大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

説得と咆哮 終

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猛烈な勢いで血が吹き出し、一気に意識が朦朧とし始める。
が。
「っぶねーあぶねー」
時間を巻き戻すようにして俺の体内に血が戻って行く。
「軽めに死ぬかと思ったわ」
『なるほどな、自分の使役下にある血液を媒体にほかの血液に触れる事でその血液も自分の使役下に置けるのか。それでこのマヌケの血液を引っ張り出した、と』
「……適当でも大丈夫か、ぐらいは言えんのかね」
思わずポロりと口から零れた。
ってか、サラッとマヌケとか言うんじゃねぇ。
『戦いの真っ最中に気を抜くバカタレをマヌケと呼んで何が悪い』
…ごもっとも。
「!?」
「ん?どうした?」
彼女が明らかに驚いている。
『防がれたのが初めてで驚いてるだけじゃねぇの?タネを明かせばお前のスキルで血を回収しただけだが、あいつからしたら絶対に仕留めたハズの相手が平気な顔してブツブツ喋ってんだから』
まぁ、厳密にはそこに少しばかりの《勇者》の力を入れてるが。
「何、大したことは無いよ。単に俺とキミのスキル、その相性が結構悪いってだけの話だから」
彼女にそう言い聞かせるように口に出す。
身体を操るだとか、そう言ったスキルは多分、どれだけ使い込んだかとか、スキルの強さによって主導権が握れる。実際、前にアーネを助けるために少し手伝ってくれたオードラル先生の相手の手足を操る…あるいは狂わせるスキルは、俺には一切通じなかった。それは俺のスキルで上書きしたため。先生のスキルは打ち消された訳だ。先生がその後から主導権を握ろうとスキルを使っても、俺のスキルに少し乱れが出る程度で、先生のスキルは十全には働かなかった。
今回も似たようなことが起きた。
吹き出た血は所詮、俺の血だ。
いくら主導権を握られようと、俺が「血が戻るイメージ」をすればそのまま帰ってくる。
それどころか。
「俺の血とキミが使ってる血、少しばかり混ざっちゃったの、わかった?」
吹き出た血は全ては戻さなかった。
吹き出た量の十分の一程度がキメラにかかった。
べチャリと付着するのではなく、そのまま取り込まれた血。
「シャル、相性は?」
『かなり悪い。が、まぁ血界に使わないなら問題ない。少しばかり
その血は俺の血だ。
その血は勇者の血だ。
「…百年以上、二百年未満だっけ?そんだけかけて編み出した、先達の技だ」
使い潰されていった勇者が文字通り血を吐きながらでも作り上げた技。
「──《血海》」
途端に。
「ボァァアアアアァァァアア!?」
馬鹿デカいキメラは叫びを上げて文字通り崩れ。
辺りには血が一気にぶちまけられた。
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