大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

槍と剣

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「ふっ!!」
ガィィン、と金属同士がぶつかり合い、俺の銀剣は真下に、リーザの長槍は真上に跳ね上がり、衝撃と音が遅れて手を伝わる。
とっさに振ったのでバランスを少し崩してしまい、膝をつく。
あっぶね。動くの半瞬遅れてたらざっくり行ってたわ。
『加速…したな』
したなぁ…。
『今代の、あの女のスキルは?』
いや、スキルは関係ないはずだ。確か《緊急回避》とかって言ってたからな。間違っても攻撃に転用出来るような物じゃないし。
そんなことを真上に跳ね上がった槍を見ながらシャルと話していたら。
「てええええええい!!」
そのまま真下に振り下ろされた。
まぁつまり、俺の脳天だが。
『カウンター?』
「…回避だな」
あんなの受けたら腕の骨が逝く。ついでに肩とか背骨とかも一緒に逝くかも知らん。
非力な俺はついさっきの一合でも吹き飛ばされかけたからな。
一歩右にずれ、ギリギリで回避する。
このまま相手が振り切った瞬間に走り込んで俺の間合いに持ち込めば──。
「はあっ!!」
「『はあっ!?』」
マジか!?
文字通り音も風も裂きながら真上から振り下ろされてきた槍は、俺が避けた後、地面に衝突する直前で方向転換。
やや上に跳ねながら真横に薙ぎ払われた。
しかも加速しながら。
「どんな動きだよっ!!」
とっさに地面に身を投げ、避けた所で、再び上に登った片刃の槍が銀に輝きながら俺を上から見下ろしていた。
「あ、これちょっと」
「ぜああああっ!!」
再び真上からの一撃。
ならば。
『前へ!!』
「言われなくとも!!」
寝転がったままの状態から地面を蹴り、地面に身体を擦りながらも前身する。
さらに。
「チィッ!」
滑らせた身体が前に進んだ所で、地面に右手をつけ、そこを支点に身体を即座に起こし、起き上がりざまに右手一本で握った銀剣を真横に薙ぐ。
先程とは違い、幾分相手に近づいたので威力は減衰しているし、そもそも力を真正面からカチ合わせた訳ではないので、さっき程ダメージはない。
あの長大な槍を扱うリーザは、その威力を完全に出せるように、最初は真ん中をもっていたが、今は端の方を持っている。
距離にして約二メートルほどか。
即座に距離を計り、俺は相手に接近する。
あの長すぎる槍では、俺の間合いに持ち込めば圧倒的に有利な戦いが出来る。
しかし、リーザもそれを分かっているため、当然俺が近づくのを防ごうとしている。
ガィィン、ガァン、ギャイィン。
早くなくていい。ゆっくり、一歩ずつ。
一歩近づく度にリーザの一撃が軽くなっていく。
「ぜあああッ──!」
「しっ──!」
ガカァァン!!と、一際大きな音を立てて槍と銀剣が交差し、槍が浮いた瞬間、俺は即座に身体を反転。
「!!」
身体の空いたリーザの手を銀剣で強く殴った。
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