大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

事後処理と穴

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小瓶に入っている奴の欠片の反応を見るに、アーネの魔法で肉塊は完全消滅したらしい。残ったこの肉片も明らかに元気がない。じきに動かなくなり、そのうち消えるのだろう。
「助かった。アーネ。お前がいなかったらどうしようかと思って──アーネ?」
アーネから返事がない。それどころか目を閉じぐったりとしている。気は…失っていないようだが、かなり疲れているようだ。
「かなり魔力使ってたからね。普通ならとっくの昔に気絶か死んでるよ。どれだけ魔力溜め込んでたの?」
「さぁ?出来るだけ魔力蓄えといてとは言ったんだけど」
んー、見る感じアーネの中に魔力はそれなりに残ってるな。魔力不足でヘタってる訳じゃなさそうだ。
なら休ませるのが一番いいか。
「で、どうすんの?」
「うん?何が?」
「これ」
くい、と親指で指し示すのは黒々とした大きな穴。言うまでもないが、肉塊が出てきた穴である。
「そうだねぇ…とりあえず僕が見てくるよ」
「は?見てくるって…え、まさか入るのか?」
「うん?その話じゃないの?」
さも当たり前のようにウィルが言う。
「いや、単純に埋める方の話だと思ってたんだが…」
「あー、そっちか。まぁそれも考えなきゃなんだけどさ。コイツ、妙に魔力持ってたよね」
「うん?まぁ確かに」
「一体どこからあれだけの魔力を調達したんだろうね」
「どこからってそりゃ…」
…どこだ。すぐには出てこない。候補がない。
「今日の夕方六時までの話だけど、一年生が南下してから以降、生徒も職員も誰一人として欠けてない。ヒトを食べて魔力を得た訳じゃないんだ。だとしたらどうやってあんな量の魔力を蓄えたんだろう?」
「…その答えがこの先にあると?」
「有り得るかもしれない。無いかもしれないけれど。埋めるより先にそれを知りに行かなくっちゃね」
ウィルがそう言うなり、穴へと身を躍らせた。
「ちょっ!?」
「レィアさんは学校長に連絡入れといて!穴は今はまだ放置で!」
夜ということもあり、穴の底は暗く見えない。緋眼で覗く頃には既にウィルの姿は見えなくなっていた。
「くそぅ、残りの面倒事全部俺に押し付けやがった」
ぐったりとしたアーネをほっとく訳にもいかないし、学校長への報告も任されてしまった。
とりあえず、丸一日待って連絡がなかったら俺も飛び込んでみるか。
方針を決め、最優先で今から学校長の所へ出向き報告を──の、前に。
先にアーネを部屋へ連れていこう。今日の一番の功労者は間違いなくこいつだ。
アーネをおぶり、部屋へ向かう。その間に学校長へメッセージをかける。
「繋がったか?」
『お待ちください。繋がりました』
『……こんな夜更けに何事ですか』
「悪い、緊急の話だ。先に結論だけ言うと、例の化物を倒した」
『…続きを』
「結果、校舎の裏の地面にデカい穴が空いた。細かい説明は後でまたするが、その穴を今ウィルが調査中だ」
『わかりました。詳細は後で聞きます。すぐに学長室に来ることが出来ますか』
「アンタを起こすためにメッセージ飛ばしたんだ。すぐ向かう」
そう言ってメッセージを切る。
まぁ、アーネを寝かせたらすぐ、だけどな。
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