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第12話 挨拶(1)
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「パパ、今度会って欲しい人がいるの……ううん自衛官なんだけど、今お付き合いしている人なの──」
婦人自衛官隊舎の自室で恵里菜は実家に電話をかけていた。
要件は、もちろん啓太のことである。
『それで、どんなやつなんだ?』
父親は不機嫌そうだ。
そりゃそうだろう。まだ22歳の娘を嫁に取られるための電話だ。
娘の父親なら不機嫌になってもおかしくはないだろう。
「とってもいい人よ。誰にでも親切でね、とても面倒見のいい人なの」
『そうか。お前が選んだ男なんだろうから一度は会ってやろうじゃないか』
「パパ、いつなら空いてる?」
『来週から出張だから、今週はどうだ?お前も早い方がいいんだろう?』
「わかった。ちょっと待ってね彼のスケジュール確認するから」
『おい、相手は自衛官と言ったじゃないか。自衛官なら土日休みだろうが』
「それがね、彼の部隊は夜勤のある部隊だから必ずしも土日が休みってわけじゃないの」
『そうなのか。自衛隊ってところも色々あるんだなあ。じゃあその男の今週とかで休みはいつなんだ』
「待ってね──あ、水曜日が夜勤明けだから木曜日と金曜日が休みになってるんだけど……」
『わかった。じゃあ木曜日の夕方6時くらいはどうだ。なんならお前もその彼も泊まっていけばいいだろう』
「いいの?」
『ちょっと待ってな──母さん、母さん……』
理解のある父親のようだ。
でも口調からしてかなり厳しそうな父親でもありそうである。
電話口で何やら話し声は聞こえるのだが、よくわからない──
そのまましばらくまっていると、
『もしもし──』
と父親の声がきこえてきて、
『泊まっていけるぞ。ただし別々の部屋にはなるけどな』
きっと娘が期待しているだろう答えをあえてぶち壊す感じだったのだが、同じ屋根の下で一晩過ごせるというだけで恵里菜にとっては感謝なのであった。
「わかった。じゃあ彼にそう伝えておくから、パパ、逃げないでね?」
恵里菜が意味深なことを言って父親との電話を終えた。
翌日、恵里菜は健康管理室の午前中の仕事をさっさと済ませて、昼の喫食らっぱが鳴る前に基地通信の通信局舎に行った。
外で暫く待っていると、局舎から明美が出てきた。
「下川三曺、どうしたんですか?」
恋敵になりかけてなる前に負けてしまった相手であり今は階級関係なしの友人でもある。
「あ、明美ちゃん、あ違った松永士長」
「今は明美でもいいですよ」
とくすくす笑って、「そういうわけにもいきませんね」とぺろっと舌を出した。
「鳴無三曺ですよね?」
と明美がきくと、恵里菜は「うん、そう──」と返答した。
そんな恵里菜をマジマジと明美がみる。
「どうしたの……も、もしかして顔に何かついてる?」
と恵里菜が慌てるので、明美は「目と鼻と口がついてる」と茶化した。ふたりが戯れついていると、局舎の中から隆太がひょっこり顔を出した。
「あ、誰か知らないけど美人がいる!」
と大声で──子供か、と──いやまあ、精神的には子供ななのだが──
隆太は局舎から出てきて恵里菜をマジマジとみる。
「え!え?えぇぇええええ?も、もしかして、下川三曺?」
と隆太が大袈裟にびっくりする。
まあそれもそのはずで、実は今日の恵里菜はめがねをつけていないのだ。啓太と付き合い出した当初、啓太が「メガネ外したらもっと可愛いのに」と言ったことがあって、それとつい先日、明美も「メガネ外したらもっと綺麗なのに勿体無い」と言ったことから、勇気を出してコンタクトにしてみたのだ。
すると、例の掲示板でも「すげえ美人がいる」という記事があっという間に広がり、稼業中にスマホを使う隊員が急増してスマホを取り上げられる事案の急増したとか──
──いや、マジで、真面目に仕事しようや名無し自衛官共……
そういうことであるから、隆太が驚くのも頷けるというものだ。
