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第5話 明美の苦悩と想い
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「了解!じゃあまた仕事でね」
「朝からすみませんでした――失礼します」
明美は電話を切った。
相手は啓太――。
啓太と恵里菜のデートをプランニングした明美は、啓太が忘れていないかどうかの確認のために啓太に電話をしたのだった。
明美は啓太と恵里菜の恋愛を応援していた。
事は昨年、明美と隆太が直長の啓太と一緒に恵里菜のいる業務隊健康管理室の電話設置工事に行った日。その時明美は恵里菜を知った。そりゃ同じ婦人自衛官隊舎で顔を見かけたことはあったけれどもそれが恵里菜だということはわからなかったのだ。
それから恵里菜と会った時には度々恵里菜から啓太のことを聞かれるようになった。啓太はそのルックスから婦人自衛官の間でもかなり人気があった。また電話交換をするときの啓太の声も男子隊員であるにも関わらず結構評判が良かった。それは啓太の活舌の良さと電話対応時の甘い声がその理由だった。
そして、中にはどこからか啓太の勤務日を仕入れて土日祝日の啓太の勤務日に敢えて外線で駐屯地にかけて啓太に対応してもらうなんていう変態までいたほどだった。
明美は、恵里菜もそんな上辺だけの啓太ファンなのだろうと思って対応していた。というか、啓太があれだけファンがいてなぜ彼女ができないのか、それは明美がこうして悪い虫を付けないようにあしらっていたのと、啓太の独特の趣味をさも気持ち悪そうに話してファンの座から引きずり下ろしていたからである。つまり、啓太の趣味を聞いてファンの座から退く婦人自衛官がいるというのは、明美がそのように仕向けていたから起きていることなのであった。
なぜ明美がそうまでしていたのか、それは明美自身が啓太に対して恋愛感情を抱いていたからだった。最初は他の婦人自衛官と同じく啓太の趣味に対してネガティブに思っていたのだが、気が付くと啓太のことばかりを考えるようになっていた。そして仕事でちょっとしたミスを犯しそうになっていた時、啓太がそのミスを補い、なぜそうなったのかについて啓太が優しく諭してくれた。その時、自分自身の啓太への想いに気付いたのだった。
でも恋人になれば勤務直を変えられる恐れがあるし、同じ部隊である以上結婚も許されない。それは自衛隊倫理にも規定されていることであるからだ。
だからこそ明美は啓太への想いを諦めようとした。けれど諦めようとすればするほどに明美自身の想いは逆に強くなった。
そんなとき、少しずつ話すようになった恵里菜から恵里菜の啓太への想いを聞くことになる。明美は他の婦人自衛官達と同様に啓太の趣味も話してみた。けれども恵里菜の反応は他者とは一味も二味も違った。
そして、明美は啓太から恵里菜のことを聞かれるようになった。それは啓太の恵里菜に対する想いだった。それを聞いたとき、明美は「やっと解放される」と思った。楽になれると思った。そう思い込むことにした。
そして、明美は啓太と恵里菜の間を取り持つことにした。はじめは「うまくいくわけがない」そう思っていた。恵里菜に啓太の何がわかるのか、そんな気持ちもあった。
啓太が恵里菜に告白して二人が恋人となって以降、二人は駐屯地内でのデートを繰り返すようになった。二人が外でデートをするのならば諦めもついたかもしれなかった。でも二人は駐屯地内でばかりデートを繰り返し、しかもそのラブラブな空気を当ててくるのもあって、諦めようにも目がそっちに行ってしまってなかなか諦められなかった。
なので、明美は言い寄ってきていた先輩陸士長の隆太と一度デートをした。その日に隆太に迫られるままに勢いにまかせてキスまでした。けれども啓太の想いはどこにも晴れず、好きでもない隆太とキスをした自分を責めた。
でも誰にも言えなかった。
そんなときだった。交換室での仕事を終えて通信局舎に戻ろうとしたとき、中隊長の伊原良一三等陸佐に呼び止められた。内容は、啓太と恵里菜の件だった。二人の仲の良さと自衛隊倫理規定に則った二人の健全な交際への好感と、でも外での交際の手助けをしてほしい旨の話。明美は伊原三佐の意見に賛同した。賛同した理由としては電話隊隊長の武田和夫三等陸尉も中でのデートではなく外で羽を伸ばした交際もしてほしいという啓太へのある種の親心みたいなものも聞いていたからでもある。
それから、雰囲気の良い場所を旧友達に聞いたり、実際に行ったりしてみてよい場所を探した。
そこで見つけたのが啓太と恵里菜がお食事デートをした「ワンディッシュ」というレストランだった。ただ、ドが付くほどのケチな啓太を連れ出すためには、何かその切欠を作らないとだめだろうと考え、休日で外出ができる日には旧友達と、時には一人でそのレストランに通い、そして「半額チケット」をゲットした。
――これだ!
