大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

敵と差

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俺達が戦闘に入った理由は至極単純。
こいつが嫌いだからだ。
生理的に無理、本能レベルで拒絶する。
いや、そんな生温いものではない。
会えば殺さずにはいられない。端的に言えばこうだし、なんならそれ以外の小難しい理由も最早いらない。
それはきっと相手もそうだ。
建物が密集するエリアの屋根の上、下に降りれば裏路地に入る。そんな多少は目に付きにくい場所とはいえ、昼間の王都という多数の目に付きやすい場。
剣を出して戦うのは当然の御法度。魔法も論外。殴り合いでも衛兵が程なく飛んでくるような治安。
だと言うのに。
「「第二血界」」
『なっ!?』
「起動──」「超覚──」
俺達は躊躇いもなくそれを使った。
「「《血呪》!!」」
発動は同時。互いの手には武器も何も無く、素手のみ。
そして全く同時の踏み込み。
およそ常人では出しえない速度を持った拳が、蹴りが、相手の身体に吸い込まれては鈍い音を響かせる。
だが対する相手もまた同じく常人では有り得ない。
叩き込んだ拳や蹴りは、超強化された身体そのものの強度でほとんど威力を殺される。
既に互いの身体はそこらの鉄の棒で殴られても全くダメージを負わない程の硬度となっているからだ。
いや、だが。
「っ」
相手の膂力の方が上か。こころなしか硬度も向こうの方が上…いや、間違いない。向こうの方が血呪の出力が上だ。
繰り出された裏拳をくぐって回避し、同時に足払い。如何に力があろうと、重心が乗っている足を払われたら転ぶしかない。当然相手も体勢を崩し、その瞬間に腕に飛びついて即座に腕ひしぎを決める。
が、しかし。
「──ッ!?」
完璧に決まった腕ひしぎが即座に振り払われた。
この女、瞬間的にだが、血界の出力を強引に上げて俺を振り払った。こちらも血界を使用しているというのに、それを意に介さずだ。
即座に腕から離れ、相手の殴打を受け流す。
血が潤沢にあるのか。いや、そんな訳が無い。俺達勇者の基礎の形はヒトと変わらない。当然流れる血の量も変わらないし、相手がどこかに貯蔵しているのでなければ、体格的に少し大きい程度の差しかない相手とは総量は変わらないはず。
なのにあの出力を即座に出す判断を下すのは、デメリットが少ないから。
そもそもが違うのか。
向こうの血の量が多いのではない。血の消費量が少ないのだ。
その事にシャルも気づいたらしい。
『不味い。向こうの方が《勇者》としての質が高い。多分俺より二世代ぐらい前の性能してやがる』
それがどれほどの差なのかは分からない。だが、勇者としての格は相手が上という事はよく分かった。
なら、俺に勝機があるとすれば──
「「第三血界」」
「起動──」「超覚──」
スキルによる技術しかあるまい。
「「《血刃》!」」
俺の生み出した刃は刃渡り四十センチ程度。文字通りの血刃。
しかし、相手の生み出した血刃はざっと見ても一メートルあるだろうか。刃と言うべきでは無い。あれは剣だ。
これが、差か。
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