「しっかし、下川三曺が眼鏡外すと、爆発的な美人になりますね。こんな人を独り占めできるって鳴無三曺妬けるっすね」
「だから安川士長は手を出さないでください!」
「ちょ、明美ちゃん、それじゃ俺どこでも手を出してるみたいじゃん」
「出してるでしょ?あそこのいい女発見!とかいつもやってるじゃないですか!あれかなり不愉快なんですからね」
ちょっと隆太と明美の距離が縮まっているように見えた恵里菜は、
「もしかして2人──」
「付き合ってません!こんな人は嫌です。私は失恋したばかりだからまだ恋愛はいいの!」
と明美が言うと、
「え、明美ちゃん失恋したの?どこのだれだよ、こんないい子振ったの!」
と隆太が鼻息荒く言うので、
明美と恵里菜は顔を見合わせてくすくす笑うのだった。
隆太、お前は知らない方が良いこともあるのだよ──
走行していると、師団司令部から啓太が出てきた。
「あれ?恵里菜どうしたの?」
と普通に言ったので隆太が
「え!鳴無三曺、なぜわかったんですか?下川三曺今日眼鏡外したって言うのに!?」
とまた大袈裟に驚いて隆太が言った。
「え?なんでって、恵里菜は恵里菜だからねえ」
と普通に啓太が言うものだから、
「なんか納得いかない」
と隆太が不貞腐れている。
「はいはい、安川士長電話交換の時間ですから行きますよー」
と明美が隆太を電話交換室へ隆太を押していく。
それを見送った啓太は、
「眼鏡外したんだね、そっちの方が何倍もいいよ」
と啓太は恵里菜に感想を伝えると、恵里菜は「そうかなあ」とモジモジしながら時折顔を隠しながら恥ずかしがる。
そうした2人のラブラブ光線は通信局舎にも伝わり山崎曹長をはじめとする電話隊や基地通信の隊員が仕事どころではないくらいにニョロニョロになっていた。
「それで、昼前にこんなところに来るなんて珍しいじゃない?」
と啓太が尋ねると、
「うん、あのね、ほら、この間言ってた件なんだけど──」
「両親に会うっていう件?」
「うんそれ。啓太の予定も聞かずに決めてしまって申し訳ないんだけど、今日、このまま夜勤に入るんでしょ?」
「へ?うんそうだね──」
「それでね、今度の木曜日と金曜日、啓太お休みでしょ?だから──」
「わかった。今度の非番の日の予定を空けておけばいいんだね?」
「うん、そう。細かいことは食事の時に──」
「了解。じゃあちょっとこれ片付けてくるから5分ほど待っててもらってもいい?」
「うん、待ってるね」
恵里菜は局舎に入っていく啓太を見送った。
局舎に入った啓太は、待たせている恵里菜を思ってさっさと片付けなきゃと道具をそれぞれ片付けていこうとした時、
「鳴無ちゃん、彼女待ってんでしょ?ここはいいから行ってやりなって」
「え、でも書類が──」
「そんなのこっちでやっとくから──」
「でも──」
「こういう時くらい甘えろって。ほら行った行った」
工藤二曹に虫でも追い払われるようにして追い出された啓太は、工藤二曹に甘えることにして、局舎を出ると、5分も経ってないのに出てきた啓太に「早かったね」と言いながらも嬉しそうにしている。
「工藤二曹に見られてたみたいでさっさと行けって半ば追い出されてきた」
と啓太が言うと、恵里菜はお腹を抱えて笑った。
「基地通信の人って面白い人多いよね」
「まあ特にうちは基地通信の中では体育会系的なところもあるからね」
「そうなんだ。私初めて啓太を見た時はなんかこう技術者って感じがしたよ。なんでもできそうな、そんな感じがした」
「まあ、安居三曺のいる4通と比べたらそうかもしれないね。通信関係でも野外通信と基地通信では方向性が真逆というか野外は通信がメインだけど、基地通信は情報通信ってところだからね」
「そんなに違うの?」
「まったくというわけではないけど、かなり違うよ。でも基地通信は基地通信と野外通信
の両方ができないといけないから、器用な人が基地通信にはおおいから、恵里菜のように思う人は多いかもしれないね」
「ふーん、そうなんだね」
そんなことを話しながら隊員食堂に向かおうとした啓太を恵里菜が売店食堂の方へ引っ張っていった。
