大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

報告と転移陣

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「──ってな感じ。死にゃしねぇってさ」
「ふぅん。アイツ何やったんだろ」
その日の夕食時。最近はアーネと俺、ユーリアの三人でテーブルを囲んで食べていたのだが、今日はユーリアの代わりにアリアンが入って、ついでにヴィクターの様子を伝えることにした。
ちなみにユーリアは魔力の調整に努めるとかなんとか。要するに今日はメシを食わないらしい。
「知らね。部屋ン中は特に何かやからした感じじゃなかったけどなぁ」
「魔力欠乏症ですわよね?彼の持てる魔力量に、そう簡単に魔力欠乏症にならないはずなんですけれど…」
「魔力欠乏症つったって、マジで空っぽになった訳じゃねぇぞ。なんか、一度に大量の魔力が使われたから、身体が反射的にどうのこうのって」
「あー、そうなんだ。確かにアイツはあんまり大きい魔法使わないんだよね。上手いから別にいいんだけど」
「お前とは真逆だなアーネ」
「戦闘スタイルの違いですわよ。貴方とあの《逆鱗》のどちらが正しい戦い方か、なんて言うのはあまりに不毛な話でしょう」
でも話聞いてる感じだと、ヴィクターも魔力をそれなりに蓄えられた感じなんだよな。その辺はスキルとかの兼ね合いか。
「まぁ、今回変だってのはそのヴィクターが一度に魔力を使って倒れたってのと、何に使ったのかわからんって事だな」
「そうなの?争った形跡とかは?」
「なかった。と思う」
「思うって…」
アリアンが呆れたように呟く。
「鍵かかってたんだよ。強引にぶち抜いたから部屋ん中が少し荒れたかもしんねぇ」
「で、なんにもなかったんだ」
「なかったな。もうヴィクターは気絶してたし、急いで保健室に運んだからきっちり調べたりはしてないけど、壁とか床は壊れてなかったし、攻撃魔法は撃ってないと思う」
「んー、基本的に魔力を使うイコール攻撃魔法みたいな所あるから…窓から外に撃ったとか?」
「可能性は無くはないだろうけどよ、一気に魔力が持ってかれるぐらいの魔法を外にぶっぱなすか?普通。つーか、この辺の話はもう先生とやって来たんだよ」
「貴方、魔法陣は?」
ふと、アーネがそう言った。
「あ?魔法陣?」
「えぇ。特にこういう印の入ったものですわ」
と言って実際に空中に魔法陣を軽く刻む。
出てきた魔法陣を見るが…んー…?
「部屋がそもそも暗くってな。急いでたし慌ててたし、見落としてたかもしんね。ちなみに今の魔法陣はなんだったんだ?」
「あー、それは私でも知ってるよ。有名だもん。転移でしょ」
テンイ…?転移か?
「いやいや、ンなもん出来ないでしょ?」
魔法は結果を持ってくることは出来ない。
例えば、木を燃やす時、炎を起こして火で木を焼くのが魔法。
逆に、木を燃やそうとしたら、燃えた灰が残るのが魔術。
魔法しか使えないヒトが転移なんて魔法を使えるわけがない。
「出来ますわよ。上三級の中でもかなり上位で使い道の殆ど無い魔法ですけれど」
「は?」
出来る?どうやって?しかも使い道のない?
「転移陣から転移陣への非物質なら可能ですわ。逆に物質だと発動しませんわね。原理はかなり難しいですけれど、聞きますの?」
「原理は気になるが聞いたら終わらねぇだろうからやめとく……要するに、実体のないものなら送れると?でも実体のないものって…なにを送るんだよ」
「さぁ…分からないですわね」
…まぁ、そうだよな。
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