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本編
報告と終射
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気づいた瞬間、俺は即座に木を蹴り元の位置へと戻る。
「うわっ!?先輩!?」
「よくやった。魔獣は撃破出来──」
「ヤツキ、大丈夫か!?」
「…私は大丈夫だが、お前が大丈夫じゃないらしいな。一度落ち着け。何があった」
辺りを警戒しつつ俺は言った。
「木の上にあったのは鳥だの何だのの巣じゃない。馬鹿デカい何かのサナギだった。それに、迎撃が直線で最短距離でヤツキや俺を襲わなかった」
「あぁわかった。私は分かるがセラが分からん意味になってる。もう少し落ち着け」
「えっと…どういう事です?」
「端的に言ってしまえば、もう一体何かが潜んでる、って事を言いたい訳だ、コイツは」
「そうだ。ついでに言うと、倒した魔獣からはおよそ攻撃できそうな手段は見つからなかった」
あったのは茶色いサナギと、中からグズグズで出てきたヒトガタの何かだけ。
魔法で迎撃した可能性も無くはないが、ヤツキの身体に叩き込まれた傷は完全に物理的なダメージだった。
「ヤツキ、周りに何かいるか?」
「居ると最初から気づけたら、私はそもそもこんな傷を負っていない。サナギの方は何かいると気づく程度には感知出来たが、もう一体の方はお前に言われるまで考えもしなかったぐらいだな」
と言いながら、ヤツキの視線は俺を見ていない。
見ているのは俺の顔よりやや上。
俺はさりげなくヤツキの後ろに立つセラに視線をやり、何気ない動きで自分の左腕に触り、話を切り替える。
「なんにせよ対策は取らにゃならんな。セラ、左腕はまだ使えるか?」
「まだ使えます。ただ、あと一回撃ったらどうなるか分からない感じ…ですね」
見れば左腕はかなりヒビが入っている。作ったのは五、六年前だったし、ナナキが使ってた義肢なんざ所詮は消耗品だしな…むしろよく撃てたと言うのが本音だ。
「そうか、矢ももう無いし、一旦帰って腕の修理と、撃てる矢を作るか」
「えっ?」
セラと視線が合ってる今のうちに、左腕にやった右手で、小さくレバーを回す仕草をする。
あぁ、それで理解してくれたのはいいが、顔が見るからに強ばるのは良くないな。
「あ、本当だ!そうですね、一度戻りましょう」
相手に気づかれたかもしれんと思ってヤツキをちらりと見るが、視線は固定されたまま。まだ動きは無いのだろう。
セラがそっと腕に矢を仕込み、音もなく静かにレバーを回す。壊れかかっていても、無音で仕事はきっちりこなせるように作った昔の俺に感謝だ。
こっそりとやっているから少し時間はかかるか、と思ったが、右腕は元よりセラ用の義手。その剛力でいとも容易く弓弦のレバーを引いていく。こりゃすぐだな。
ヤツキの視線に合わせ、俺の髪を一本、ヤツキの視線が向いている方向に合わせてセラの弓と繋いでこっちへ撃てと一本の線を引く。
「ヤツキ、それでいいか?」
「あぁ、それでいい」
「じゃあそれで」
セラが矢を引き終え、そして放った。
「うわっ!?先輩!?」
「よくやった。魔獣は撃破出来──」
「ヤツキ、大丈夫か!?」
「…私は大丈夫だが、お前が大丈夫じゃないらしいな。一度落ち着け。何があった」
辺りを警戒しつつ俺は言った。
「木の上にあったのは鳥だの何だのの巣じゃない。馬鹿デカい何かのサナギだった。それに、迎撃が直線で最短距離でヤツキや俺を襲わなかった」
「あぁわかった。私は分かるがセラが分からん意味になってる。もう少し落ち着け」
「えっと…どういう事です?」
「端的に言ってしまえば、もう一体何かが潜んでる、って事を言いたい訳だ、コイツは」
「そうだ。ついでに言うと、倒した魔獣からはおよそ攻撃できそうな手段は見つからなかった」
あったのは茶色いサナギと、中からグズグズで出てきたヒトガタの何かだけ。
魔法で迎撃した可能性も無くはないが、ヤツキの身体に叩き込まれた傷は完全に物理的なダメージだった。
「ヤツキ、周りに何かいるか?」
「居ると最初から気づけたら、私はそもそもこんな傷を負っていない。サナギの方は何かいると気づく程度には感知出来たが、もう一体の方はお前に言われるまで考えもしなかったぐらいだな」
と言いながら、ヤツキの視線は俺を見ていない。
見ているのは俺の顔よりやや上。
俺はさりげなくヤツキの後ろに立つセラに視線をやり、何気ない動きで自分の左腕に触り、話を切り替える。
「なんにせよ対策は取らにゃならんな。セラ、左腕はまだ使えるか?」
「まだ使えます。ただ、あと一回撃ったらどうなるか分からない感じ…ですね」
見れば左腕はかなりヒビが入っている。作ったのは五、六年前だったし、ナナキが使ってた義肢なんざ所詮は消耗品だしな…むしろよく撃てたと言うのが本音だ。
「そうか、矢ももう無いし、一旦帰って腕の修理と、撃てる矢を作るか」
「えっ?」
セラと視線が合ってる今のうちに、左腕にやった右手で、小さくレバーを回す仕草をする。
あぁ、それで理解してくれたのはいいが、顔が見るからに強ばるのは良くないな。
「あ、本当だ!そうですね、一度戻りましょう」
相手に気づかれたかもしれんと思ってヤツキをちらりと見るが、視線は固定されたまま。まだ動きは無いのだろう。
セラがそっと腕に矢を仕込み、音もなく静かにレバーを回す。壊れかかっていても、無音で仕事はきっちりこなせるように作った昔の俺に感謝だ。
こっそりとやっているから少し時間はかかるか、と思ったが、右腕は元よりセラ用の義手。その剛力でいとも容易く弓弦のレバーを引いていく。こりゃすぐだな。
ヤツキの視線に合わせ、俺の髪を一本、ヤツキの視線が向いている方向に合わせてセラの弓と繋いでこっちへ撃てと一本の線を引く。
「ヤツキ、それでいいか?」
「あぁ、それでいい」
「じゃあそれで」
セラが矢を引き終え、そして放った。
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