大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

コンビとソロ2

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ヤバい。
『これ』がスタンダードという意味を身を以て知った。
いや、知りたくはあったが、身を以ては知りたくなかったが。
近くに寄れば、前衛ユーリアの剣撃。
遠くに引けば、後衛アーネの魔法。
どちらも、厄介なこと極まりない。
「ほらほらどうした!剣の振りが遅くなってきたぞ!」
試合が始まって、約十分。
これを長いと思うか短いと思うかは人それぞれなんだろうな。
俺は長いと思うし、コイツらは短いと思ってる。
正直、そろそろ体力の限界に差し掛かる。
「ふっ!」
右の黒剣を地面に刺し、それを軸に回し蹴りを繰り出し、ユーリアが防いだことによる一瞬の隙を…埋めるアーネの魔法の矢。
「ちぃ」
盾で防いで前を向くと、既にユーリアの姿はない。
…後ろに人影。盾で防いだ時、その瞬間は視界が遮られたから、その隙を狙われた?
ともかく、その人影の方に顔すら向けずに左の黒剣を繰り出す…が、空振り。
同時に俺の髪の毛によるセンサーからも反応が消えた。
「!?」
右手は地面に刺さり封じられ、左は今外した。
なら相手が狙うのは…胴体か!
咄嗟に地面に刺したままの剣を手放し、バク転気味にジャンプ。
頭のすぐ上を剣が振られる風切り音。
剣を避けたが、恐らく次は…。
「《フレイム・ボルテクス》!」
ほら来た!
声の方へ咄嗟に盾を向けると同時に衝撃。
踏ん張るものがない空中、そのまま吹き飛ばされ、フィールドのふちまで飛ばされる。
落ちる前に体勢を整え、着地する…と同時に目の前には剣を振りかぶったユーリアが。
「げ、マズっ」
「《クロス・ブレイド》!」
しかも追い討ちの戦技アーツまで。
右肩から斜めに一振り、さらに続けて右下から左上に切り上げるようにして振りぬく。
「ちょっ!まっ!」
左の一本のみで、さっきユーリアにやられたように滑らせて躱す。
「ちょこまかと!」
「避けなきゃ死ぬでしょ!」
いや、一応致命傷は大丈夫になってるはずだけどね。
膝蹴りを入れようと踏み込むと、一歩下がられ、そこから横薙の一撃を貰いそうになったので、黒剣を両手で持って鍔迫り合いへ。
細かい切り傷やら擦り傷が無数に身体のあちこちに刻まれ、俺の見た目はボロボロ。しかし、有効な一撃は未だに一発も入っていないため、まだまだ大丈夫。
ただ、体力がもたないのがなぁ…。
「っらァ!」
剣をその上から蹴り、一瞬だけ右手を俺の胸元へ。
首が一瞬引っ張られる感覚の後、ぴっ、という軽い音がすると共に、手元に重くは無いが軽くは無い、最近馴染み始めた重さが手に広がる。
白金の剣を下からユーリアの胴体を狙って振り、下がらせた所へ、アーネが撃った極太の炎の弾が飛んでくる。
銀盾で防ぎ、息を軽く吸い、呼吸を整える。
「さぁ、仕切り直しだ。こっからは俺の番だ」
黒剣の切っ先をユーリアに突きつけ、そう宣言すると、思いっきり振りかぶった。
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