「きょうはこっちなの?」
「うん、大事な話があるから」
「そっか、了解──じゃあ何食べる?」
「んーじゃあ午後から会議とかあるからニンニク系はやめておくとして──カツ丼にする」
と、恵里菜はお金を入れるとカツ丼の券を買った。そして、当然のようにさらにお金を入れると、
「啓太はお昼からも工事入ってるって言ってたでしょ?だから、ちゃんと食べないといけないから、ステーキ定食!今日は私の奢りです!」
「いいの?」
「もちろん。だって私の都合でこっちきてもらったんだもん」
「そういうことなら、ごちになります」
「はい、しっかり食べて力つけてね♡」
最後の一言で、後ろに並んでる男子隊員集団の視線が殺気を帯びて啓太を睨みつけていたのだが、そんなの気付かないフリをしてカウンターに食券を出すと、先に席を取りに行っていた恵里菜がいつもの奥のテーブルの前で手を振っていた。
「先輩、アレやっちゃってもいいですか?」
「やるんなら一発で仕留めろよ」
「了解」
3人組の内2人が啓太に足を引っ掛けようとしたんだけど、何事もなかったかのように啓太はその足を超えて行ってしまっった。
「先輩……作戦、失敗です──」
「お前ら2人で足出してんのに何やってんだよ」
「すいません──」
「お前ら、後で腕立て伏せ100回な!」
「ひぇえええ」
「返事は!?」
「りょ、了解ぃぃぃ──」
腕立て伏せを命じられた二人は涙を流しながら返答する。
なんとも……まあ、頑張ってくれたまえ足出しさん。
さらに、足を出していた隊員を恵里菜はこれでもかという殺気を込めて見ていた。
すると、足を出してきた3人組がそそくさと売店食堂から立ち去り、結果石がないと困っていた婦人自衛官達にその席が当たったのだった。
注文したものの番号が呼ばれて取りに行こうとしたが、先に売店のおばちゃんが持ってきてくれた。
「あんたら、何か大事な話があるんだろ?雰囲気がそう言ってるよ。さあ、時間までゆっくり話していきな」
「ありがとうございます」と啓太。
「ありがとうおばちゃん」と恵里菜。
ふたり分の料理を持ってきてくれたおばちゃんを見送りながら、
「恵里菜、あの人知ってんの?」
「まあ、業務隊にいるとね。色々と」
とぺろっと舌を出す。
「そっかあ、業務隊も俺らからしたら謎な部隊だからなあ」
「そうかもしれないね。実は私達営内者にはなくてはならない部隊なんだけどね」
「そうなの」
と話しながら届けられた料理を見てみると、本来肉は一枚しか乗っていないはずのステーキ定食なのに、肉が2枚乗っていた。しかも「ちゃんと力つけて彼女大事にしてやりなさい」というたぶんおばちゃんの字だろうと思われるメッセージの書かれた付箋紙がお盆に貼り付けてあった。
啓太はカウンター内で料理の配置をしているおばちゃんに目を向けると、それに気付いたおばちゃんがサムズアップしてニカッと笑った。
「得したね」
と恵里菜が言ったのだが、なんか変だなと思い、啓太は恵里菜をじーっとみると、恵里菜はヒョイと目を逸らせて右上に視線をやる。
「恵里菜が右上に視線をやる時って何かやらかした時か、何か策略を図った時なんだよなあ」
と啓太が言うと、恵里菜の体がビクッとなった。
「ほら、吐け」
という啓太に負けた恵里菜は、
「なんでそう言うところ気がつくのかなあ──」
と言いならが姿勢を正すと、
「今日の話に関係があるんだ」
と本題を仄めかした。
「でも先に食べちゃおうよ。時間もないし」
「それもそうだな──あ、恵里菜が先に食べ終わったら話始めてもいいからね」
「うん、わかった」
と2人はカツ丼と一枚多いステーキ定食を食べ始めた。
そして、やっぱりな感じだったが、流石に昼からステーキ2枚はちょっと多すぎたようで、お腹をさする啓太であった。
結局、あまり変わらない時間で食べ終わった2人は、本題に移った。
「あのね、まずはスケジュール勝手に決めちゃったことごめんね」
「まあそれはいいよ。俺の休みの日なんでしょ?」
「うん、そう。私も同じに年次取ったから」
