

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その前に少し話があります。と学校長が言った。
「恐らく今回、敵の目的は研究所の研究データです」
「なぜそうだと?それに、なぜ今その話を俺に?」
「……魔族からしても聖学の研究や情報は有益な物が多いのです。特にラピュセが力を入れて取り組んでいるスキルについての研究…あれは魔族のスキルを奪う魔法をより強く発展させてしまうでしょう」
なるほど、それが狙いか。
「加えて…この機に、その素体となる優秀なスキルを持つ生徒を攫うことも視野に入れている可能性が高いです」
「………。」
いや…いや、そうか。むしろそちらの方が可能性としては高い。
聖学にいる生徒達のスキルの多くは戦闘に向いている。
当たり前だ。そうでなくては生き残れないのだから。一年の時に会ったクアイちゃんなんて例外中の例外。むしろなんでテストに受かってここに来る事が出来、未だ聖学にいるのかが正直謎だ。
どこかの都市に紛れ込み、人知れず誰かを攫ったとしても、その者が戦闘に有利な能力を持っているとは限らない。
しかし、この学校において言うのなら、ほぼ間違いなく全員が優秀な能力を持っている。
二つ名持ちである《雷光》などその最たる物だろう。身体が雷と化す能力なんぞ、本来無敵もいいところだ。
そして──
「気づきましたか」
「ああクソ、気づいたよ。畜生、そういう事か」
当然アーネも狙われる。いやむしろ、彼女が一番危ういまである。
彼女は一度攫われている。その能力を目当てに、聖学の生徒の中からただ一人、彼女だけが攫われた。
あの日、アーネは自室にいたはずだ。外に出歩いていた訳ではない。
魔族はわざわざ生徒や先生に見つかる可能性があるにも関わらず、部屋の中にいた生徒を一人攫い、そして姿を消した。
明らかに魔族は彼女を狙って攫った。アーネの情報は向こうに漏れていると思って間違いないだろう。
ならば、魔法を扱う魔族にとって、非常に条件の良い生徒の情報が一人分確保されている事になる。
狙わない手はないだろう。
「本当、お前はどうやったら俺をやる気にさせるか心得てやがるな」
「教育者ですから」
「ほざけ」
そう言って出口へ向かう俺。
「来ないのか?」
戦うと言っておきながら、学校の階段を登ろうとする学校長にそう言うと、「私の専門は弓と魔法ですから」と言う答えを貰った。遠距離から撃つということだろうか。
「前線はお願いします。恐らく、あなたが一番動けるでしょう」
「任された。今回に限っては俺もお前の言うことを聞く。俺が魔族を殲滅する。情報全部寄越せ。分かったな?」
「分かりました。援護させてもらいます──
「あん?」
最後に言った言葉を聞き返そうと振り返るが、既に学校長の姿はなく、カツカツと階段を上る足音だけが残っていた。
「あの女…まぁ今はいい。マキナ、起きろ」
本日何度目か分からない千変の装着。話している間にチェックしたが、血がほとんど入っていない。
戦闘中、血を流しすぎたせいか頭が色々と回らず、ほとんどストックの血を使った覚えがないので、俺の腕を繋いだり輸血をするために使われたのだろう。仕方ないので構わないが。
学校から出ると、既に耳奥に聞こえていた喧騒が明確なものになる。
怒号、悲鳴、断末魔。あとは所々で起きる爆発と金属音ぐらいか。
「これが戦争、かね」
『あの時はもっと酷かったがな』
起きてきたか。
『左腕…治ったのか。身体の調子は?』
「左手が六割ぐらい…まぁ、スキル使えば問題ない。が、治したばっかだし何かあってもおかしくねぇな」
血界を発動。
一気に戦場へ駆ける。
そして知らしめるのだ。
この戦場に、再び勇者が来たのだと。
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