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本編
血と操作2
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剣が投げられた瞬間、俺はまだ空中にいた。
弧を描いて着地しようとしたらとんでもない勢いで剣を投げられており──俺はそれに気づくのに一瞬遅れた。
「!!」
気づいた時には既に剣は俺の目の前。咄嗟の回避をしようにも、浮いている上に無理な回避をして体勢を崩した身体を即座にどうこうするのは不可能。
だが。
それでも。
「足掻かないといけねぇんだよ…!」
避けられないのなら防ぐしか選択肢はない。防げないなら死ぬような勢い。
「第三血界──《血刃》!」
ズッ──と。
ちょうど心臓の真上から血の刃が飛び出す。
伸びろ、伸びろ、伸びろッ!!
元々苦手な血界。それを精一杯伸ばす。
血の刃先がちょん、と鋼の切っ先に触れた。
するとあっさりとウィルの剣が切れる。まるで柔いバターを切るように、なんの抵抗もなく。
血刃は斜めにウィルの剣を切り、切っ先を切断。残った剣の大半は狙いが逸れ、後ろの方へすっ飛んでいったが──しかし割れた剣の先端がさらに俺に迫る。
回避しきれない。
切断した剣の切っ先が、俺の喉に突き刺さる。
「ッガ、ハッ!」
『今代の!!』
切っ先は俺の喉に真正面から食い込むようにぶち込まれた。マキナがなけりゃ余裕で貫通してた。
しかしそれでも喉に突き立つ程度には威力があった。
「ゲッハ、ガッハ、ゲッフ、ガハッ!!」
血反吐を吐き、金剣を地面に突き刺しながら着地。ウィルとの距離はそれなりに空いており、なおかつ両手の動きが鈍いウィルも戸惑っているらしく、まだ攻撃は仕掛けてこない。
『落ち着けレィア君。まずはそれを引っこ抜く所からだ』
あぁ、と言おうとして激痛に言葉が出ない。涙目になりながら、喉に刺さった剣の先端を握り、一気に引っこ抜く。
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
せり上がる血の痰。激痛に視界が真っ赤に染まり、喉の傷を縫う髪が雑に応急処置を済ませる。
「くそったれが…!」
喉が熱い。呼吸が漏れ、息がしにくい。
ぺっ、と血を吐き、ウィルを睨む。
視線が絡み合い、僅かな沈黙が生まれる。
先に動いたのはウィル。ただひたすらに一直線。脇目も振らずに俺に突進して来た。
クソ、先に足を潰すべきだったか。だがもう遅い。
左の血の糸を一旦解除、金剣を両手で握る。
ウィルが雄叫びを上げながら再び盾の強打を繰り出す。
対する俺は金剣を下から上に振り上げて相殺。そのまま互いに高速のラッシュに入る。
剣が無くなっても全く気にせず殴ってくるウィル。速度が落ちたから金剣一本でも辛うじて対応出来ているが、最初の勢いで来られていたらすぐにミンチだっただろう。
だがそれでも拮抗しているとは言い難い。
パタタッ、と。
喉から血が漏れる。雑に縫っただけの応急処置だ。こうなるのは分かっていた。
息が漏れる。血が喉に流れる。反射的に咳き込みたくなるが、そんな事をしようものなら即、死だ。
だが勝機があるとするなら、俺にはこの時間稼ぎしかない。
あと一分…いや、三十秒…
金剣に伝わる重みでわかる。少しずつだが、ウィルの手から力が抜けているのが。
これなら行ける。そう思った瞬間、蹴りが来た。
弧を描いて着地しようとしたらとんでもない勢いで剣を投げられており──俺はそれに気づくのに一瞬遅れた。
「!!」
気づいた時には既に剣は俺の目の前。咄嗟の回避をしようにも、浮いている上に無理な回避をして体勢を崩した身体を即座にどうこうするのは不可能。
だが。
それでも。
「足掻かないといけねぇんだよ…!」
避けられないのなら防ぐしか選択肢はない。防げないなら死ぬような勢い。
「第三血界──《血刃》!」
ズッ──と。
ちょうど心臓の真上から血の刃が飛び出す。
伸びろ、伸びろ、伸びろッ!!
元々苦手な血界。それを精一杯伸ばす。
血の刃先がちょん、と鋼の切っ先に触れた。
するとあっさりとウィルの剣が切れる。まるで柔いバターを切るように、なんの抵抗もなく。
血刃は斜めにウィルの剣を切り、切っ先を切断。残った剣の大半は狙いが逸れ、後ろの方へすっ飛んでいったが──しかし割れた剣の先端がさらに俺に迫る。
回避しきれない。
切断した剣の切っ先が、俺の喉に突き刺さる。
「ッガ、ハッ!」
『今代の!!』
切っ先は俺の喉に真正面から食い込むようにぶち込まれた。マキナがなけりゃ余裕で貫通してた。
しかしそれでも喉に突き立つ程度には威力があった。
「ゲッハ、ガッハ、ゲッフ、ガハッ!!」
血反吐を吐き、金剣を地面に突き刺しながら着地。ウィルとの距離はそれなりに空いており、なおかつ両手の動きが鈍いウィルも戸惑っているらしく、まだ攻撃は仕掛けてこない。
『落ち着けレィア君。まずはそれを引っこ抜く所からだ』
あぁ、と言おうとして激痛に言葉が出ない。涙目になりながら、喉に刺さった剣の先端を握り、一気に引っこ抜く。
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
せり上がる血の痰。激痛に視界が真っ赤に染まり、喉の傷を縫う髪が雑に応急処置を済ませる。
「くそったれが…!」
喉が熱い。呼吸が漏れ、息がしにくい。
ぺっ、と血を吐き、ウィルを睨む。
視線が絡み合い、僅かな沈黙が生まれる。
先に動いたのはウィル。ただひたすらに一直線。脇目も振らずに俺に突進して来た。
クソ、先に足を潰すべきだったか。だがもう遅い。
左の血の糸を一旦解除、金剣を両手で握る。
ウィルが雄叫びを上げながら再び盾の強打を繰り出す。
対する俺は金剣を下から上に振り上げて相殺。そのまま互いに高速のラッシュに入る。
剣が無くなっても全く気にせず殴ってくるウィル。速度が落ちたから金剣一本でも辛うじて対応出来ているが、最初の勢いで来られていたらすぐにミンチだっただろう。
だがそれでも拮抗しているとは言い難い。
パタタッ、と。
喉から血が漏れる。雑に縫っただけの応急処置だ。こうなるのは分かっていた。
息が漏れる。血が喉に流れる。反射的に咳き込みたくなるが、そんな事をしようものなら即、死だ。
だが勝機があるとするなら、俺にはこの時間稼ぎしかない。
あと一分…いや、三十秒…
金剣に伝わる重みでわかる。少しずつだが、ウィルの手から力が抜けているのが。
これなら行ける。そう思った瞬間、蹴りが来た。
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