208 / 2,022
本編
蛇と親玉 終
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距離は充分にあったけど、相手が魔法を使うのだから、この程度の距離はあって無いようなもの。むしろ、近接でしか戦えない俺達からするとマイナスだろう。
ナーガが放ち、音を上げて飛んできた火球は。
「ユーリア」
「任されたぞ!」
ユーリアがそう叫ぶと、御者台から前へジャンプし、自ら火球へとその身を投じ…手にした剣をもって斬った。
俺が弾いても良かったが、ユーリアがウズウズしていたのが目の端に映ったのでいかせた。
「ユーリア、大丈夫か?」
「余裕余裕、超余裕だ!いつぞやのアーネの火球の方が斬りごたえがあったがな!」
そう言いながら笑うユーリア。
視線を元のナーガへ戻すと、怒り狂いながらさらに数発の魔法を撃ってきた。
凍らされた氷柱。
燃え上がる炎弾。
空を駆ける雷撃。
降りそそぐ土塊。
あらゆる魔法が飛んでくるが、それをユーリアは次々と斬っていく。
氷柱を砕き。
炎弾を裂き。
雷撃を絶ち。
土塊を払う。
普通に剣を振っただけでは、氷に剣を折られるだろう。炎に身を焼かれるだろう。雷が体を走り抜けるだろう。土がその身を砕くだろう。
しかし、ユーリアはそうはならない。
全てにおいて完璧な一撃をもって魔法を斬るという有り得ない事をしている。
俺が出来るとしたら、せいぜいが《煌覇》で消し散らすことぐらいだろうが…そうではない。そうではないのだ。
ユーリアは戦技すら使っていないし、ましてや魔法も使っていない。本当に素の剣技、その技のみで不可能を可能にしている。
やがてユーリアがじっくりと前進し始める。
勝負を決めるつもりのようだ。
「ユーリア、そいつも殺すなよ!」
「なんと!私は殺す気満々だったのだが仕方ない!今はレィアがリーダーだからな!」
その言い合いに腹が立ったのだろう。
『フザケルなァァァァァ!』
ナーガがそう叫びながら一際大きな氷柱…いや、もはや氷山のようなそれを撃ってきた。
「ユーリア!行けるか!」
ユーリアは避けることが出来ない、後ろに俺達がいるし、そもそもこんな力任せの魔法、避けられない。
「『始まりの丘に剣あり』」
詠唱!確か《ナイト・オーダー》の!
「『願い、望み、希う』」
まずい、なんだか知らないが前回より長い!
くそ、間に合うか!頼む!
出てくれ!
「《煌覇》ァァァァ!」
ロック解除の文言抜きでの《煌覇》。
元々、剣を鞘から抜く、というプロセスを戦技にしたものなので、究極的に言うならロックは外さなくていいのだが、今までは未熟だったからかロックを外さないと撃てなかった《煌覇》。
ほぼ奇跡のようなもので、振り抜いた銀剣は紅く輝き、氷山へと突っ込み、拮抗する。
「『希望と望みの始まりで、我らは彼に誓った
ひとたび振るえばその刃は全てを絶つ
故に我らは約束する』」
終わったか?《煌覇》はそろそろ終わる…というか落ちる。
「《陰ながら主を支える者》」
過去に聞いたものより長かった詠唱。その結果出てきたのは…。
「三体!?」
透明ではないものの、三体もの異形の鎧。
「蹴散らせェェェェェェェェェ!」
『『『―――――――――――――ッツ!!』』』
異形の鎧は声にならない雄叫びを上げ、氷山を完璧に受け止めた。
いや、それだけではない。
押し返した。
爆音と共に落ちた氷山。そのすぐ近くにいたナーガは腰を抜かしたらしく、へなへなと座り込んでいた。
ナーガが放ち、音を上げて飛んできた火球は。
「ユーリア」
「任されたぞ!」
ユーリアがそう叫ぶと、御者台から前へジャンプし、自ら火球へとその身を投じ…手にした剣をもって斬った。
俺が弾いても良かったが、ユーリアがウズウズしていたのが目の端に映ったのでいかせた。
「ユーリア、大丈夫か?」
「余裕余裕、超余裕だ!いつぞやのアーネの火球の方が斬りごたえがあったがな!」
そう言いながら笑うユーリア。
視線を元のナーガへ戻すと、怒り狂いながらさらに数発の魔法を撃ってきた。
凍らされた氷柱。
燃え上がる炎弾。
空を駆ける雷撃。
降りそそぐ土塊。
あらゆる魔法が飛んでくるが、それをユーリアは次々と斬っていく。
氷柱を砕き。
炎弾を裂き。
雷撃を絶ち。
土塊を払う。
普通に剣を振っただけでは、氷に剣を折られるだろう。炎に身を焼かれるだろう。雷が体を走り抜けるだろう。土がその身を砕くだろう。
しかし、ユーリアはそうはならない。
全てにおいて完璧な一撃をもって魔法を斬るという有り得ない事をしている。
俺が出来るとしたら、せいぜいが《煌覇》で消し散らすことぐらいだろうが…そうではない。そうではないのだ。
ユーリアは戦技すら使っていないし、ましてや魔法も使っていない。本当に素の剣技、その技のみで不可能を可能にしている。
やがてユーリアがじっくりと前進し始める。
勝負を決めるつもりのようだ。
「ユーリア、そいつも殺すなよ!」
「なんと!私は殺す気満々だったのだが仕方ない!今はレィアがリーダーだからな!」
その言い合いに腹が立ったのだろう。
『フザケルなァァァァァ!』
ナーガがそう叫びながら一際大きな氷柱…いや、もはや氷山のようなそれを撃ってきた。
「ユーリア!行けるか!」
ユーリアは避けることが出来ない、後ろに俺達がいるし、そもそもこんな力任せの魔法、避けられない。
「『始まりの丘に剣あり』」
詠唱!確か《ナイト・オーダー》の!
「『願い、望み、希う』」
まずい、なんだか知らないが前回より長い!
くそ、間に合うか!頼む!
出てくれ!
「《煌覇》ァァァァ!」
ロック解除の文言抜きでの《煌覇》。
元々、剣を鞘から抜く、というプロセスを戦技にしたものなので、究極的に言うならロックは外さなくていいのだが、今までは未熟だったからかロックを外さないと撃てなかった《煌覇》。
ほぼ奇跡のようなもので、振り抜いた銀剣は紅く輝き、氷山へと突っ込み、拮抗する。
「『希望と望みの始まりで、我らは彼に誓った
ひとたび振るえばその刃は全てを絶つ
故に我らは約束する』」
終わったか?《煌覇》はそろそろ終わる…というか落ちる。
「《陰ながら主を支える者》」
過去に聞いたものより長かった詠唱。その結果出てきたのは…。
「三体!?」
透明ではないものの、三体もの異形の鎧。
「蹴散らせェェェェェェェェェ!」
『『『―――――――――――――ッツ!!』』』
異形の鎧は声にならない雄叫びを上げ、氷山を完璧に受け止めた。
いや、それだけではない。
押し返した。
爆音と共に落ちた氷山。そのすぐ近くにいたナーガは腰を抜かしたらしく、へなへなと座り込んでいた。
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