大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

森と合流

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「全く…どうなってんだか」
金剣の切っ先を人形の胴に突き立て、もう動かない事を確認してから一息つく。
戦闘時間、およそ二分弱。強かったが、所詮は人形と言ったところか。
「シャル、なんか知らねぇ?」
『知るか。ナナキの頃の俺のスキルは止まってたんだろ?なら俺は知らねぇ』
「でもなぁ…」
金剣を引き抜き、割れた装甲の内側にある人形の中身をバラしていく。
細かく見た訳では無いが、特段パーツに何か仕込まれている訳でも、怪しげな改造をされた痕跡も無い。強いて言うなら経年劣化が激しいが、一年もメンテナンスをしていなければこうなるのは当たり前だろう。
「異常無し、か…」
とりあえずは先に突っ込ませたニケと合流しよう。矢が飛んできていないということは、ある程度は人形を倒しているだろうが…さて、今どこにいるのか。
メッセージを飛ばしながら、森へと足を踏み込む。
森の様子は以前とほぼ変わっていない。変わったと言っても、大きく地形が変わったとかではなく、軽く地面が抉れていたり、木の枝があちこち折れていたり程度で、そんなに大したことじゃない。
これぐらいは日常茶飯事だし、抉れた地面はすぐに踏み固められる。折れた枝も一日二日ですぐに生え変わるかどうにかなる。
「さて、ニケはどこ行ったかな」
依然メッセージに出ないという事は、もしかしたら人形と交戦中かもしれない。
そうなら邪魔かもしれないと思い、一度メッセージを切って、彼女の痕跡を追う。
ニケも俺が後を追いかけてくる可能性を考えてくれたのだろう。道中に明らか不自然な足跡がいくつか混ざっている。これを追えという事だろう。
途中、二体ほど人形の残骸を見つけ、軽く中身を見ようと思ったが、ニケが思い切り吹き飛ばしたのだろう。ほとんど腕や足しか残っていなかった。
だが、どちらも元から損壊が激しかったであろうことは容易に想像がついた。
「うーん…」
『どうした』
「いや、例の魔獣達って中になんか仕込まれてたんだろ?それがこっちにはねぇなって」
確か糸の塊だったか。そんなものどこにあるのか。塊と言っても余程小さいのかそれとも…
『マスター・ニラルケ・バレット様から・メッセージ』
「繋げ」
『了解・しました』
マキナの言葉を遮ってメッセージに出ると、真っ先に荒い息が聞こえた。
「どこだ?」
『え!?ここどこでしょう!?なんか木があって、こう、森みたいな所です!』
「どこもかしこもそうだろうがバカタレ。何か合図出せ」
『わかりました!』
直後、左前方から凄まじい破壊音。あの女、まさか森のド真ん中で戦技アーツぶっ放しやがったな!?
「すぐ行く!」
荒い息と、普通では考えられない戦技アーツを放つという暴挙。考えられるのは単純な答え。
「あ!レィアさん!こっちです!」
「っ…んだこれ」
ニケが戦闘をしている。それならまだ分かるのだが、数が異常だ。
彼女の周りには無数の残骸。きっと今の戦技アーツで吹き飛んだ分だろう。それでもなお数体の人形は残っていたのか、ニケが特殊な切っ先をした剣で応戦していた。
「下がれ!代わる!」
「お願いします!」
そう言いながら飛びかかり、俺は戦技アーツの《破断》を繰り出した。
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