そして先日の夜勤明けの時、わざとみんなのいる前で「半額チケット」を啓太に渡し、恵里菜を連れ出すように促したのである。
ただ、そんなので啓太が外に出るか心配だった明美は、強制的に出ていけるようにレストランにコース料理を指定し会計も事前にすませての予約をすることを考えた。
そんな明美の中に――
『そうだ、それで下川三曹に呆れさせて鳴無三曹と下川三曹を引き離してしまえ。そうすれば鳴無三曹はフリーになる。そこをいただくんだ』
という黒い明美と、
『そこまでしてもし鳴無三曹の男性としてのプライドを傷つけてしまったらどうするの?予約するにしても鳴無三曹の都合も考えてあげないと――』
という白い明美とが心の中で戦い、結果――
『そんなのこっちが予約してあげるんだから、それであの二人が別れたらラッキーで良いじゃないか?』
という超ブラックな明美が黒い明美と白い明美の両方を倒して、結果予約と事前支払いを行うことにしたのだった。
そしてその日の午後、一応外出申請も出していて許可も出ている明美だったが、外出する気になれなくてその日の外出は取り消しにして、気晴らしに駐屯地外周を走ることにした。まあもうすぐ陸曹昇進審査もあるし、もし陸曹昇進が決まれば初級陸曹課程で入校しなきゃいけなくなる。そのためにも体力をつけておくことは必然でもあるので、まあ一石二鳥かと――。
外周を3周、約5キロ強を走って、シャワーで汗を流し、筋肉の手入れもしながら過ごし、久しぶりの土曜日の隊員食堂で食事も済ませて同室者は二人とも勤務ってこともあってゴロゴロ過ごしていたとき、婦人自衛官隊舎当直から玄関まで来るようにと呼び出されて、何だろうと思いながらも一応ジャー戦に着替えて隊舎玄関まで出てみると、そこには恵里菜と啓太がいた。
二人から会計と予約のお礼をされて、
「松永士長にお土産買ってきたの」
と小袋を啓太から受け取った。その袋は結構高め名ブランドの袋だった。
「い、いえこんなことしてもらうためにしたわけじゃ――」
と、言いかけたところで啓太に制止されて、明美の気持ちが嬉しかったからのお土産だからと押し込まれてしまった。
そして、恵里菜が「開けてみて」というので袋からケースを取り出して開けてみると、そこには四葉のクローバーのマークがあしらわれた金色に輝くネックレスだった。そのネックレスは明美が三等陸曹へ昇進した時に買おうと思っていたものと偶然にも同じものだった。
「似合うと思うから」
と恵里菜がネックレスを付けてくれて、スマートフォンのカメラ機能で首にかかるネックレスを見せてくれる。首元に輝く金色の四葉のクローバー。なんかうれしさと悔しさと悲しさと色んな感情が一緒になってあふれ出してきた。
気が付けば泣いていた明美。
その明美を抱きしめた恵里菜は啓太に大丈夫だからと啓太を帰し、恵里菜は明美を促して明美の部屋へ。
明美の部屋で、明美のベッドに二人腰かけてしばらく恵里菜に抱き着いて泣いていた明美。
明美が落ち着くと、
「松永士長、本当は啓太のこと好きなんでしょ?」
と恵里菜がド直球で聞いてくる。しかもそれはド真ん中のストライク。しかも突然投げられたその球を打ち返すことすらできなかった明美。
そして――
「松永士長の気持ちは気付いてたんだけど、それでも譲れなくて私は啓太と付き合ってる。それがもし許せないというなら、私から啓太を力ずくで取ってみて」
と明美の瞳をまっすぐに見てそう言ってくる恵里菜。
その恵里菜に、明美は白旗を上げた。
――そんなの、絶対に無理だよ。
すると、恵里菜はニヤリと不敵な笑いを浮かべて、
「松永士長は啓太をいつも一緒に仕事してるでしょ?私から啓太を奪うことなんてすぐにできるんじゃないの?」
