大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

魔法陣と完成へ

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俺の予想は的中し、二時間程度では終わらなかった。
三時間経過した今でもアーネはペンを走らせているし、ユーリアはそのサポートに回り着実に完成へと向けて進んでいる。
作業速度は基礎の基礎の基礎とやらの時と比べてずっと遅いが、それは単純に作業量の違い。
今、部屋のテーブルの約七割がペンのインクで黒くなっている。もちろんその全てが魔法陣の術式だ。
「っかぁ~…果てしないな」
「お疲れ。今んとこどのぐらい終わってるんだ?」
息抜きとばかりにユーリアがベッドに腰を落とす。そのまま勢いで後ろに倒れそうになるのを慌てて支え、俺も隣に座る。今のユーリアなら横になっただけで寝てしまいそうだ。
「そうだな、全体の八割ぐらいか。もう終わる」
「そんだけ来てるのか…俺にはよくわからん…」
「はは。まぁ、このレベルの魔法陣になるとほとんど誰も分からないと思うぞ?私もアーネの書く術式の書き損じを直す程度しかしていないしな」
そういうチェック係が休憩してちゃ不味くないか?ずっと見てなくていいのか?
「しかもそれしかやらないんじゃない。単純に手が出せないんだ。これじゃあ耳長種エルフの面目丸潰れだ」
「…魔法に関しちゃアーネも天才って事か」
「魔法というより魔法陣だな。しかも天才じゃなくて、これはどちらかと言えば秀才。誰もがドン引くぐらいの勉強の果てに身につけたものだろう。私も見習わなくてはなぁ…」
言われりゃアイツ、入学したての時から魔法陣を宙に浮かせて魔法撃ってたりしたな。どころか魔法陣も詠唱もなしにバチバチと魔力を弾けさせながら魔法を飛ばしたり……
「あれ?実はアーネって強い?」
「何を今更。彼女は強いぞ。魔法陣の構築に無駄は無いし速さもトップクラス。ならばと近距離に持ち込む前に遠距離から一方的に叩かれるからそもそも近づけない」
「魔法陣の構築より早く踏み込むのは」
「どんな化物だ。彼女の魔法陣構築速度は一秒無いぞ。それも最下級の魔法ですらまともに喰らえばスキルの強化で致命傷だ」
「弾をよけるのは」
「最下級の魔法なら構築直後から雨あられと大量に撃ってくる。おまけに自動追尾までしてくるのだから手に負えないぞ?」
思った以上にアーネって化物なのな。
逆に言えば、俺と恐ろしいまでに相性が悪い訳だが。
髪や鎧の強化によって魔法陣の構築より先に踏み込めて、最下級の魔法じゃ《魔法返し》のせいでそこまで痛手にならなくて、雨あられと撃たれようが《圧縮》故のサイズの小ささから回避出来る。
「……何考えてるかは大体分かるが、口にはするなよ?レィアのソレは所謂『理論上は可能』なだけで、誰でも出来る訳じゃないからな?」
「まぁ、別に全員に求めちゃいないさ。そのうちお前も出来るようになるだろうけど」
「え?マジ?」
思わず言葉が乱れるユーリアを無視して立ち上がり、ひょいとテーブルを覗く。
埋まり方からして大体もう終わりの方なのだろうか。俺にはそれぐらいしか分からないが、続いて立ったユーリアも魔法陣を覗き込んだ。
「ほぼ完成だな。レィア、悪いがなにか食事を持ってきてくれ。まだ食堂は空いていたはずだな?頼む」
「おう分かった。ユーリアの分は?」
「後回しでいい。今はアーネの分をありったけ頼む」
「了解」
と言う訳で一人で食堂へ。
戻る頃には終わっているだろうか。
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