大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

黒山羊と緋眼騎士

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新しく調整されたマキナによって強化され、さらにそのマキナが今の俺に合わせて変化した千変によって、俺の身体能力は劇的に向上し、その力と金剣の力をもって、一瞬でヤギの魔獣との距離をゼロにする。
「ッッ!!セイ!」
左前腕から入り、下から上へと切り上げる。
その際に跳躍、小指と薬指の間から肘相当の所まで一気に斬る。
すると、俺が駆け抜けた後に沿って真っ赤な血が吹き上がり、魔獣は苦悶の声を上げた。
「よし!」
思ったよりかは刃が通る。だが、決して刃が通りやすい訳では無い。
弾かれたり超再生されないだけマシか。
「ヴヴウヴゥ…」
魔獣は未だ滴る血を睨み、次いで地面に立つ俺を強く睨んだ。
なにかされる。そう直感し、俺はさらに追撃をかける。
敵は二十メートル級の巨大な魔獣。
首を切り落とすにしても心臓を貫くにしても、武器のリーチが足りない。
いや、それはまだ解決出来なくもない。だが、魔獣の手足の長さ的な問題で、そもそも高さが足りない。
だったら答えはひとつ。
「あのキモい手足を切り倒す。大地と胸の口をキスさせてやる」
『了解しました』
マキナが手足の装甲を重点的に強化し始めたのを感じた矢先、魔獣が暴れ始める。
聞くに耐えない声を撒き散らしながら、人とそっくりな手を叩きつけ、なぎ払い、掴もうとするが、全てを回避しつつ、カウンターの一撃を叩き込んでいく。
それ自体は別に問題ではないが、その巨体故の重さが乗った攻撃を耐え続けるのはキツいものがある。
金剣の重さのみでは耐えきれず、マキナで脚裏から杭を生んで踏ん張っている程だ。
やがて魔獣が血塗れの腕を振り上げ、もう一度あの時のように叫んだ。
「ヴェエエエエエエエエエエアアアアアアアアアアアアアアあああああああああああ!!」
「!?」
相手が叫んだ瞬間、身体が固まった。
それを見て、ヤギ魔獣がニヤリと笑った気がした。
前の手を組んで、上から潰さんと振り下ろす。巨大な質量と、大きく振り上げてから降ろされたその一撃は、なんの抵抗もなく俺を釘のように地面へ打ち付けるだろう。
もしも俺が普通だったら。
「クソッ!」
だが生憎とこちらも普通ではない。
自由の利かなくなった身体をスキルで上書きするようにしてコントロールを強引に奪取。
そして即座に金剣に仕込まれた《聖弾》を解放。
間に合え間に合えと焦りながらも風の魔法を金剣に仕込み、振り下ろされた拳と斜めにぶつけあった。
途端に開放された風の聖弾が握りしめられた拳を僅かに逸らし、同時に俺の身体を吹き飛ばした。
「くっ!」
『損耗軽微』
今の風でのダメージはほとんどないとマキナが伝えるが、そんなことに構っていられない。
早くも切り札を切るハメになった。しかも、撃ち切れば金剣は丸一日ほど柄だけで使い物にならないだろう。
残り三発の聖弾で行けるか?
いいや、やるしかない。
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