大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

寝室と少女

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その日の晩、コンコン…と控えめなノックが部屋の戸を叩いた。
「おう、待ってた…どうした?そのカッコ」
ドアを開けると、その向こうにはかなり薄い寝巻きを着たセラ。
「べ…別に!なんでも…ないです」
「?そうか。まぁ入れ」
「お邪魔、します」
トテトテと入ってくるセラ。なんかぎこちない。
「あの、アーネ先輩は…?」
「あいつは今日ちょいと用事があってな。別の部屋に泊まってる。とりあえずそこのベッドにでも座って待っててくれ」
「え?ベッドですか!?」
「ん?あぁ。どうせすぐ使うし」
「つかっ!?」
素っ頓狂な声を上げて固まるセラ。ベッドは綺麗にしてあるからそんな気にしなくていいんだが。
「で、では、失礼します…」
「おう。ちょいと待っててくれ」
ベッドの軋む音。セラが腰掛けたのだろう。一方俺はガサゴソとバッグを漁る。
「あの、私こういうのは初めてで…」
「んー?気にすんな。誰にでも初めてってのはある」
「やっぱり…痛いんですかね?」
「痛い…まぁそうだろうな。出来るだけ痛まないようにするつもりではあるが…ミスったらすまん」
「いえ!その、大丈夫です!」
「ははっ、何が大丈夫なんだ?…お、あったあった」
バッグから取り出した道具をいくつか選び、セラの方を向く。
「そんじゃ始めるか。心の準備はいいか?」
「は、はい。あの、服は脱いだ方が…?」
「そっちの方が楽だな。どうする、俺が脱がそうか?」
「ぁ…いえ、恥ずかしいので自分で…」
細かい歳は知らんが、年頃の女の子に対して今の発言はあまりよろしく無かったか。
「その、恥ずかしいから、ジッと見ないで欲しい、です」
下着姿になったセラが、恥ずかしそうに胸や股に手をやる。
その身体は一度ほぼ炭化したとは思えない程白く、ほのかに上気した肌が鮮やかに映えていた。
「あぁ悪い、ちょいと見入ってた。綺麗だなって。もう火傷とかは痛まないのか?」
「火傷はもう完全に。これもレィアさんのお陰です」
「俺ァ何もしてねぇよ。怪我治したのは先生やアーネだ。俺はただお前を抱えて逃げてきただけだ」
「それでいいんです。あと、レィアさんは私に新しい希望もくれました」
義肢それか?別に大したもんじゃない。今日わかった。未完成もいいところだ」
「ふふっ、そんな事ないです。私はとっても嬉しかったんですよ?」
そこで一度会話が途切れ、沈黙が落ちる。
「んじゃ始めるか」
セラを軽く押し倒し、股関節の辺りに手を這わせる。
「あっ…ねぇ、レィアさん…」
「あ?」
「あの、恥ずかしいので明かりを…消してくれますか?」
潤んだ瞳でそう言うセラ。その姿はどこか必死に背伸びをしているようにも見えた。
が。
「何言ってんだ。明かり消したら手元が狂うだろ」
「………手元?」
「未完成だって言ったろ。義肢のパワーにお前の身体がついて行ってない。ほれ」
股関節のやや尻寄りの位置にあるスイッチを強く押し込むと、バチンという音と「ひゃん!」というセラの声と共に脚が外れる。
「やっぱり肉体の方がついて行ってないか」
すると、隠されていた脚の接合部には無骨な金属、そしてその金属が半ば突き刺さるようにしてめり込んでいる。歩き方が変だったのはこれのせいか。
「どうすっかなー、ギミックの変更は今からじゃ難しいし、かと言って素の筋力の方弄るのはコネクタとの兼ね合いも考えるとあんまり意味ないし…」
ひょい、と出したのは義肢作成時に使ったパーツの余り。元々義肢の修理用にある程度残しておいたものだ。
「やっぱり足の方に負担がなぁ…ちょいと義足を直さにゃならんな。と、その前に」
セラの脚にめり込んだコネクタを軽く引っ張って位置を調整し直す。
「大丈夫か?痛くないか?」
「っ、い!っ、た、くない!です!大丈夫!」
むぅ、涙が目の端に。痛くないといいつつ、やっぱり痛いよなぁ。確かこれ、骨に直接固定されてるはずだし。
最悪足の方に別のギミックを埋め込む必要が出てくるが…この様子だとそこまでじゃなさそうだ。
「色々チェックもあるし、今日は寝れると思うなよ」
「……その言葉をもうちょっとロマンチックに聞きたかっッッッ!?」
「あ?どう言う意味だ?」
「なんでもないでッッッす!」
んー、とはいえ結構食い込んでズレてるな。まずはそこら辺を直すところからか。
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