大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

惨状と質問

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部屋に戻って、最初に見えたもの。
一、とっ散らからった部屋。台風が部屋の中で暴れたみたいな感じを
二、めちゃくちゃ怖い感じのアーネ。怖い感じってのは、アーネがドアを背にした立ち位置で、俺からは顔が見えないから。それでも、なんというか…オーラとか周りの反応で察せる。………ニケが怯えるとか想像がつかんのだが。
三、床と天井についた焦げ跡。明らかにアーネだな。
四、これが最後。ぶるぶると震えて上半身の服が燃え尽きた制服男子。あーあー、完全に腰抜けてんな。
さて。
「……何事か説明を求める」
その言葉に、アーネすっと振り返った。
そこには満面の笑み。とんでもなくイイ笑顔でこっちへ振り返るアーネ。
『ヤベェ。なんか俺、この笑顔が怖い』
激しく同意。なんて言うか…何かやった後…ってか殺った後?いや、誰も死んでないけど。
「いえ、別になにもありませんわよ?ですわよね?皆さん?」
その言葉に、ニケと制服男子、他に転がっていた制服女子も高速で頷く。制服女子、起きてたのか。
というか制服男子の上半身が焼かれたために俺の髪も焼かれて、武装出来るだろうにそれすらしないとか。心をへし折られたらしいな。
何があったか聞きたいが、聞いたら何だかヤバイ予感。
「で、情報はなんか聞き出せた?あ、ニケは飯食ってきていーぞー」
「え?あ、はい!それでは食べてきます!」
この場から逃げる口実が出来た、と言わんばかりにこの部屋から出て行ったニケを視界の端に収めながら、アーネの答えを聞く。
「まだ聞き出せてませんの。けど、今から聞けば答えてくれますわよね?」
「はい!喜んで!」
…俺が飯食ってたのって十分ちょいだよな?この短時間で何があった。マジで。
「んじゃ、お前らってあれだよな?西側に出来た新しい聖学の生徒だよな?目的は新しい生徒の捕獲…じゃねぇ、保護か。まぁ、それで合ってる?」
「………!、はい!全てその通りです!」
『怖ッ…見てた?アーネが今、少し口ごもったあの男子に殺気飛ばしてたぞ』
知ってる。多分アレ、小動物とかなら心臓発作起こすぞ。
「んじゃ次。お前達ってどこまで知ってる…ってか、目標の生徒の情報持ってんの?」
「は、はい。そちらがどれだけ彼女の事をご存知か分かりませんが、お、ぼ、私達が知っているのは、彼女の容姿と、今どこにいるのかぐらいです」
上ッッッッ々!一気に話が進むぞ!
『当たりを引いたな。しかし、問題はどこまで信じていいのかだが』
その辺りは問題ないだろ。機嫌の悪い猛獣が隣で待機してる中で、堂々嘘つけるような奴じゃなさそうだし。
「おしおし。んじゃぁ、その場所は?その次はどんな奴なのか、だな」
「………ッツ!」
ん、ここはアーネの睨みでも黙ったか。
しかし、アーネが人差し指に炎を出し、くるくると回して遊ぶと、再び顔が青くなる。
「………場所は都市長の家の下、です」
下?下ってーと地下か?
そう俺が更に聞こうとすると、他の声が割り込んできた。
「ハァイ、そこまでよぉ?嬢ちゃん?」
その声は音もなく、いつの間にか開けられていた窓、そのフチに腰掛けている、女性の口から発せられたものだった。
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