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本編
連戦と決着3
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音の発生源は背中の方…つまり。
フィールドそのものから。
カシャァァァァァァン、とガラスが砕けるような音と共にフィールドが消滅。サラサラと塵の様なものが降る。
一撃でフィールドを破るのではなく、粉々に砕いたか。
そして俺は。
戦技が炸裂すると同時に、凄まじい勢いで吹き飛ばされ、訓練所の壁にぶち当たった。
全身の骨が軋み、泣き言を言っている。意識を何度も手放しかけ、すぐに引き戻す。そんな事がこの数瞬の間に何度も起きた。
しかし、意識を手放すわけにはいかない。まだ勝負は終わっていないのだから。
今の一撃で、手元にあるのは黒剣一本のみ。金剣も遠くに落ちているし、銀盾は…比較的近いが、それでも遠い。もう一本の黒剣に至っては、まさかの相手が持っているという状況だ。
「へえ、この剣、ちょうどいい重さだねえ。私が持つと、ほとんどの武器は軽すぎて、使いにくいんだけどお…」
馬鹿抜かせ。そりゃ他人用の重さ…つまり、人が持つような重さじゃねぇぞ。
しかしその剣を持って軽く素振りをするのを見ていると、嘘ではないらしい。
どんな馬鹿力なんだ。
「うんうん。これなら私も、お父さんに近づけるかなあ?私が勝ったらこの剣、頂戴?」
「そりゃ悪いが無理だ。そいつは非売品なんでな。…ん?親父がそんなに強いのか?」
さっきの一撃で、最初の距離よりも離れてしまったが、会話を妨げる程ではない。
そう言えば、観客がほとんどいなくなっているな…あぁ、フィールドが無くなったから危険だと判断して逃げたのか。多分、俺の意識が浮いたり沈んだりしている間に。どおりで静かな訳だ。
「そうそう、すっごく強いんだよお?なんせ、誇張なしでヒト種の最強、その一角なんだからあ。だから少しでも追いつくために、この剣欲しかったんだけど…残念」
ヒト種の最強、その一角。
口の中でその言葉をもう一度転がす。
それを意味するのはたった一つ。
それ即ち英雄。
………コイツの名前は?さっき何って名乗ってた?
…ライナ。
………そっちじゃない。名字だ。
…ライナ・ヴァスティナム。
…ヴァスティナム?その名前は…。
「は、ははははは、ははははっ」
「あれえ?どうしたのお?まさか疲れと痛みで頭おかしくなっちゃったあ?」
「セリム・ヴァスティナム!」
「わっ」
思い出した、確かにいたな。
「いきなりお父さんの名前呼んで、キミ、どうしたのお?」
間違いない。そうか。
「そうかそうか。お前は英雄の娘か。そうか」
「本当にキミどうしたのお?頭打っちゃったあ?どうするう?負けを認めたら、すぐに保健室に運んであげるよお?」
巫山戯るなよ?
《勇者》が《英雄の娘》に負けてちゃ、《英雄》になんて勝てやしない。
絶対に。
「絶対にテメェに勝ってやるよ」
笑う膝を叩いて立ち上がる。
背中の壁に寄りかかりながら身体を支える。
離れた所に転がっていた銀盾を髪で拾い、引き寄せる。
そして。
手元に残った黒剣を相手に突きつけ、前を向く。
「大ッ嫌いな《英雄達》に、《勇者》が負ける訳がねぇ」
フィールドそのものから。
カシャァァァァァァン、とガラスが砕けるような音と共にフィールドが消滅。サラサラと塵の様なものが降る。
一撃でフィールドを破るのではなく、粉々に砕いたか。
そして俺は。
戦技が炸裂すると同時に、凄まじい勢いで吹き飛ばされ、訓練所の壁にぶち当たった。
全身の骨が軋み、泣き言を言っている。意識を何度も手放しかけ、すぐに引き戻す。そんな事がこの数瞬の間に何度も起きた。
しかし、意識を手放すわけにはいかない。まだ勝負は終わっていないのだから。
今の一撃で、手元にあるのは黒剣一本のみ。金剣も遠くに落ちているし、銀盾は…比較的近いが、それでも遠い。もう一本の黒剣に至っては、まさかの相手が持っているという状況だ。
「へえ、この剣、ちょうどいい重さだねえ。私が持つと、ほとんどの武器は軽すぎて、使いにくいんだけどお…」
馬鹿抜かせ。そりゃ他人用の重さ…つまり、人が持つような重さじゃねぇぞ。
しかしその剣を持って軽く素振りをするのを見ていると、嘘ではないらしい。
どんな馬鹿力なんだ。
「うんうん。これなら私も、お父さんに近づけるかなあ?私が勝ったらこの剣、頂戴?」
「そりゃ悪いが無理だ。そいつは非売品なんでな。…ん?親父がそんなに強いのか?」
さっきの一撃で、最初の距離よりも離れてしまったが、会話を妨げる程ではない。
そう言えば、観客がほとんどいなくなっているな…あぁ、フィールドが無くなったから危険だと判断して逃げたのか。多分、俺の意識が浮いたり沈んだりしている間に。どおりで静かな訳だ。
「そうそう、すっごく強いんだよお?なんせ、誇張なしでヒト種の最強、その一角なんだからあ。だから少しでも追いつくために、この剣欲しかったんだけど…残念」
ヒト種の最強、その一角。
口の中でその言葉をもう一度転がす。
それを意味するのはたった一つ。
それ即ち英雄。
………コイツの名前は?さっき何って名乗ってた?
…ライナ。
………そっちじゃない。名字だ。
…ライナ・ヴァスティナム。
…ヴァスティナム?その名前は…。
「は、ははははは、ははははっ」
「あれえ?どうしたのお?まさか疲れと痛みで頭おかしくなっちゃったあ?」
「セリム・ヴァスティナム!」
「わっ」
思い出した、確かにいたな。
「いきなりお父さんの名前呼んで、キミ、どうしたのお?」
間違いない。そうか。
「そうかそうか。お前は英雄の娘か。そうか」
「本当にキミどうしたのお?頭打っちゃったあ?どうするう?負けを認めたら、すぐに保健室に運んであげるよお?」
巫山戯るなよ?
《勇者》が《英雄の娘》に負けてちゃ、《英雄》になんて勝てやしない。
絶対に。
「絶対にテメェに勝ってやるよ」
笑う膝を叩いて立ち上がる。
背中の壁に寄りかかりながら身体を支える。
離れた所に転がっていた銀盾を髪で拾い、引き寄せる。
そして。
手元に残った黒剣を相手に突きつけ、前を向く。
「大ッ嫌いな《英雄達》に、《勇者》が負ける訳がねぇ」
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