大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

帰宅と夕飯

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よし、なんとか日が落ちる前には帰れたな。
村に戻ると、先生がゲッソリとした顔で出迎えてくれた。
「先生、どうしたんですか?」
「いや…エデルネスくんが…」
その名前を聞いただけでナナキが顔を顰める。どんだけ嫌いなんだよ。
「軟禁状態を嫌い、脱出しようと試みること六回。窓から玄関から二階から。果てには地下室から地面を掘って出ようともしました…。武器の類はすべて取り上げたのですが、壁の木を剥がして削り、即興でそこそこするどいナイフモドキを作った時は驚きましたよ…」
おかげで使い魔が何匹か死んじゃいました。と締めくくる先生。
…ヴォルテールくん、いくら軟禁状態が嫌だからって、何もそこまでしなくても…。
ナナキの人形を何体かつけた方が…逆効果か。
「まぁ、それも明日でおしまいですから!学校に連絡した結果、『一般人』をここから一番近い都市に送るという手間が増えましたが、それ以外は予定に変更はありません!さぁ、夕飯にしましょう!」
そりゃいいんだけど、材料はどうするんだ?こっちの班の食料っていったら、昼の鳥が鶏一羽分あるかどうかぐらい。四班の方を見ると、何故か赤ん坊ぐらいのサイズの芋虫。
…なんでそいつを持ってきた…。
「ん?なんだ、食べれそうな物がありませんねぇ。仕方ない、アレを食べますか」
そう言って何やら口笛を吹いた先生。
アレってなんだ?凄まじく嫌な予感しかしねぇんだが…。
そんなに間を置かずして、何が土煙が上がって、広場の奥の方から何かがこちらへ突っ込んでくる。
少しずつ近づいてくるにつれて、だんだん見えてくる。…あれは…小さな物が大きな物を引きずって来たのか?
そして先生の前で急停止。
なるほど、ネズミか。で、ネズミが引っ張ってきた物はというと。
「…昼間の馬頭?」
空気が凍った瞬間だった。特にナナキ。
「上半分は馬です!馬って知ってますか?意外と美味しいんですよー?」
とか言って捌こうとする先生。
いやいやいやイヤイヤ!下半分人間じゃん!
「…レィア、魔獣って食べれたの?」
「…らしいぜ。あんなのは流石に食いたくないが」
「見るからに不味そうだし、生理的に無理なんだけど…」
「お前、昨日魔獣の肉を喜んで頬張ってたじゃん。あれもだぞ」
「そうなの!?なら、残りはちょっと食べようかどうか迷うなぁ…」
ナナキとそう小声で話し合った後、アレを食うよりかはあの芋を食った方がいいと話が纏まった。
こっそりとその場から離れ、家の裏手に回り、芋を掘るつもりだ。
…ラウクムくん達、大丈夫かなぁ…?
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