大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

答えと悔い

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ギリッギリ、何とかなったと言いますか。
あの場で、リーザのフォローが無ければ、確実に出る訳のないボロが出ていた。
「あぁそれ?私の昔話を聞いたレィアがそこから推測したんじゃない?今思えば、強大な恐怖をマーキングにする魔法があるって聞いてれば分かったかもね。私は知らなかったけど、レィアは知ってたんじゃない?ほら、よく図書館に行ってるし、そこで読んだんでしょ」
このセリフを聞いた瞬間、俺にはリーザが女神に見えた。てか、羽と後光まで見えた。
そうじゃん!俺図書館行ってるから、それ使えば良かったじゃん!
他にも色んな質問が飛んできたが、危なげなく答えていった。
確信に触れそうな質問には僅かな誤魔化しを入れ、そうでないものは普通に返す。
主に質問をしていたのはユーリアで、たまにラウクムくんとクアイちゃん。リーザとアーネは黙ったままで、シエルは退屈だったらしく寝ていた。
「──さて、こんなもんでいいか?多分もう質問なんて無いだろ?」
「あぁ、私はこれぐらいでいいぞ」
一番質問しといて何言うか。
「んじゃ、お開きだ。ウチの子が寝てるからそーっとなー」
「それじゃーねー」
「お、おやすみなさいです!」
「レィアさん、また明日」
「また明日。共に頑張ろう」
…うん?ユーリアが言った最後の挨拶がなんか引っかかるが…まぁ大丈夫だろ。
部屋の外でみんなと挨拶をしてドアを閉める。
今日は流石に訓練はなし。流石に疲れたし、もう寝たい。
「……その…」
「ん?どうした、アーネ」
後ろを振り返ると、アーネがそこ立っていた。いつも纏っている強気な雰囲気は無くなり、むしろ弱気な印象を与える。
「その怪我、どうしましたの?」
「あぁこれ?ちょっと夢の世界で事故というか何というか…」
流石に少し言い淀む。
他のみんなは服の下になって見えなかったが、アーネは一度、俺の怪我を見ていた。誤魔化しは効かない。
「中でマーキングを壊したって言ったろ?それを守る…門番みたいなのがいてな。そいつと戦った時に少しやられた」
「少し?」
くしゃり、とアーネの顔が歪む。
「右半身を無くす様な怪我を、世間一般では『少し』、とは言わないんですわよ?」
「…なんでお前が泣きそうになってんだよ」
やや呆れつつ、そう返す。
「怪我をしたのは俺の責任だろうに」
「違いますわ!」
唐突に叫ぶアーネ。
「ちょ、シエルが起きるだろ」
「私が!」
しかしアーネは気にせず叫びつづける。
「私が術式を削ったから!必要ないと思って!魔力を減らそうと!いくつか安全装置を外したから!!そのせいで、貴女が…あなた、が…そんな大怪我を…私のせいで…プロテクトを付けておけば…」
叫びは途中で嗚咽に変わり、アーネはその場に座り込みながら泣き始めた。
「おいおい、泣くなよ」
そう言いながら駆け寄る。
参ったな。
滅茶苦茶なアーネから話を聞く感じ、魔力を削るために減らした幾つかの魔法の中に、ノックバック軽減か無効、みたいな魔法があったんだろうな…。で、それを削った結果、俺が怪我したと思ってるのか。
そりゃ間違いないが、間違ってる。
怪我をしたのは俺の責任で、アーネは全く関係ない。
プロテクトとか言う魔法があれば結果は違ったかもしれないが、仮にその魔法があった所で、俺が怪我をすれば、彼女はやはり泣いたのだろう。
何がアーネをここまで責めるのか分からないが、俺は動く左腕でゆっくりとアーネを抱き締めた。
「大丈夫。お前が気に病む必要はないさ。むしろよくこの魔法を成功させてくれたな」
「けど、あなたに怪我を──」
「それぐらいするさ。今までもしてきただろ?さらにこの後も数え切れないぐらいするだろうし。それより誇れよ。イレギュラーが起きても特級魔法を成功させた自分自身を。お前がいなけりゃ、俺も助からなかったかもしれないしな」
「っ──」
あの魔法陣もどきを考案したのはアーネだ。あれが無ければ帰れなかったかもしれない。
「…さて、そろそろ寝ようか」
「…うん」
…この俺の腕の中にいる生き物はアーネで合ってるよな?
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