と挑発的な言葉を明美に投げる恵里菜。
その恵里菜の目をまっすぐに見つめた明美は、
「奪えるものならもうとっくに奪ってます。でもそれはできないし、もしそんなことをして鳴無三曹が苦しむことになるのなら、それは私のやりたいことではないんです。鳴無三曹のことは好きです。その気持ちはきっと下川三曹にも負けないと思います。
でも、私が望むのは鳴無三曹が幸せになることです。そして、それはきっと私にはできません。
というか下川三曹も渡す気なんて全然ないくせにそんなこと言わないでください」
と、最後には泣き笑いして恵里菜にいう明美。
「ゴメンね」
と明美を抱きしめてそういう恵里菜。
しばらくして恵里菜を引きはがした明美は、恵里菜を真剣な目で見ると、
「でも、もし鳴無三曹を悲しませるようなことを下川三曹がした時には、私は絶対に許しませんから。これだけは覚えておいてください」
という明美が言うと、恵里菜はその場に起立して明美に対して10度の敬礼をした。
「もちろん、啓太を悲しませたりなんてことはしないよ」
と笑顔でいう恵里菜。
その後、二人は一緒にシャワー室に行き、一日の汗を流しながら、啓太のどこが好きなのか、どこを直してほしいとか、啓太談義をするのだった。
「朝からすみませんでした――失礼します」
明美は電話を切った。
相手は啓太――。
啓太と恵里菜のデートをプランニングした明美は、啓太が忘れていないかどうかの確認のために啓太に電話をしたのだった。
明美は啓太と恵里菜の恋愛を応援していた。
事は昨年、明美と隆太が直長の啓太と一緒に恵里菜のいる業務隊健康管理室の電話設置工事に行った日。その時明美は恵里菜を知った。そりゃ同じ婦人自衛官隊舎で顔を見かけたことはあったけれどもそれが恵里菜だということはわからなかったのだ。
それから恵里菜と会った時には度々恵里菜から啓太のことを聞かれるようになった。啓太はそのルックスから婦人自衛官の間でもかなり人気があった。また電話交換をするときの啓太の声も男子隊員であるにも関わらず結構評判が良かった。それは啓太の活舌の良さと電話対応時の甘い声がその理由だった。
そして、中にはどこからか啓太の勤務日を仕入れて土日祝日の啓太の勤務日に敢えて外線で駐屯地にかけて啓太に対応してもらうなんていう変態までいたほどだった。
明美は、恵里菜もそんな上辺だけの啓太ファンなのだろうと思って対応していた。というか、啓太があれだけファンがいてなぜ彼女ができないのか、それは明美がこうして悪い虫を付けないようにあしらっていたのと、啓太の独特の趣味をさも気持ち悪そうに話してファンの座から引きずり下ろしていたからである。つまり、啓太の趣味を聞いてファンの座から退く婦人自衛官がいるというのは、明美がそのように仕向けていたから起きていることなのであった。
なぜ明美がそうまでしていたのか、それは明美自身が啓太に対して恋愛感情を抱いていたからだった。最初は他の婦人自衛官と同じく啓太の趣味に対してネガティブに思っていたのだが、気が付くと啓太のことばかりを考えるようになっていた。そして仕事でちょっとしたミスを犯しそうになっていた時、啓太がそのミスを補い、なぜそうなったのかについて啓太が優しく諭してくれた。その時、自分自身の啓太への想いに気付いたのだった。
でも恋人になれば勤務直を変えられる恐れがあるし、同じ部隊である以上結婚も許されない。それは自衛隊倫理にも規定されていることであるからだ。
だからこそ明美は啓太への想いを諦めようとした。けれど諦めようとすればするほどに明美自身の想いは逆に強くなった。
