大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

相談と今後

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さて、知っているだろうが遠距離メッセージは片道三日間かかる。どういう仕組みかはよく知らないが、近距離で遠距離メッセージを使っても、超々遠距離から遠距離メッセージを使っても三日間…七十二時間でメッセージが届く。
つまりメッセージの往復に最短でも六日間かかる訳だ。
で、ユーリアの婚約者が来るのは約一週間後。ちなみに今日が金曜日。
ユーリアの父親がユーリアのメッセージを見て即座に返事を出したとしても、ユーリアの手元に届くのは木曜の夜遅く。
ついでに言うと馬車で聖学こっちに来るのに大体二、三日かかるのでユーリアの父親が何か行動を起こすのにはギリギリ間に合うだろう。
ギリギリ間に合うだろうが……
「まぁ、父はそのまま行かせるだろうな」
とは娘のユーリアの言葉。
「婚約者を決めたから、と書いてありはしたものの、多分今も選定の真っ最中だろうしな。これでも可愛い可愛い愛娘の結婚相手だぞ。厳選に厳選を重ねるはずだ」
「それなら一週間程度で選定を終えるなよ」
思わずボソリと呟いた声が聞こえたらしい。
「いや、多分私が聖学に行った頃から始めてるぞ。今やっているのは最終選考だろうな」
よーやるわ。
「で、俺は何すりゃいい訳よ」
「別に何もしなくていいぞ」
「は?」
「いや、だから別に何もしなくていいって。私の方で適当に『私より弱い奴と結婚出来るか』とかなんとか言えば相手も引くだろう」
「あぁ…うん、まぁ」
確かに無理だろう。
「とは言え、多少はそれっぽい雰囲気を出してくれると助かるがな。ラブラブでいろとはいないが、いつもより私が馴れ馴れしいかもしれんが堪えてくれ」
「別にそんぐらいはいいけどさ…つーか学校長になんか言って、土曜に来る婚約者を追い返してもらったらどうだ?」
「私が?学校長に?言えると思うか?」
ん?何か問題でも………あったわ。
「そういやお前《猫》だったな」
面倒なしがらみだな。本当に。
「その、私としてはまだ結婚とか、そういう事は考える余裕が無いんだ。今はただ、もっと上を目指して剣を握っていたい」
「はぁ、本当にお前ってさぁ…」
「ん?何かあったか?」
「いや、なんでもない」
俺に似てんだよ、とは言えない。
いや、何年か前の俺に、か。
「んじゃ今度一緒に練習でもするか」
「珍しいな、君からそう言ってくれるなんて。私としては嬉しい限りだが…模擬戦は?」
「少しぐらいならいいぞ」
「………。」
「どうした?」
「いや、本当に珍しいな。いつもなら絶対に嫌がる癖に」
「そういう気分だって言うだけだ」
こっちも剣の慣らしをしたいしな。
「とりあえず、そういう訳だ。来週は頼むぞ」
「わーったわーった」
そういや、ずっと黙ってたアーネは?と思って見ると、枕に抱きついたままじっとこちらを睨んでいた。
「………なんだよ」
「………別に。ですわ」
「その、アーネ、すまんな。そういう訳だから少しだけ…借りるぞ?」
ユーリアの言葉に対し、アーネは拗ねたようにコクンと頷いた。
なんでそれを俺じゃなくてアーネに言うんだ。
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