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本編
鋼と狙撃
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流石にここに居続けるのは危険か。元いた場所からかなり離れ、あたりを伺う。
しかし、敵を探そうにも、どこから撃っているのか見当もつかない。無闇矢鱈と走り回るのは余りに効率が悪い。
いや、だが待て。
ここは高壁の上。その俺の周辺へ的確に刃を出てきた事からして、相手は何らかの方法で確認しているはずだ。
単純に考えれば目視、しかし俺の現在地は壁の上。俺を見下ろすような場所はおろか、同じ高さのものも壁しかない。
下から見上げるのも中々考えにくい。という事は、おそらく目視ではない。
ならばどうやって俺を感知しているのか。
可能性があるとすれば──魔法使いへ向けた何かしらの目印か。
「っと!」
二度目の鋼。そのほとんどは俺に当たる前に魔法返しによって潰されるが、一本だけ俺の服を掠めた。
刃はボロボロに刃こぼれし、およそ斬れ味の無くなっていたそれは、俺の服に引っかかり、宙で二三度回ってから落ちた。
「っぶね、おいシャル!どういう事だ!魔法が俺の魔法返しを抜いてきたぞ!」
『…魔法返しにおいて重要なのは魔力の密度だ。小さい器に限界まで魔力を乗せることができれば、ヒトでもお前の魔法返しを抜ける。そんでもって、鋼系統の魔法は総じて魔力消費量が高い。それをちっさい刃の形にねじ込めば、超密度とは言わんがかなり高密度な魔法になる』
「そのせいか!」
確か、魔法返しの仕組みは俺達勇者に流れる魔力の籠った血が流れることによって、勝手に発生する障壁のようなもののはず。
当然と言えば当然だが、障壁だって限界以上の威力持った攻撃が来れば貫かれる。つまりはそういう事だろう。
「相手の場所は割り出せるか!?」
『無茶言うな。ナナキの記憶と混ざってから感覚が大分お前に寄った。流石にそう簡単には見つからんぞ』
「頼む!」
そういった直後、三度目の刃が飛び出した。
刃の本数が減った代わりに、一本あたりの魔法の質が上がっている。これならかなり威力は落ちるものの、俺の肌を掠めれば確実に切れるだろう。
「マキナ!」
が、それらをマキナが全て弾く。軌道が変わった刃は互いにぶつかり合い、俺にひとつも当たらず落ちる。
やはり狙いは正確。しかも、魔法の数を増やすのではなく、減らして質を上げてきた。
躱されたのではなく防がれた、防がれたが威力が足りなかった。
そう理解していないと、そんな行動は取れない。
やはり相手は俺を見ている。
どうやってかは知らないが、何かしらの魔法か魔導具で俺に目印をつけて、それを利用してこちらを覗いているとしか思えない。
だが、目印が俺に付けられているとしたら、いつ、どこに付けられた?
身体を軽くまさぐっても何もついていない。
「っ!」
四射目、数は先程より多いが、質はさっきとほぼ同じ程度。流石にマキナを戻し、金剣で応戦。全てたたき落とした直後、ふとした拍子にある可能性に行き着いた。
もしかして。
いつもの癖で羽織っていたコートを脱ぎ、背中の方を見てみる。
すると、ちょうど腰の辺りに花のような紋様が刻まれていた。
あり得るとしたら、あの縄の時か…?
なんにせよ、この紋様の上から俺の血で塗りつぶして効果を無理矢理打ち消す。
『いた』
すると、シャルが声を上げた。
『壁下、赤い煙突の家の壁際だ。ハゲた老人。あいつが今、お前がマーキングを潰した時に周りをキョロキョロ見回した』
見えた、あの紺と緑が混ざったようなローブを着てるアイツか。
「サン、キュ!」
マキナを握り拳程度の大きさに変化させて握りしめ、大きく振りかぶって投げた。
しかし、敵を探そうにも、どこから撃っているのか見当もつかない。無闇矢鱈と走り回るのは余りに効率が悪い。
いや、だが待て。
ここは高壁の上。その俺の周辺へ的確に刃を出てきた事からして、相手は何らかの方法で確認しているはずだ。
単純に考えれば目視、しかし俺の現在地は壁の上。俺を見下ろすような場所はおろか、同じ高さのものも壁しかない。
下から見上げるのも中々考えにくい。という事は、おそらく目視ではない。
ならばどうやって俺を感知しているのか。
可能性があるとすれば──魔法使いへ向けた何かしらの目印か。
「っと!」
二度目の鋼。そのほとんどは俺に当たる前に魔法返しによって潰されるが、一本だけ俺の服を掠めた。
刃はボロボロに刃こぼれし、およそ斬れ味の無くなっていたそれは、俺の服に引っかかり、宙で二三度回ってから落ちた。
「っぶね、おいシャル!どういう事だ!魔法が俺の魔法返しを抜いてきたぞ!」
『…魔法返しにおいて重要なのは魔力の密度だ。小さい器に限界まで魔力を乗せることができれば、ヒトでもお前の魔法返しを抜ける。そんでもって、鋼系統の魔法は総じて魔力消費量が高い。それをちっさい刃の形にねじ込めば、超密度とは言わんがかなり高密度な魔法になる』
「そのせいか!」
確か、魔法返しの仕組みは俺達勇者に流れる魔力の籠った血が流れることによって、勝手に発生する障壁のようなもののはず。
当然と言えば当然だが、障壁だって限界以上の威力持った攻撃が来れば貫かれる。つまりはそういう事だろう。
「相手の場所は割り出せるか!?」
『無茶言うな。ナナキの記憶と混ざってから感覚が大分お前に寄った。流石にそう簡単には見つからんぞ』
「頼む!」
そういった直後、三度目の刃が飛び出した。
刃の本数が減った代わりに、一本あたりの魔法の質が上がっている。これならかなり威力は落ちるものの、俺の肌を掠めれば確実に切れるだろう。
「マキナ!」
が、それらをマキナが全て弾く。軌道が変わった刃は互いにぶつかり合い、俺にひとつも当たらず落ちる。
やはり狙いは正確。しかも、魔法の数を増やすのではなく、減らして質を上げてきた。
躱されたのではなく防がれた、防がれたが威力が足りなかった。
そう理解していないと、そんな行動は取れない。
やはり相手は俺を見ている。
どうやってかは知らないが、何かしらの魔法か魔導具で俺に目印をつけて、それを利用してこちらを覗いているとしか思えない。
だが、目印が俺に付けられているとしたら、いつ、どこに付けられた?
身体を軽くまさぐっても何もついていない。
「っ!」
四射目、数は先程より多いが、質はさっきとほぼ同じ程度。流石にマキナを戻し、金剣で応戦。全てたたき落とした直後、ふとした拍子にある可能性に行き着いた。
もしかして。
いつもの癖で羽織っていたコートを脱ぎ、背中の方を見てみる。
すると、ちょうど腰の辺りに花のような紋様が刻まれていた。
あり得るとしたら、あの縄の時か…?
なんにせよ、この紋様の上から俺の血で塗りつぶして効果を無理矢理打ち消す。
『いた』
すると、シャルが声を上げた。
『壁下、赤い煙突の家の壁際だ。ハゲた老人。あいつが今、お前がマーキングを潰した時に周りをキョロキョロ見回した』
見えた、あの紺と緑が混ざったようなローブを着てるアイツか。
「サン、キュ!」
マキナを握り拳程度の大きさに変化させて握りしめ、大きく振りかぶって投げた。
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