そんなとき、少しずつ話すようになった恵里菜から恵里菜の啓太への想いを聞くことになる。明美は他の婦人自衛官達と同様に啓太の趣味も話してみた。けれども恵里菜の反応は他者とは一味も二味も違った。
そして、明美は啓太から恵里菜のことを聞かれるようになった。それは啓太の恵里菜に対する想いだった。それを聞いたとき、明美は「やっと解放される」と思った。楽になれると思った。そう思い込むことにした。
そして、明美は啓太と恵里菜の間を取り持つことにした。はじめは「うまくいくわけがない」そう思っていた。恵里菜に啓太の何がわかるのか、そんな気持ちもあった。
啓太が恵里菜に告白して二人が恋人となって以降、二人は駐屯地内でのデートを繰り返すようになった。二人が外でデートをするのならば諦めもついたかもしれなかった。でも二人は駐屯地内でばかりデートを繰り返し、しかもそのラブラブな空気を当ててくるのもあって、諦めようにも目がそっちに行ってしまってなかなか諦められなかった。
なので、明美は言い寄ってきていた先輩陸士長の隆太と一度デートをした。その日に隆太に迫られるままに勢いにまかせてキスまでした。けれども啓太の想いはどこにも晴れず、好きでもない隆太とキスをした自分を責めた。
でも誰にも言えなかった。
そんなときだった。交換室での仕事を終えて通信局舎に戻ろうとしたとき、中隊長の伊原良一三等陸佐に呼び止められた。内容は、啓太と恵里菜の件だった。二人の仲の良さと自衛隊倫理規定に則った二人の健全な交際への好感と、でも外での交際の手助けをしてほしい旨の話。明美は伊原三佐の意見に賛同した。賛同した理由としては電話隊隊長の武田和夫三等陸尉も中でのデートではなく外で羽を伸ばした交際もしてほしいという啓太へのある種の親心みたいなものも聞いていたからでもある。
それから、雰囲気の良い場所を旧友達に聞いたり、実際に行ったりしてみてよい場所を探した。
そこで見つけたのが啓太と恵里菜がお食事デートをした「ワンディッシュ」というレストランだった。ただ、ドが付くほどのケチな啓太を連れ出すためには、何かその切欠を作らないとだめだろうと考え、休日で外出ができる日には旧友達と、時には一人でそのレストランに通い、そして「半額チケット」をゲットした。
――これだ!
そして先日の夜勤明けの時、わざとみんなのいる前で「半額チケット」を啓太に渡し、恵里菜を連れ出すように促したのである。
ただ、そんなので啓太が外に出るか心配だった明美は、強制的に出ていけるようにレストランにコース料理を指定し会計も事前にすませての予約をすることを考えた。
そんな明美の中に――
『そうだ、それで下川三曹に呆れさせて鳴無三曹と下川三曹を引き離してしまえ。そうすれば鳴無三曹はフリーになる。そこをいただくんだ』
という黒い明美と、
『そこまでしてもし鳴無三曹の男性としてのプライドを傷つけてしまったらどうするの?予約するにしても鳴無三曹の都合も考えてあげないと――』
という白い明美とが心の中で戦い、結果――
『そんなのこっちが予約してあげるんだから、それであの二人が別れたらラッキーで良いじゃないか?』
という超ブラックな明美が黒い明美と白い明美の両方を倒して、結果予約と事前支払いを行うことにしたのだった。
そしてその日の午後、一応外出申請も出していて許可も出ている明美だったが、外出する気になれなくてその日の外出は取り消しにして、気晴らしに駐屯地外周を走ることにした。まあもうすぐ陸曹昇進審査もあるし、もし陸曹昇進が決まれば初級陸曹課程で入校しなきゃいけなくなる。そのためにも体力をつけておくことは必然でもあるので、まあ一石二鳥かと――。