と、恵里菜は一口水を飲んて話を続けた、
「あのね、啓太が木曜日と金曜日が休みだったからね、パパにその日にって無理言って時間作ってもらったんだ。それで、その日はうちに泊まってもらう予定」
「え?そこまで話進んでんの?」
「うん、パパに会って欲しい人がいるって言ったら、最初は渋ってたんだけど、お願い続けてたらその日になったの。パパ出張多いから来週から出張って言うから時間そこしか取れなかったの」
「そっか。それはお父さんにお礼言わなきゃね」
「勝手に決めてごめんなさい」
と恵里菜が頭を下げる。
「それはこっちのスケジュールに合わせてくれたんだから、何も恵里菜は悪くないよ。
だから気にするのは辞め。ね」
と、その頭を優しく撫でながら啓太が言うと、恵里菜は「ありがとう」と言って頭をあげる。
「それでね、時間なんだけど、実家に18時だから、こっちを遅くても15時にでれば充分間に合うんだけど──」
「実家どこだっけ?熊本だよ」
「そっか。でも何かあって遅れるわけにはいかないから14時にこっちを出よう」
「そんなに急がなくてもいいんだけど……うんわかった――ねえ、怒ってないの、勝手に決めたこと?」
と恵里菜が聞いてくるので、啓太は優しく笑って、
「そんなことで怒るわけないでしょ。むしろよくスケジューリングしてくれたって感謝してるよ」
と、啓太は手を伸ばしてもう一度恵里菜の頭を撫でた。
「ありがとう」
「うん──」
としばらく恵里菜の頭を撫でていると、周りの数カ所から咳払いが聞こえてきた。
どうやら2人の甘ーい空気に当てられた人たちなんだろう。
と、そこで大事なことを思い出した啓太は、時計を見た。また昼休憩の終了まで25分ある。
「恵里菜、今度はこっちのように付き合ってもらえる?」
と突然言い出した啓太に思考が追いついていっていない恵里菜は
「え?う、うんわかった」
と啓太と恵里菜は手を繋いで足早に売店を出て、基地通信隊舎へ向かった。
「ねえ、どうしたの?」
と恵里菜が聞いてくるので、
「うん、俺の身内にちょっとあって欲しいんだよ」
という啓太に恵里菜は耳を疑った。
「啓太の身内って?」
「うん、それは着いてからのお楽しみかな」
と啓太は恵里菜が痛くないと思える速度で基地通信隊舎へ向かう。
基地通信の通信局舎についた啓太は半長靴を脱いで自分のスリッパに履き替え、恵里菜には来客用のスリッパを出して履き替えてもらった。
そして局舎とは別棟の基地通信隊舎に入ると、中隊長室の前で止まった。
「啓太、ここ中隊長室って──」
「うん、驚かないでね、うちの中隊長は俺の叔父さんなんだよ」
「え、そうなの?」
「そうなんだよ、じゃ行くよ」
「わ、わかった──」
啓太はノックして、中隊長伊原三佐の返事を受けて、
「鳴無三曺他、来客一名入ります」
そう告げて、伊原三佐の入室許可を受けてドアを開けた。
「おお、どうしたんだい鳴無三曺」
「はい、中隊長にお会いいただきたい人がおりまして」
と言う啓太の言葉で伊原三佐はその相手がどう言う人物なのかを理解した。
「中に入りなさい」
そう言って伊原三佐は啓太と恵里菜を招き入れた。そして、事務所に繋がるドアを開けると、事務所の隊員にコーヒーを3つ依頼した。
そして、業務隊隊長へ恵里菜が遅れることを連絡して承諾を得た。どうやら業務隊隊長も意味を理解してくれたようだ。
さらに隣の幹部室に続くドアを開けて電話隊隊長の武田三尉に、啓太が課業に遅れることを伝えた。
伊原三佐は慶太と恵里菜をソファに誘い、2人が座ったのを確認すると、自分も対面のソファに腰を下ろした。
しばらくの沈黙が過ぎて、事務所勤務の婦人自衛官が3人分のコーヒー持ってきて、それぞれの前に置いて中隊長室を出て行ったところで、伊原三佐が沈黙を破った。
「下川三曺、話は噂からも聞いているし、私自身も見て知っている。これは304基地通信中隊中隊長という立場ではなく、君の隣にいる鳴無慶太の叔父として、啓太君を選んでくれた事を心より御礼申し上げる」
と、伊原三佐は中隊長としてではなく啓太の叔父として、恵里菜に感謝の意を述べた。
