大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

魔獣と打破

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さて、少しだが時間が空いたので魔獣を観察してみる。
遠目では少々分かりにくいが、魔法の発光や爆発は消えたので、さっきよりかは見やすい。これなら目を凝らせばかなり良く見える。
見た所、体毛は黒で目は赤、目元から尾にかけて白か銀か分からないが、それ系統の色をした線がどの個体も入っている。
サイズとしては大体人より一回り大きいぐらいの大きさ。普通に大きいのだが、魔獣としてはかなり小型。恐らく群体で狩りをするタイプだろう。
前回、少し触れたかもしれないが、スコルやガルムは基本的にこのようにして群れで攻めてくる。
ちなみに、スコルは正真正銘の狼の群れ。ガルムは実は巨大な狼で、それが分裂して小さくなって群れをなして襲ってくるという差がある。見た目はどちらもそっくりだが、スコルはよく見ると個体差があるのに対し、ガルムは全て全く同一の個体であるので、そこで見分けを付けるしかない。
さらに余談だが、スコルの色違いで体毛が銀で黒のラインが目から尾にかけて伸びる狼がおり、こちらはハティと呼ばれている。スコルとハティの関係性については分かっていない。
まぁ、魔獣そのものがかなり謎が多いから、なんとも言えないんだよな。
研究しようにも危険だし、このクラスの魔獣になるとヒトにそんな余力はまぁ無いし。
元々の動物が魔獣になったタイプの研究はそれなりに進んでいるはずだが、結界の外でよくあるような、発生するタイプの魔獣はそもそも結界内では発生しないこともあって研究は中々進んでいないらしい。
『どこでそんなの知ったんだ?』
学校の図書館。片っ端から色々知識をつけてた頃になんかで読んだ。
『なるほど。ところで動いたぞ』
「おっ」
くだらんことをしていて大事なところを見落とす所だった。
突如、ざあっ、と砂のように鉄のドームが崩れ落ちた。
当然、飛びかかる魔獣。
その数は一匹や二匹ではない。二桁近い狼が一斉に飛び掛るのだ。
対する一年生は──魔法?でも詠唱が明らかに間に合ってないんだが。
当然、一瞬で襲われる一年生達。
喉笛を噛み切られ、血が飛沫を上げ、断末魔すら上げずに死んでいく──ように見えた。
「おぉ。なんだありゃ」
が、噴いた血飛沫が赤くない。気味悪さすら覚える空よりもずっとずっと青い、真っ青な血。
それがかかった途端、狼達が悶える。
そりゃそうだ。ここまで届くぐらいあの青い血が臭いのだ。
たとえようもない程の臭気はこの距離にいてもアーネが軽く口を覆う程。
かく言う俺も思いっきり顔を顰めて鼻を塞ぎたくなる。
遠くで見ているだけの俺達ですらそうなのだから、至近距離で直に浴びた魔獣達がどうなったのかなど、想像を絶する。
のたうち回り、情けない声をヒンヒン上げながら一年生へ噛み付くが、どの生徒も血は青い。全てダミーのようだ。
「逃げたか」
「みたいですわね。ほら」
と言ってアーネが受信機を見せてくると、既にこの位置からかなり離れた距離に三チームの反応がバラけてマークされている。
ふーむ、どうやって逃げたのだろうか。
少し気になるし、あの青い血のダミーも魔法なのかスキルなのか分からないし、それを知るためにもちょっとあの辺を調べる必要があるな。
「よし、ちょっとあの辺行くぞ、アーネ」
「私、行きたくないんですけれど」
「臭ぇし気が立った魔獣がいるから行きたくないのはのは分かるが、やらにゃならんのは変わらん。行くぞ」
一応もう一回反応をチェックし、どの反応も俺達からかなり遠い事を確認してから金剣を抜く。
最初にあの魔獣の処理からだ。
「頼むぞアーネ」
「仕方ありませんわね…」
姿を隠す布を剥ぎ取り、涼しい外の空気を久しぶりに直に吸う。まぁ、それも青い血のせいでかなり臭いのだが。
「行くか」
「ええ」
再びアーネを抱え、魔獣へ急接近。
というか、魔獣が後ろを取られてから反応するのか。よっぽど臭くて注意を削がれたか。
「後片付けの時間だ。全員片付けてやる」
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