大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

メッセージと依頼

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そんな訳で翌日。
あの後、帰るとか言っときながら結局色々ほっつき歩いて、宿に帰ったのは最終的には日付が変わる少し前ぐらい。
朝の目覚めはマキナの声だった。
『マスター。マスター。メッセージ・です。マスター。マスター。メッセージ・です。マスター…』
「おう、分かった。出る。今何時だ」
マキナが短く十時五分です。と答える。思ったより早かったな。
とは言え、どうせこうなると思っていたので心構え(?)的に問題は無い。一秒前まで寝ていたが、即座に起きて切り替える。
誰からだ、とは聞かず、そのままマキナを耳に入れてメッセージに出る。
「よぉユーリア。元気してたか?」
『元気は元気だが…珍しいなレィア。君はアーネの所に行ったものだと思っていたが。観光か?』
おや、意外と落ち着いているな。思っている以上に暇はあったか。
「まぁ俺の方でも色々とあってな。今日は残念ながら観光って訳じゃない。書いてなかったか?」
『あぁ、書き写して今手元にある。なんでも、とり潰された耳長種エルフの家を…まぁ要は下級貴族を探して欲しいという話だったな。誰かを探しているのか?名前は?』
「コルドー。コルドー…何だったか忘れた。ともかくコルドーと呼ばれていて、プクナイムで黒い騎士を呼び出したり、デカい光の魔法を落として辺り一帯を焼け野原にしてた」
言ってからしまったと思ったら。
『プクナイムが焼け野原になったのか!?』
そうだよな、そう聞こえるよな。俺も言ってから気づいた。
「あ、いや、違う。プクナイムは無事だ。安心しろ。正しくはプクナイムの外だ」
『人的被害がなかったなら良いのだが…で、光の魔法で焼いたんだな?』
光の魔法…んー…
「いや、もしかしたら雷とかかもしれん。光ったと思ったら既に落ちて周りは全部焦げてた。悪いが魔法には詳しくないんでな。その辺は少し曖昧だ」
『ふむ…分かった。調べておこう。いつまで滞在するつもりだ?』
そうだな、元々北へ行くつもりだった予定が王都に変更されたので、距離的猶予の問題で少々予定の時間より余裕がある。とは言え、無駄にここにいるのも良くないか。宿屋も少し高めだし。
「そう長くはいないつもりだ。ざっと二、三日…伸ばして四、五日って所だな」
『ふむふむ…ところで、書いてあったお礼についてだが…』
「あぁ、俺に出来る事なら全力で応じる。今回はこんな不確定な情報で下級貴族なんてもんを探してもらう訳だしな。割となんでもいいぞ」
『ふーむ、そうかそうか。あぁそうだそうだ、ちょっとした好奇心で聞くんだが、今どこの宿に泊まってるんだ?』
「王都の東区にある夜鷹って宿屋だが。どうかしたか?」
後で遊びにでも来るのだろうか。
『いやいや何も。単なる好奇心だ。そうか、夜鷹か。まぁ分かった。それではまた後で』
「ん、あぁ。頼んだぞ」
『任せろ』
と言ってメッセージは切れた。
そしてその二時間後、俺はそのユーリアに捕縛され、拉致されることになる。
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