大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

熱と騎士4

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「がっ……ごッブ!?」
背中から何かが勢いよくぶつかると同時に、まるで殴り飛ばされたかのように吹き飛ばされる俺。
それと同時に、火傷したようなじくじくとした痛みが背中全体から発せられる。
「っ、ぐぅ!?」
だが、まずは吹き飛ばされる方向がまずい。このままではデーモンの方へ一直線だ。
即座に髪を地面に突き刺し、ブレーキをかけて身体を起こす。
幸い、そこまで勢いはなかったのでデーモンの射程内に入ることはなかったが、問題は背中から何を受けたのかだ。
『今代の!?大丈夫か!?』
背中がクソ痛ぇ。生きたままミディアムレアになった気分だ。
『あー、うん、あながち間違ってないよ。背中が凄いことになってる』
レイヴァーが呑気にそう肯定する。
『反射的に髪と剣を間に挟んだのは流石だけど、それでもやっぱり溶岩を完璧に防ぐのは無理だったみたいだな。見てきたけど、背中は服とか諸々貫通して、皮膚が真っ黒になってるよ』
…うげ。後でアーネに見せて説教コースだな。
しかし溶岩…溶岩か。あいつ、やっぱりそういう能力があるっぽいな。
俺達の持つ血海に似ているが、あちらは操るのは血ではなく溶岩。当然威力も桁違いなのは俺が身をもって実感した。
『骨はまだ折れてないし焼けてもない。筋肉も表面だけしか焼けてないから致命的ではないけれど…問題は背中の皮膚がかなりパリッと行ってるね。あんまり激しく動いたらそこから割れて血が溢れるよ』
レイヴァーが俺の怪我を見てきてくれたらしい。詳細を教えてくれた。
「………。」
聖弾はまだ消えてない。振ると一発で飛び出してしまうが、逆に言うなら振るまで絶対に消えないのかもしれない。他の三種はいつの間にか消えていたが、ずっと装填していた水の弾はまだ剣の形を残していた。
デーモンの方を見ると、嬉しそうに口角をにちゃりと歪ませた。
あの野郎、こっちに有効打が無いことを気づきやがったな?また地面を叩き始めた。
「くそっ!」
溶岩は地面から突然現れる訳では無い。
恐らく、最初やさっき撃ったブレスで出来たマグマの池から、あるいは地中を這わせた自身の溶岩を下や横から操って当ててきているのだろう。斧の動きはさりげなく血を地面につかせるための予備動作モーションか。
だとしたら次はどこから来る。後ろか?下か?それとも全く別の所から?
くそっ、シャル、今どれぐらい時間が経った?
『ざっと…そうだな、六分…七分って所か』
のこり三分が──遠い。
背中が熱い。痛い。
だから──というか。
金剣を肩に担ぎ、《破断》の構えでデーモンに突撃したのは、ほぼ無意識の事だった。いや、あるいはそうするのが正しいと直感で理解していたのかもしれない。
なんにせよ、俺は異常な熱を発する敵へ、全速力で向かっていったのだった。
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