先程啓太から聞いてはいたが、やはり実際に伊原三佐からいわれるとその強い驚きを感じる恵里菜だった。
婦人自衛官隊舎の自室で恵里菜は実家に電話をかけていた。
要件は、もちろん啓太のことである。
『それで、どんなやつなんだ?』
父親は不機嫌そうだ。
そりゃそうだろう。まだ22歳の娘を嫁に取られるための電話だ。
娘の父親なら不機嫌になってもおかしくはないだろう。
「とってもいい人よ。誰にでも親切でね、とても面倒見のいい人なの」
『そうか。お前が選んだ男なんだろうから一度は会ってやろうじゃないか』
「パパ、いつなら空いてる?」
『来週から出張だから、今週はどうだ?お前も早い方がいいんだろう?』
「わかった。ちょっと待ってね彼のスケジュール確認するから」
『おい、相手は自衛官と言ったじゃないか。自衛官なら土日休みだろうが』
「それがね、彼の部隊は夜勤のある部隊だから必ずしも土日が休みってわけじゃないの」
『そうなのか。自衛隊ってところも色々あるんだなあ。じゃあその男の今週とかで休みはいつなんだ』
「待ってね──あ、水曜日が夜勤明けだから木曜日と金曜日が休みになってるんだけど……」
『わかった。じゃあ木曜日の夕方6時くらいはどうだ。なんならお前もその彼も泊まっていけばいいだろう』
「いいの?」
『ちょっと待ってな──母さん、母さん……』
理解のある父親のようだ。
でも口調からしてかなり厳しそうな父親でもありそうである。
電話口で何やら話し声は聞こえるのだが、よくわからない──
そのまましばらくまっていると、
『もしもし──』
と父親の声がきこえてきて、
『泊まっていけるぞ。ただし別々の部屋にはなるけどな』
きっと娘が期待しているだろう答えをあえてぶち壊す感じだったのだが、同じ屋根の下で一晩過ごせるというだけで恵里菜にとっては感謝なのであった。
「わかった。じゃあ彼にそう伝えておくから、パパ、逃げないでね?」
恵里菜が意味深なことを言って父親との電話を終えた。
翌日、恵里菜は健康管理室の午前中の仕事をさっさと済ませて、昼の喫食らっぱが鳴る前に基地通信の通信局舎に行った。
外で暫く待っていると、局舎から明美が出てきた。
「下川三曺、どうしたんですか?」
恋敵になりかけてなる前に負けてしまった相手であり今は階級関係なしの友人でもある。
「あ、明美ちゃん、あ違った松永士長」
「今は明美でもいいですよ」
とくすくす笑って、「そういうわけにもいきませんね」とぺろっと舌を出した。
「鳴無三曺ですよね?」
と明美がきくと、恵里菜は「うん、そう──」と返答した。
そんな恵里菜をマジマジと明美がみる。
「どうしたの……も、もしかして顔に何かついてる?」
と恵里菜が慌てるので、明美は「目と鼻と口がついてる」と茶化した。ふたりが戯れついていると、局舎の中から隆太がひょっこり顔を出した。
「あ、誰か知らないけど美人がいる!」
と大声で──子供か、と──いやまあ、精神的には子供ななのだが──
隆太は局舎から出てきて恵里菜をマジマジとみる。
「え!え?えぇぇええええ?も、もしかして、下川三曺?」
と隆太が大袈裟にびっくりする。
まあそれもそのはずで、実は今日の恵里菜はめがねをつけていないのだ。啓太と付き合い出した当初、啓太が「メガネ外したらもっと可愛いのに」と言ったことがあって、それとつい先日、明美も「メガネ外したらもっと綺麗なのに勿体無い」と言ったことから、勇気を出してコンタクトにしてみたのだ。
すると、例の掲示板でも「すげえ美人がいる」という記事があっという間に広がり、稼業中にスマホを使う隊員が急増してスマホを取り上げられる事案の急増したとか──
──いや、マジで、真面目に仕事しようや名無し自衛官共……
そういうことであるから、隆太が驚くのも頷けるというものだ。
「しっかし、下川三曺が眼鏡外すと、爆発的な美人になりますね。こんな人を独り占めできるって鳴無三曺妬けるっすね」
「だから安川士長は手を出さないでください!」
「ちょ、明美ちゃん、それじゃ俺どこでも手を出してるみたいじゃん」
