大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

魔法と緋眼騎士

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視界を埋め尽くす光の杭。それが全方向から俺に向かって放たれた。
回避は不可能。しかしこの程度の魔法であれば──
「なっ…」
「生憎と…魔法は効きにくい体質でね」
俺の身体に触れる前に杭が折れる。つくづく、魔法使いとは相性の悪い能力だと思う。
「スキルか…おのれ」
「ま、そんな所だ。魔法使いで俺に勝ちたいなら、特級魔法をぶち込むか、英雄クラスの魔法使いでもなけりゃ俺の守りを抜く事は出来ねぇんじゃないかな」
だから大人しく投降しろ、と言う前に。
「《光の鱗、光輝の瞳、渦巻く奔流は帯となり──」
『おいおいおいおい、なんだこの魔力量!?』
放電と共にコルドーの後ろには、彼の三倍ほどの大きさの魔法陣が現れた。
「!!」
コルドーが詠唱を始めた瞬間、俺は即座に踏み込んだ。
この魔力量は流石に魔法返しでは返せない。何が放たれるか分からないが、撃たれたら間違いなく血鎧でも使わなければ大ダメージを食らう。
だが、血鎧はカウンター技。受けた魔法は俺の中で変換され、次の一撃が変換された分、そのまま相手に返る。そんなもの、コルドーが即死するに決まっている。
俺は別にこの男を殺したい訳じゃないので、当然却下だ。
だから──
「名無しの紡ぎ手が《連》を断つ楔の剣を呼び起こす──」
銀剣を抜き、即座にこちらも詠唱に入る。
塔の天辺であるこの場は、本来数人が同時に守るものなのだろう。二人では少し空間に余裕がある。
俺の間合いまで、およそ二メートル。
一歩踏み込み、二歩進み。
「全てに打ち勝つ《吼破》の連となりて」
黒の剣を抜いた。
そこから跳躍、背後の大魔法陣を斬りにかかる。
いやらしい事に、魔法陣は塔の外。つまりは地面から数十メートル離れた宙に浮いている。羽を持たない俺には少々遠く感じるが、跳べない距離ではない。
しかし。
コルドーが詠唱しつつ、指をパチンと鳴らした瞬間、彼の影からぬぅと出てきたのは影色の騎士。
「!?」
見てもそれを形作るのは魔力では無い。つまりは魔法ではない。
大きな身体をも隠す重厚な盾と、その身の丈よりも大きな剣を携え、騎士はコルドーと魔法陣の間に宙を飛んだ状態で立ち塞がり、魔法陣を守る構えを取る。
「邪魔だッ!!」
黒剣を横に薙ぐ。
絶対切断の黒の刃は重厚な盾や影色に輝く鎧を無視して胴を真二つに断ち、斬り飛ばす。
呆気なく騎士は霧散し──そして再集合した。
「はぁ!?」
スキルだろうか。これがコルドーの能力?
空中で騎士を斬ったまま、後ろの魔法陣を斬ろうとした俺の身体を、騎士が後ろから掴み、そのまま真下──数十メートル下の地面まで叩き落とした。
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