大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

突破と悪魔

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勿論、そんなものは幻想、夢物語だ。
「シィルさん、マナックさん、ありがとうございました。お陰で予定より早く完成しました」
現に、いつも通り破られるし。
「いえ、自分は自分に出来ることをしたまでです」
けど、今回破られたのは違った。
「あのあの、少ししか手伝えなくてごめんなさいです!」
自分とクアイちゃんが手伝いを終え、みんなが門の前に集まり、出ていこうとしていた。
「レィア、約束、守ってるかい?」
「あぁ、もちろんだ」
そう言って、別れを告げた瞬間、だった。
凄まじい震動、そして。
カタカタカラカラ!
音が鳴り響いた。
それも、一昨日のヴォルテールくんの時の比じゃない激しさで。
「!?ナナキ!」
「わかってる!」
家に急いで戻り、すぐに出てくるナナキ。既に準備は終わっていた。
「先生、ちょっとナナキを手伝ってきます!」
「わかりました!が、今回は全員で行きます!フィーネさん、人形を村の防衛に使ってください!」
「そんなのに意味無いよ!蹴散らされてるんだから!」
明らかに牛頭馬頭ではない、というのはすぐわかった。
もっと強い、もっと強大なナニカが。
そんなやつが来たってことが、直感で分かった。
しかも、この間のように、みんなのことをナナキが『足でまとい』とは言わなかった。みんなのことを認めたのかそれとも。
それとも、どれだけ頼りなくとも、その力を借りたいのか。
自分も防具をつけ、準備は出来た。
ヴォルテールくんは仕方なく、家に置いてきた。
門の前に全員が集まり、ナナキから聞いた場所は東の東、まだ結界から離れていないらしい。
走って約二十分。人形の残骸が辺り一面にちらされた場の真ん中に『奴ら』はいた。数は二。
まだ感づかれていないようなので、離れて観察してみる。
一体は、身長は四メートル後半から五メートル程か。捻れた角の生えたヤギの頭と腰のあたりから足の先まで毛で覆われ、ヒヅメで出来た足、人の身体にコウモリの翼…所謂、悪魔デーモンだ。
もう一体は、身長は大体一メートルと半ば程か?もう少しあるかもしれない。
人型で、外套で身体を覆っているため、それ以外はわからない。
わからないが、こんなところにいる以上、ほぼ間違いなく魔獣だ。
「どうする?」
「奇襲でしょ。特にあの人型から先にね。ナタリ以外のみんなは待機。合図出したら、突っ込んできて」
「アタイかい!?大丈夫かねぇ?」
悪魔デーモンという種族は、人外の膂力と人智を超えた魔法を使うという厄介極まりない生き物だ。
おまけに頭も回る。色んな姿形をする悪魔デーモンがいるが、見た感じ、オールラウンダーなタイプだ。
だが、それよりも未知数な、人形の方を優先しよう、とナナキは言っている。
「自分が人型の方をやる。ナナキは悪魔デーモンの方を…」
「いや、逆だ。ボクが人型をやる。異論は認めない」
いくよ!とナタリさんに声をかけると、ナナキとナタリさんは駆け出した。
一気にこちらへ視線が突き刺さる。
仕方なく、自分も駆け出した。
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