「出してるでしょ?あそこのいい女発見!とかいつもやってるじゃないですか!あれかなり不愉快なんですからね」
ちょっと隆太と明美の距離が縮まっているように見えた恵里菜は、
「もしかして2人──」
「付き合ってません!こんな人は嫌です。私は失恋したばかりだからまだ恋愛はいいの!」
と明美が言うと、
「え、明美ちゃん失恋したの?どこのだれだよ、こんないい子振ったの!」
と隆太が鼻息荒く言うので、
明美と恵里菜は顔を見合わせてくすくす笑うのだった。
隆太、お前は知らない方が良いこともあるのだよ──
走行していると、師団司令部から啓太が出てきた。
「あれ?恵里菜どうしたの?」
と普通に言ったので隆太が
「え!鳴無三曺、なぜわかったんですか?下川三曺今日眼鏡外したって言うのに!?」
とまた大袈裟に驚いて隆太が言った。
「え?なんでって、恵里菜は恵里菜だからねえ」
と普通に啓太が言うものだから、
「なんか納得いかない」
と隆太が不貞腐れている。
「はいはい、安川士長電話交換の時間ですから行きますよー」
と明美が隆太を電話交換室へ隆太を押していく。
それを見送った啓太は、
「眼鏡外したんだね、そっちの方が何倍もいいよ」
と啓太は恵里菜に感想を伝えると、恵里菜は「そうかなあ」とモジモジしながら時折顔を隠しながら恥ずかしがる。
そうした2人のラブラブ光線は通信局舎にも伝わり山崎曹長をはじめとする電話隊や基地通信の隊員が仕事どころではないくらいにニョロニョロになっていた。
「それで、昼前にこんなところに来るなんて珍しいじゃない?」
と啓太が尋ねると、
「うん、あのね、ほら、この間言ってた件なんだけど──」
「両親に会うっていう件?」
「うんそれ。啓太の予定も聞かずに決めてしまって申し訳ないんだけど、今日、このまま夜勤に入るんでしょ?」
「へ?うんそうだね──」
「それでね、今度の木曜日と金曜日、啓太お休みでしょ?だから──」
「わかった。今度の非番の日の予定を空けておけばいいんだね?」
「うん、そう。細かいことは食事の時に──」
「了解。じゃあちょっとこれ片付けてくるから5分ほど待っててもらってもいい?」
「うん、待ってるね」
恵里菜は局舎に入っていく啓太を見送った。
局舎に入った啓太は、待たせている恵里菜を思ってさっさと片付けなきゃと道具をそれぞれ片付けていこうとした時、
「鳴無ちゃん、彼女待ってんでしょ?ここはいいから行ってやりなって」
「え、でも書類が──」
「そんなのこっちでやっとくから──」
「でも──」
「こういう時くらい甘えろって。ほら行った行った」
工藤二曹に虫でも追い払われるようにして追い出された啓太は、工藤二曹に甘えることにして、局舎を出ると、5分も経ってないのに出てきた啓太に「早かったね」と言いながらも嬉しそうにしている。
「工藤二曹に見られてたみたいでさっさと行けって半ば追い出されてきた」
と啓太が言うと、恵里菜はお腹を抱えて笑った。
「基地通信の人って面白い人多いよね」
「まあ特にうちは基地通信の中では体育会系的なところもあるからね」
「そうなんだ。私初めて啓太を見た時はなんかこう技術者って感じがしたよ。なんでもできそうな、そんな感じがした」
「まあ、安居三曺のいる4通と比べたらそうかもしれないね。通信関係でも野外通信と基地通信では方向性が真逆というか野外は通信がメインだけど、基地通信は情報通信ってところだからね」
「そんなに違うの?」
「まったくというわけではないけど、かなり違うよ。でも基地通信は基地通信と野外通信
の両方ができないといけないから、器用な人が基地通信にはおおいから、恵里菜のように思う人は多いかもしれないね」
「ふーん、そうなんだね」
そんなことを話しながら隊員食堂に向かおうとした啓太を恵里菜が売店食堂の方へ引っ張っていった。
「きょうはこっちなの?」
「うん、大事な話があるから」
「そっか、了解──じゃあ何食べる?」
「んーじゃあ午後から会議とかあるからニンニク系はやめておくとして──カツ丼にする」
