大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

休憩と目的地

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「うぁー…疲れた」
『早いな。聖学を出てまだそんなに経ってないぞ』
「だよなぁ…」
ずっと寝ていたせいだろう。すぐに身体が疲れる。そして身体が重い。
しかし道のりはまだ長く、目的地は遠い。一度休むため、近くにあった岩に腰かける。この辺なら汚れないか。
と言うのも、つい先程まで魔獣とやり合っていたのだ。数は…もう忘れた。聖学からそんなに離れてないんだがなぁ…
『身体はもういいんだよな?』
「あぁ。アーネも一日余分にとったとか言ってたし、まぁ問題ないだろ」
だが、身体の機能が回復したとはいえ、その身体の機能そのものが全体的に下がってしまっては意味が無い。
となるとやることは一つ。
「鍛えるか…」
『だなぁ』
そう言いはしても、体質的に肉が付きにくいこの身体。つまり、そもそも基礎である筋肉が付きにくいのは一朝一夕にはどうしようもない。
そのせいで線が細く、さらに骨格レベルで華奢なの上に身長が平均より低い。トドメに未だ来ない声変わりと長い長い髪の毛。これらのせいで女に見られるのだが、この辺の改造はもう諦めた。
というのも昔、昔、どうしても身体をがっしりさせたくて、ひたすらに飯を食おうとした時期があったな。飯っつっても芋だし、それ以外何も無い上に無味無臭だから拷問でしかなかったが。
一ヶ月ほど試してみたが、結果は全く変わらなかった。それ以来、身体を男らしい筋肉で固める事は諦めた。他の項目についても、必ず一度は何らかの行動をして全て失敗している。ふざけんな。
っと、いかん、話がズレた。
『で?レィア、お前なんでまたプクナイムに?』
「そりゃ決まってんだろ。シエルのことを調べるためだよ」
つい先日あった研究所でのひと騒動。
そこでの出来事は未だ記憶に新しい。
「とりあえず、シエルがなんで生まれたかって事は知りてぇな。魔族とヒト…いや、今回の場合だとシエルの母親は妖精種フェアリーだから…その血も混ざっているのか?なんにせよその辺は最低限聞いときたいな。あとはニケ姉弟にも久しぶりに会いたいし、シエルが幽閉されてたあの空間やら何やら調べたらまだまだ出てきそうだしな」
『…ま、そうだな』
何やら辟易とした生返事を返されるが…
「言っとくが、プクナイムの件はさっさと終わらせるぞ。そんなに時間もないしな」
『は?まさか他のところも行くのか?』
「もちろん。終わったら一度ヤツキに会ってなにか変化はなかったか確認して、リューズニルに向かう」
『りゅーずにる…リューズニル?北の港町か』
「あぁ。ちょいと気になったことがあったもんでな。それが終わったらゼランバに向かって、そこでマキナを見てもらうついでに例のハーフの神父の痕跡を探してみる」
『一年以上前の痕跡なんか残るかよ』
「もちろんダメだろうってのはわかってる。ただまぁ、それでもわかる事があるかもしれんからな」
そこで言葉を切り、岩から立ち上がって背伸びをする。
「…よし、んじゃ行くか」
『もういいのか?』
「ずっとここにいても仕方ないしな。あとそれに臭い」
『それもそうか』
いくら嗅ぎ慣れているとはいえ、ずっと魔獣の血溜まりの中にいるのは流石に…ね。
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