大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

起床と衝撃

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「………」
昨晩、部屋に戻ったのは遅く、確か十二時は過ぎていた。
ちなみにアーネには適当に「他の二つ名持ちに呼ばれた」って言って練習に行ってた。…練習のこと、誤魔化すネタがそろそろ尽きてきたな。おっと、そうじゃなかった。
まぁ取り敢えず、そこから適当に風呂に入って寝た訳だ。
うん、何一つおかしい所はないよな。
ない…よな?
さて、そんじゃ現在何が起きてるのか確認してみようか。
………いつの間にか《不動荒野》が俺達の部屋に入り込んでじっとこちらを見ている。
当然、昨晩鍵は閉めた。というか、確かここ、オートロックだよな?
んでもって、あのくれないの森に住んでいて、いつ魔獣の襲撃があっても大丈夫なように、寝ていても何者かの気配が少しでもあれば大概(例外、ナナキとか)即座に寝ながら戦技アーツを放てる俺がそのままスルー。
いやまぁ、確かに昨晩は慣れない血界だとか増幅魔法を使ったりしてたから、疲労は中々だったけどさ。
ちなみにまだ目は開けていない。
ただ、気づかれないように髪で位置やら何やらを調べてみると、どうやらこの二人、勝手にテーブルの上に食料を持ち込んで食い散らかし、のんびりとしている模様。
ホント、何で気づかなかったんだろうな…これも二つ名持ちだったら朝飯前とか?文字通り?やかましいわ。
何も話していないと言うことは、何かを待ってるんだろうなぁ…何かって?確実に俺が起きるのだろ。
正直起きたくはないが、そろそろ起きてアーネを起こさないと、学校に遅れる。
「……」
静かに、自然な風に起き上がり、何気なく二人の方へと顔を向ける。
「…?」
ありゃ?いない?
いや、でもさっきまで確かにいたしな…というか、いたはずだしな。
特に何も考えるでなく、ぐっ、と背伸びをしながら身体を反らせると。
「やぁ!」「おはよう!」
天井に張り付いている《不動荒野》が。
そのまま落ちてきやがった。
どこに?俺の真上に。
「ブフォッ!!」
親方!空から女の子(×二)が!。
ただ、現実は非情かな。非力な俺が二人を支えられる訳がなく、結果的に朝から女子二名からサマーソルトプレスを二発食らっただけだった。
「ちょ!ギブギブ!早くどけよ!!重い!」
いくら二人が小柄で比較的軽いと言っても、二人分だと相当な重量だ。加えてかかととか肘が地味に俺の鳩尾にグリグリと捩じ込まれてるし。
「ちょっと!」「レディに重いは禁句!!」
そう言いながら俺の上で跳ねる二人。
ヤバイ。マジで痛い。
淑女レディは朝っぱらからサマーソルトプレスなんてしねぇよ!!」
つーかマジで早くどけ!じゃないと…。
「朝っぱらからなんですの!!」
遂にアーネが起きた。
グチグチと何か言いながら身体を起こし、俺の方を見る。
多分、アーネの視界にはこう映ってる。
俺の上に着たものを崩しながら、少女二名が腰の上に乗って息を荒らげつつ跳ねる。
あ、ヤバい。出来るだけ簡潔に書いたけど、アーネの真っ赤な顔色を見るに、もっとディープな所まで行ったらしい。
「ちょっとま」
「問答無用ですわ!」
結論。勇者の《魔法返し》がなけりゃ、多分塵になってた。
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