と、恵里菜はお金を入れるとカツ丼の券を買った。そして、当然のようにさらにお金を入れると、
「啓太はお昼からも工事入ってるって言ってたでしょ?だから、ちゃんと食べないといけないから、ステーキ定食!今日は私の奢りです!」
「いいの?」
「もちろん。だって私の都合でこっちきてもらったんだもん」
「そういうことなら、ごちになります」
「はい、しっかり食べて力つけてね♡」
最後の一言で、後ろに並んでる男子隊員集団の視線が殺気を帯びて啓太を睨みつけていたのだが、そんなの気付かないフリをしてカウンターに食券を出すと、先に席を取りに行っていた恵里菜がいつもの奥のテーブルの前で手を振っていた。
「先輩、アレやっちゃってもいいですか?」
「やるんなら一発で仕留めろよ」
「了解」
3人組の内2人が啓太に足を引っ掛けようとしたんだけど、何事もなかったかのように啓太はその足を超えて行ってしまっった。
「先輩……作戦、失敗です──」
「お前ら2人で足出してんのに何やってんだよ」
「すいません──」
「お前ら、後で腕立て伏せ100回な!」
「ひぇえええ」
「返事は!?」
「りょ、了解ぃぃぃ──」
腕立て伏せを命じられた二人は涙を流しながら返答する。
なんとも……まあ、頑張ってくれたまえ足出しさん。
さらに、足を出していた隊員を恵里菜はこれでもかという殺気を込めて見ていた。
すると、足を出してきた3人組がそそくさと売店食堂から立ち去り、結果石がないと困っていた婦人自衛官達にその席が当たったのだった。
注文したものの番号が呼ばれて取りに行こうとしたが、先に売店のおばちゃんが持ってきてくれた。
「あんたら、何か大事な話があるんだろ?雰囲気がそう言ってるよ。さあ、時間までゆっくり話していきな」
「ありがとうございます」と啓太。
「ありがとうおばちゃん」と恵里菜。
ふたり分の料理を持ってきてくれたおばちゃんを見送りながら、
「恵里菜、あの人知ってんの?」
「まあ、業務隊にいるとね。色々と」
とぺろっと舌を出す。
「そっかあ、業務隊も俺らからしたら謎な部隊だからなあ」
「そうかもしれないね。実は私達営内者にはなくてはならない部隊なんだけどね」
「そうなの」
と話しながら届けられた料理を見てみると、本来肉は一枚しか乗っていないはずのステーキ定食なのに、肉が2枚乗っていた。しかも「ちゃんと力つけて彼女大事にしてやりなさい」というたぶんおばちゃんの字だろうと思われるメッセージの書かれた付箋紙がお盆に貼り付けてあった。
啓太はカウンター内で料理の配置をしているおばちゃんに目を向けると、それに気付いたおばちゃんがサムズアップしてニカッと笑った。
「得したね」
と恵里菜が言ったのだが、なんか変だなと思い、啓太は恵里菜をじーっとみると、恵里菜はヒョイと目を逸らせて右上に視線をやる。
「恵里菜が右上に視線をやる時って何かやらかした時か、何か策略を図った時なんだよなあ」
と啓太が言うと、恵里菜の体がビクッとなった。
「ほら、吐け」
という啓太に負けた恵里菜は、
「なんでそう言うところ気がつくのかなあ──」
と言いならが姿勢を正すと、
「今日の話に関係があるんだ」
と本題を仄めかした。
「でも先に食べちゃおうよ。時間もないし」
「それもそうだな──あ、恵里菜が先に食べ終わったら話始めてもいいからね」
「うん、わかった」
と2人はカツ丼と一枚多いステーキ定食を食べ始めた。
そして、やっぱりな感じだったが、流石に昼からステーキ2枚はちょっと多すぎたようで、お腹をさする啓太であった。
結局、あまり変わらない時間で食べ終わった2人は、本題に移った。
「あのね、まずはスケジュール勝手に決めちゃったことごめんね」
「まあそれはいいよ。俺の休みの日なんでしょ?」
「うん、そう。私も同じに年次取ったから」
と、恵里菜は一口水を飲んて話を続けた、
「あのね、啓太が木曜日と金曜日が休みだったからね、パパにその日にって無理言って時間作ってもらったんだ。それで、その日はうちに泊まってもらう予定」
「え?そこまで話進んでんの?」