外周を3周、約5キロ強を走って、シャワーで汗を流し、筋肉の手入れもしながら過ごし、久しぶりの土曜日の隊員食堂で食事も済ませて同室者は二人とも勤務ってこともあってゴロゴロ過ごしていたとき、婦人自衛官隊舎当直から玄関まで来るようにと呼び出されて、何だろうと思いながらも一応ジャー戦に着替えて隊舎玄関まで出てみると、そこには恵里菜と啓太がいた。
二人から会計と予約のお礼をされて、
「松永士長にお土産買ってきたの」
と小袋を啓太から受け取った。その袋は結構高め名ブランドの袋だった。
「い、いえこんなことしてもらうためにしたわけじゃ――」
と、言いかけたところで啓太に制止されて、明美の気持ちが嬉しかったからのお土産だからと押し込まれてしまった。
そして、恵里菜が「開けてみて」というので袋からケースを取り出して開けてみると、そこには四葉のクローバーのマークがあしらわれた金色に輝くネックレスだった。そのネックレスは明美が三等陸曹へ昇進した時に買おうと思っていたものと偶然にも同じものだった。
「似合うと思うから」
と恵里菜がネックレスを付けてくれて、スマートフォンのカメラ機能で首にかかるネックレスを見せてくれる。首元に輝く金色の四葉のクローバー。なんかうれしさと悔しさと悲しさと色んな感情が一緒になってあふれ出してきた。
気が付けば泣いていた明美。
その明美を抱きしめた恵里菜は啓太に大丈夫だからと啓太を帰し、恵里菜は明美を促して明美の部屋へ。
明美の部屋で、明美のベッドに二人腰かけてしばらく恵里菜に抱き着いて泣いていた明美。
明美が落ち着くと、
「松永士長、本当は啓太のこと好きなんでしょ?」
と恵里菜がド直球で聞いてくる。しかもそれはド真ん中のストライク。しかも突然投げられたその球を打ち返すことすらできなかった明美。
そして――
「松永士長の気持ちは気付いてたんだけど、それでも譲れなくて私は啓太と付き合ってる。それがもし許せないというなら、私から啓太を力ずくで取ってみて」
と明美の瞳をまっすぐに見てそう言ってくる恵里菜。
その恵里菜に、明美は白旗を上げた。
――そんなの、絶対に無理だよ。
すると、恵里菜はニヤリと不敵な笑いを浮かべて、
「松永士長は啓太をいつも一緒に仕事してるでしょ?私から啓太を奪うことなんてすぐにできるんじゃないの?」
と挑発的な言葉を明美に投げる恵里菜。
その恵里菜の目をまっすぐに見つめた明美は、
「奪えるものならもうとっくに奪ってます。でもそれはできないし、もしそんなことをして鳴無三曹が苦しむことになるのなら、それは私のやりたいことではないんです。鳴無三曹のことは好きです。その気持ちはきっと下川三曹にも負けないと思います。
でも、私が望むのは鳴無三曹が幸せになることです。そして、それはきっと私にはできません。
というか下川三曹も渡す気なんて全然ないくせにそんなこと言わないでください」
と、最後には泣き笑いして恵里菜にいう明美。
「ゴメンね」
と明美を抱きしめてそういう恵里菜。
しばらくして恵里菜を引きはがした明美は、恵里菜を真剣な目で見ると、
「でも、もし鳴無三曹を悲しませるようなことを下川三曹がした時には、私は絶対に許しませんから。これだけは覚えておいてください」
という明美が言うと、恵里菜はその場に起立して明美に対して10度の敬礼をした。
「もちろん、啓太を悲しませたりなんてことはしないよ」
と笑顔でいう恵里菜。
その後、二人は一緒にシャワー室に行き、一日の汗を流しながら、啓太のどこが好きなのか、どこを直してほしいとか、啓太談義をするのだった。
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