大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

魔獣と追跡

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木々を薙ぎ倒し、姿を現したのは巨大な百足。
大きさは体高が大体俺の倍程度、体長に関しては…さて、いくらあるのか。長すぎて尻が見えない。
見た目は髑髏が連結して身体を作っており、身体を支える無数の足は全て何らかの動物の骨。先頭の頭はどうやらヒトの頭のように見えるが、それにしてはあまりに大きい。
ケラケラと笑うような足音を立てながら猛然と向かってくる百足。名前は驚く程安直で、そこまで脅威ではないので一体ぐらいは彼女に任せようと思った次第だ。
「骸骨百足ねぇ…正直デカい図体だけが取り柄の雑魚なんだが…稀によく結界を抜けてくんだよなぁコイツ」
近くの木に隠れ、様子を伺う。幸い、今結界を抜けたのはこの骸骨百足三匹だけらしい。
「えっ!?え、これを一人でやるんですか!?私一人で!?先輩は手伝ってくれないんですか!?」
「甘ったれるなバカもん。三匹もいるんだから一匹ぐらいやって来い」
「いやでも思ってた以上に…大きい──!」
「そうか?」
いやまぁ、確かに。
学校で習う骸骨百足の特徴は、人の胸ぐらいの高さまで成長する、全長三~四メートル程度の魔獣とかだった気がする。
一方コイツは…
「頭の大きさからして、大体全長二十メートルぐらいかそんなもんだろ」
「二十っ…!?」
「んじゃ、こいつは任せるな。他の二匹は俺がやる。それまでに死ぬなよ」
マキナを纏い、戦闘準備完了。
木々の間から姿を現し、軽くしゃがんで──
「えっ、ちょっ、待ってください!?」
「あ、悪い」
もう遅い。
近くの石を拾って思い切り骸骨百足の額に向かって投げた。
ちょうどタイミングよくこちらを振り返った骸骨百足の額に、小さな石がパァン!と当たり、骸骨百足の額に軽いヒビ割れを入れる。
「んじゃ任せた」
「ちょっと先輩!?」
焦るセラを無視し、俺はすぐさま振り返って走り始めた。
骸骨百足は仲間内で聞こえる特殊な音を常に出し合っている。その音源が三つ。だから侵入してきた骸骨百足が三匹だとすぐに分かった。
一匹はここ。そして残り二匹が一直線に森の外へと向かっている。
俺がこの骸骨百足を彼女に任せたのは、ただの力試しではない。
単純に人手が足りないから。そしてもう一つ。
別にあの程度の魔獣ならセラは普通に倒せると確信しているからだ。
火車、メドゥーサ、グリフォン、ネメアリオン。どれも機動性が高いかこちらの機動性を奪う魔獣だと言うのに、それらから逃げおおせる、あるいはヤツキが来るまで時間を稼げるというのなら、それが出来うる実力はあるということだ。
というか、そもそもその程度の実力さえないのなら、二日目あたりでヤツキが追い返しているか囮にしている。問題は無いはずだ。
今問題があるとすれば。
「なんで集団行動を取るはずの骸骨百足が二手に分かれて、それを連絡しあってんだ…?」
骸骨百足が互いに出し合っている特殊な音は本来、もしどちらかが死んだ時、その身体を生きた骸骨百足が取り込んで大きく成長するために出し合っているものだ。
互いの位置を仲間内で把握するだけの音、だが、それを出していても一匹はこちらへ来ている。
変わり者の骸骨百足なのか、それとも俺が気にし過ぎているだけか…
なんにせよ、急がなくては森を抜けられる。
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