大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

タッグと連戦

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「──さて、そろそろか」
俺は銀剣とマキナを、ユーリアは双剣を出して戦闘準備に入り、フィールドに入る。
今回相手になるのは同級生のクラスメイト計二十四人。ちなみにウチのクラスは一クラス三十名なので、差し引き四名ほどサボっていることになる。その四名の中にはピィカヴも含まれているが。
「ルール確認だ!」
フィールドの内側から、俺が大声を張り上げる。
「互いのチームはピィカヴのネックレスを付けて、取られたら離脱。出入りは自由だが、出てる間は攻撃不可。最大十五人までならそっちは入ってきていいぞ。勝利条件は相手のチームのネックレスを全て破壊すること。これでいいか!?」
「あぁ!それで頼む!」
カリロンが応え、俺が頷く。
「よし、じゃあ先に潰されたい奴から来い!」
そう言うと、誰も臆したりせず、フィールドに続々と入ってくる。手始めに…六人か。
「さぁ来るぞ。構えろよ」
「一人で三人か…本当に無茶をしてくれる」
どうせお前だってこれぐらい何とかなるだろ。と思ったが、言いはしない。
俺とユーリアの距離は大体三メートル程離れ、横並びに立つ。これなら辛うじて互いにフォロー出来る上で邪魔にならない。
最大展開された結界の端から、誰かが走ってくる。あの速度なら恐らく──
「任せていいか?」
「初手は私か。まぁいいが」
そう言って、ユーリアは剣先をクルクルと回し、円を作る。
「其はよろずを生み出す大地より来たる。空を見ず、湖を知らず、その地のみを進む──」
ここで詠唱の省略。素人目にも明らかに不自然に切れた乱雑な詠唱であっても、しかしエルフ彼女なら容易く魔法を生み出せる。
「《グランド・コブラ》」
切っ先で描かれた小さな輪。
しかし、そこから生み出されたのは胴回りが俺程もある土塊で出来た巨大な蛇。
それが蛇行しつつ、固まっていた六名へ突撃する。
凄まじい土煙が視界を遮り、六名の安否は分からない。普通ならば全滅だろう。
「流石耳長種エルフ。滅茶苦茶やるね」
「まぁ、これで牽制ぐらいにはなっただろう。来るぞ」
だが、ここは聖学。
生中な実力では進級すら許されない。
ヒュオン!!と。
鋭い音と共に俺の顔に何かが飛んできた。
俺が回避するまでもなく、マキナが弾き飛ばし、それを俺が空中でキャッチする。
「これは…ナイフか」
鋸刃と返しがてんこ盛りの仰々しいナイフの軌道は、完全に俺の目だった。
「狙いは完璧か」
「悠長な事言ってる場合じゃないぞ!」
狙いが完璧という事は、相手もこっちの魔法は想定内。
それを受けた上で。いや、受けても問題ない上で。奴らは攻めてくる。
『後方、魔法が見える。三つ…あ、四つだ。魔法返しは抜けないが…生身だと相当な衝撃だぞ。あぁそれと──』
シャルの警告。
「魔法が来る。備えろ」
「いやレィア、その前に──もう来てる」
ユーリアの警告と同時に──カァン!と甲高い音。
「あれっ?死角から入ったんだけどなぁ…?」
短剣と言うには大きいナイフを一振り、俺の首に振り下ろそうとしているのを銀剣の柄で弾く。
「悪いな。実は全部見えてた」
嘘だけど。でも、見えてる奴はいた。
「あと『もう一人』」
「んげっ!?」
こちらは身の丈を超える巨大な大斧。どうやって一瞬で接近したか分からないが──驚異には違いない。
「だがもう遅いッ!!」
身体の捻りを最大限に活かして、下からすくい上げるように放つ斧使いの一撃。
真っ赤に放つ光は痛々しいほどで、そこに込められた戦技アーツがどれほど凶悪か、受けずとも分かる程だった。
「《血塗れ戦斧ブラッディ・スマッシュ》!!」
「威力は百点」
だが──
「発生が遅いな」
俺はそう言って、刃に両足を乗せ、軽く前に転がるようにして蹴飛ばした。
すると、大斧は凄まじい勢いで振り抜かれるが、俺はその上を滑るようにして回避。回転して着地を決める。
そう、回転して、だ。
「っ、だとォ…!?」
今の斧と回転のエネルギーを身体に保存。ほとんどを受け流したため、そこまでエネルギーがある訳では無いが──一度動き出せば、俺の銀剣は止まらない。
準備はようやく整った。
「行くぞ」
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