377 / 2,022
本編
取り引きと豹
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「アーネ、少し寄り道したいんだが、いいか?」
「はい?しかし時間が…」
ん?あぁ、そういやそろそろ都市を出ないと間に合わんか?
「そこなら気にすんな。簡単に帰れる」
「ならまぁ…いいですけど…」
俺達は階段をやや駆け足で登る。
理由は単純。
「いたぞ!」「地下のアレも一緒だ!」
騒ぎを聞きつけた兵士(?)が俺達を見つけるなり剣やら槍を振って突っ込んでくるから。
ちなみに今回は二人。
「やかましい!どけ!」
銀剣をひとなぎすると、兵士はバランスを崩し、その間に脇を通り抜けていく。
「待て!」
「と言われて待つバカはいねぇよ!」
俺が通り抜けざま、後ろから銀剣で叩き落とすようにして兵士を殴った。
兵士達は見事に転び、そのまま悲鳴を上げながら階段を転がって落ちて行った。
「で、どこに行くんですの?」
「都市長んトコ!どこいるか知らねぇ!?」
ペースを落とさずに俺が聞く。
「私も分かりませんわ!けど、最初に面会した部屋でしたら、二階の正面ですわ!」
「よし、そこから行くぞ!」
「あと!」
「なんだ!?」
「この子を抱っこするのを替わってくださいまし!」
「……」
無言で替わってやった。
「おいお前、大丈夫か!?」
なんやかんやで抱っこされ続けるのも結構しんどいらしいとはシャルから聞いた話。
しかし彼女は首をふるふると横に振った。
「……だいじょ、ぶ」
「いい子だ!」
そこでちょうど階段に終わりが見えた。
「よし、地上に出るぞ!」
そう言うと同時に一気に階段を駆け上がった。
そこに広がっていた光景は──。
「あらぁ?おかえりなさぁい。どうやって出たのぉ?」
「テメェかぁぁぁ?」
俺達を地下に閉じ込めようとした豹だった。
彼女を抱いている今、片手で銀剣を振り回すのは不可能と判断し、銀剣を放り投る。
即座に銀腕を形成し、その面にぶち込んでやる…!
「銀──」
「待って!」
豹が叫んだ。
「ここで戦っても私にもあなたにもメリットはないわぁ。だから、双方にメリットが出る取引をしましょう?」
「…俺は今、お前さんの整った顔をミンチに出来るだけでも充分メリットがあるんだが?」
「あら怖いわぁ。けど、お嬢ちゃんが私の顔を潰すのと、私の槍がお嬢ちゃんが抱えてる彼女を串刺しにするの、どっちが早いと思う?」
「…」
糞ッ気に食わねぇ…!
が、しかし、間違いなく相手だろう。
「…取り引きの内容は?」
「私達を見逃してちょうだい?代わりに都市長のいる部屋を教えてあげるわぁ。早くしないと彼、逃げちゃうかもよぉ?」
決断は早かった。
「乗った。場所はどこだ」
豹は三歩、後ろに下がる。俺の銀腕の射程外だ。
俺の反応に、喜びを隠しもしないで豹は笑う。
「二階突き当たり、執務室よぉ」
そう言うなり、豹は即座に身を翻して逃げた。方向は恐らく玄関方向。執務室とは真逆だろう。
「行くぞ、アーネ!」
俺は豹に背中を見せて再び走り出した。
「はい?しかし時間が…」
ん?あぁ、そういやそろそろ都市を出ないと間に合わんか?
「そこなら気にすんな。簡単に帰れる」
「ならまぁ…いいですけど…」
俺達は階段をやや駆け足で登る。
理由は単純。
「いたぞ!」「地下のアレも一緒だ!」
騒ぎを聞きつけた兵士(?)が俺達を見つけるなり剣やら槍を振って突っ込んでくるから。
ちなみに今回は二人。
「やかましい!どけ!」
銀剣をひとなぎすると、兵士はバランスを崩し、その間に脇を通り抜けていく。
「待て!」
「と言われて待つバカはいねぇよ!」
俺が通り抜けざま、後ろから銀剣で叩き落とすようにして兵士を殴った。
兵士達は見事に転び、そのまま悲鳴を上げながら階段を転がって落ちて行った。
「で、どこに行くんですの?」
「都市長んトコ!どこいるか知らねぇ!?」
ペースを落とさずに俺が聞く。
「私も分かりませんわ!けど、最初に面会した部屋でしたら、二階の正面ですわ!」
「よし、そこから行くぞ!」
「あと!」
「なんだ!?」
「この子を抱っこするのを替わってくださいまし!」
「……」
無言で替わってやった。
「おいお前、大丈夫か!?」
なんやかんやで抱っこされ続けるのも結構しんどいらしいとはシャルから聞いた話。
しかし彼女は首をふるふると横に振った。
「……だいじょ、ぶ」
「いい子だ!」
そこでちょうど階段に終わりが見えた。
「よし、地上に出るぞ!」
そう言うと同時に一気に階段を駆け上がった。
そこに広がっていた光景は──。
「あらぁ?おかえりなさぁい。どうやって出たのぉ?」
「テメェかぁぁぁ?」
俺達を地下に閉じ込めようとした豹だった。
彼女を抱いている今、片手で銀剣を振り回すのは不可能と判断し、銀剣を放り投る。
即座に銀腕を形成し、その面にぶち込んでやる…!
「銀──」
「待って!」
豹が叫んだ。
「ここで戦っても私にもあなたにもメリットはないわぁ。だから、双方にメリットが出る取引をしましょう?」
「…俺は今、お前さんの整った顔をミンチに出来るだけでも充分メリットがあるんだが?」
「あら怖いわぁ。けど、お嬢ちゃんが私の顔を潰すのと、私の槍がお嬢ちゃんが抱えてる彼女を串刺しにするの、どっちが早いと思う?」
「…」
糞ッ気に食わねぇ…!
が、しかし、間違いなく相手だろう。
「…取り引きの内容は?」
「私達を見逃してちょうだい?代わりに都市長のいる部屋を教えてあげるわぁ。早くしないと彼、逃げちゃうかもよぉ?」
決断は早かった。
「乗った。場所はどこだ」
豹は三歩、後ろに下がる。俺の銀腕の射程外だ。
俺の反応に、喜びを隠しもしないで豹は笑う。
「二階突き当たり、執務室よぉ」
そう言うなり、豹は即座に身を翻して逃げた。方向は恐らく玄関方向。執務室とは真逆だろう。
「行くぞ、アーネ!」
俺は豹に背中を見せて再び走り出した。
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