大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

王と勇者

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室内の空気が凍りついたのは言うまでもない。
そりゃそうだ。王様に対して初っ端からタメ口とか、人生でやっちゃいけない事のかなり上位に食い込んでくる行動だろう。
実際俺も、言ってから「あ、やべっ」とか思っちゃったし。
学校長やアーネが凍りついたまま、何か言う前に国王が行動を起こした。
男の方が口を開き、一言喋った。
「跪け」
先程の俺のタメ口には何のツッコミも答えも無く、返って来たのはそんな命令。
とは言え、(恐らく)この国の王である男にそう言われた以上、身分的にはただの学生である俺が拒否する訳にもいかない。
渋々と言うか、特に抵抗する訳でもなく頭を下げ、右膝を立てて跪く。…これで合ってるよな?
アーネは俺より早く行動が終わっていたらしく、既に跪いている。早いな。
「!」
なんだ?言われた通り跪いたが、何故だか国王のいる方から息を呑むような気配がした。
顔を上げて確認したいが、ここで顔を上げたらまた何か言われそうだ。下げたままにしておこう。
「そこの白と銀の髪を持つ者よ。面をあげよ」
おもて…あぁ、顔を上げろって?一応命令だし、上げとくか。
そう思って顔を上げた途端、国王と目がバッチリ合う。
んっ?今なんかクラっと来たような──
『おい!何があった今代の!!』
あ、シャルか。最近はいない癖にどうした?
『どうした?はこっちのセリフだ!誰が今目の前にいや…が…るん?』
変な切れ方をしながら喋るシャル。やっぱ変じゃねお前?
『馬鹿お前馬鹿!!国王じゃねぇか!あぁクソ、なんでもっと早く俺を呼ばない!何か命令されたか!?』
え、あぁ、ついさっき跪けって…あと顔を上げろってのも。
『ああああああああああああああああ!!アウトじゃねぇか!!だからか!あぁもうアイツらとチンタラ話してる場合じゃなかったクソ!』
「そなた、名はなんと言うか」
男の方が俺にそう聞く。
つーか覚えてねぇのかよ。扉の向こうから一応名乗ったじゃねぇか。
…答えていいんだよな?
『あぁもう構わねぇよ。どうせ何やっても変わんねぇしな。あーあ、向こうにバレちまった』
…?、よく分からんが後で教えろ。
『もちろんだクソッタレ。あーあ、まーた俺のせいにされんだろうなー』
「レィア。レィア・シィル…です」
思い切りタメ口で言っちゃった後だし、もう振り切ってこのままの口調で行ってこうかと思いかけたが、流石に自重した。
「そうか。しかと覚えたぞ。そちらの赤い髪の女の名は?」
しばらくアーネが答えるのを待っていたが、アーネは答えず、さらに遅れて俺に聞かれているのだと気づいた。
「アーネ・ケイナズです」
「そうかそうか。ではシィル、ケイナズよ。一つそなた達に聞きたいことがある」
「はぁ。なんでしょうか?」
国王が俺に聞きたいこと?思い当たる節が全くないんだが。
「この者の顔に見覚えはあるか?」
学校長経由で渡された紙には、少女が描かれていた。
金の髪、青の瞳、年齢はシエルと大差ないであろう見た目。
見覚えがないわけがない。
「心当たりがあるな?」
「この少女がどうかしたんですか?」
学校長の眉毛がピクピクと動いているのを視界の端で確認しつつ、質問に質問で返す。
「………シィルよ、問うておるのは余の方だ。答えよ」
「それの答えを持っているのはお…私の方です。私の質問に答えてください」
王は眉をひそめ、次いで諦めたように鼻から息を抜いた。
「本当にこの者の言う通りだ。全く」
諦めたように首を横に振る王。ちらりと向けた視線を見るに、この者というのは学校長の事っぽいな。
「そこに写っておる者を見つけた時は、すぐさまこの者に伝えよ。そして引き渡せ。よいな?」
しかも結局理由は言わねぇのかよ。
さらには国王、どうやってかは知らんが突然消えたし。瞬間移動って奴か?
「…学校長、帰っていいか?」
『お前よく今の惨状引き起こしといて、そんなこと言えるよな』
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