大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

早抜けと見舞い

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いやぁキツかった。たかが一日経っただけなのに、凄まじい成長速度で俺に追いつかんとする勢いは本当に瞠目に値する。つーか素直にやめてくれと言いたくなる。
とは言え、この程度でやられるのなら二つ名なんてやってられない。勿論全員ねじ伏せてやりましたとも。
「んじゃ、片付け頼むわ」
「あれ?少し早くない?」
帰ろうとする俺にアリアンが声をかけた。
「一人で倍の面倒見てんだから多少は大目に見てくれ。あとヴィクターの様子を見に行きたいんでな」
「あー、それは私も気になるなー。後で教えて」
適当に返事をし、訓練所を後にする。
帰りしな、昨日保健室に預けたシエルがどうなったかを見に行くと、すやすやと眠っていた。先生に聞いてみると、身体にはどこも悪い所がないらしい。腕の注射痕も大半が塞がっており、肌の色も二、三日で元に戻る見込みだとか。
だが疲労が尋常では無いらしい。肉体的にも精神的にもかなり参ってるそうな。
ふーん、やはり何も出来ないというのは歯がゆいな。とは言え疲労となれば放っておくのが一番良さそうに聞こえる。
仕方が無いので保健室を後にし、部屋で着替え、軽く汗を拭いてから部屋を出てヴィクターの見舞いに行くことにする。本音を言うとシャワーで汗を流したかったが、髪を吹くのに時間がかかりすぎると思ってやめた。
「えーっと、アリアンの言ってた部屋はどこだっけなー、っと」
大きな独り言を言いつつ、ふらりふらりと部屋の番号をチェックしながら進む。
えーっと確か…この部屋だっけか。
ノックを三度。しかし返事はない。
「おーい、ヴィクター、大丈夫かー?」
聞こえているのだろうか。やはり返事はない。
ふむ、おかしいな。保健室にはヴィクターの姿はなかったし、食堂も今やっているとは思えない。彼の行先のアテがない。
学校に行ったか?いや、意味がわからない。そもそも体調不良なら、本来なら保健室に行くはずだ。なのに彼の姿はなかった。
まさかとは思うが。
俺の背中に嫌な汗が伝った。
ドアノブを回して戸を開けようとするが、鍵かかっていて開かない。蹴っても殴ってもビクともしないドア。これだけ騒いでも中からヴィクターが出てくる様子もない。寝ているだけかもしれないという可能性はこれで完全に潰えたと思っていいだろう。明らかに異常だ。
「マキナぁ!」
俺の右腕を中心に巨大なハンマーが出来上がる。
「ッラァ!!」
刻まれた魔法により重力の魔法を持つマキナがその能力を発動。振り回した瞬間に超加重、さらにインパクトの瞬間にももう一段階加重。
当然ドアは爆砕音と共に木の葉のように吹き飛んだ。
「おいヴィクター!大丈夫か!?」
部屋の中は暗く、明かりはなくカーテンも閉まっている。緋眼で暗視に切り替えると、部屋の中がかなりぐちゃぐちゃに汚いのが見えたが無視。
部屋の片隅にはベッド。膨らみがあり、ゆっくりと上下に動いている。慌てて駆け寄ると、間違いなくヴィクター本人だった。
「おい、大丈夫か?」
返事はない。頬を軽く叩いても反応はない。呼吸をしているので死んではいないようだ。
気絶している…のか。ひとまずこういうのは俺の専門外。保健室に連れて行くしかないか。
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