「うん、パパに会って欲しい人がいるって言ったら、最初は渋ってたんだけど、お願い続けてたらその日になったの。パパ出張多いから来週から出張って言うから時間そこしか取れなかったの」
「そっか。それはお父さんにお礼言わなきゃね」
「勝手に決めてごめんなさい」
と恵里菜が頭を下げる。
「それはこっちのスケジュールに合わせてくれたんだから、何も恵里菜は悪くないよ。
だから気にするのは辞め。ね」
と、その頭を優しく撫でながら啓太が言うと、恵里菜は「ありがとう」と言って頭をあげる。
「それでね、時間なんだけど、実家に18時だから、こっちを遅くても15時にでれば充分間に合うんだけど──」
「実家どこだっけ?熊本だよ」
「そっか。でも何かあって遅れるわけにはいかないから14時にこっちを出よう」
「そんなに急がなくてもいいんだけど……うんわかった――ねえ、怒ってないの、勝手に決めたこと?」
と恵里菜が聞いてくるので、啓太は優しく笑って、
「そんなことで怒るわけないでしょ。むしろよくスケジューリングしてくれたって感謝してるよ」
と、啓太は手を伸ばしてもう一度恵里菜の頭を撫でた。
「ありがとう」
「うん──」
としばらく恵里菜の頭を撫でていると、周りの数カ所から咳払いが聞こえてきた。
どうやら2人の甘ーい空気に当てられた人たちなんだろう。
と、そこで大事なことを思い出した啓太は、時計を見た。また昼休憩の終了まで25分ある。
「恵里菜、今度はこっちのように付き合ってもらえる?」
と突然言い出した啓太に思考が追いついていっていない恵里菜は
「え?う、うんわかった」
と啓太と恵里菜は手を繋いで足早に売店を出て、基地通信隊舎へ向かった。
「ねえ、どうしたの?」
と恵里菜が聞いてくるので、
「うん、俺の身内にちょっとあって欲しいんだよ」
という啓太に恵里菜は耳を疑った。
「啓太の身内って?」
「うん、それは着いてからのお楽しみかな」
と啓太は恵里菜が痛くないと思える速度で基地通信隊舎へ向かう。
基地通信の通信局舎についた啓太は半長靴を脱いで自分のスリッパに履き替え、恵里菜には来客用のスリッパを出して履き替えてもらった。
そして局舎とは別棟の基地通信隊舎に入ると、中隊長室の前で止まった。
「啓太、ここ中隊長室って──」
「うん、驚かないでね、うちの中隊長は俺の叔父さんなんだよ」
「え、そうなの?」
「そうなんだよ、じゃ行くよ」
「わ、わかった──」
啓太はノックして、中隊長伊原三佐の返事を受けて、
「鳴無三曺他、来客一名入ります」
そう告げて、伊原三佐の入室許可を受けてドアを開けた。
「おお、どうしたんだい鳴無三曺」
「はい、中隊長にお会いいただきたい人がおりまして」
と言う啓太の言葉で伊原三佐はその相手がどう言う人物なのかを理解した。
「中に入りなさい」
そう言って伊原三佐は啓太と恵里菜を招き入れた。そして、事務所に繋がるドアを開けると、事務所の隊員にコーヒーを3つ依頼した。
そして、業務隊隊長へ恵里菜が遅れることを連絡して承諾を得た。どうやら業務隊隊長も意味を理解してくれたようだ。
さらに隣の幹部室に続くドアを開けて電話隊隊長の武田三尉に、啓太が課業に遅れることを伝えた。
伊原三佐は慶太と恵里菜をソファに誘い、2人が座ったのを確認すると、自分も対面のソファに腰を下ろした。
しばらくの沈黙が過ぎて、事務所勤務の婦人自衛官が3人分のコーヒー持ってきて、それぞれの前に置いて中隊長室を出て行ったところで、伊原三佐が沈黙を破った。
「下川三曺、話は噂からも聞いているし、私自身も見て知っている。これは304基地通信中隊中隊長という立場ではなく、君の隣にいる鳴無慶太の叔父として、啓太君を選んでくれた事を心より御礼申し上げる」
と、伊原三佐は中隊長としてではなく啓太の叔父として、恵里菜に感謝の意を述べた。
先程啓太から聞いてはいたが、やはり実際に伊原三佐からいわれるとその強い驚きを感じる恵里菜だった。
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