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2ヵ月かけて4つの中級ダンジョン、護衛を2回ほどして残りが70,967ポイントとになる。料理のレシピをザンド商会に売ったり、冷蔵庫の魔道具を開発したりした。

【名前】ティナ
【年齢】5歳
【レベル】493
【体力】503
【魔力】∞
【物理攻撃】97
【物理防御】97
【魔法攻撃】49,300,000
【魔法防御】49,300,000
【属性】全属性
【スキル】全属性魔法Lv6、鑑定Lv5、無限収納、マップ
【ユニークスキル】神通販、経験値10,000倍、必要経験値1/100

ステータスも上がり体力が500を超えた。

「ランロワの中級ダンジョンは制覇したから他の街に行くぞ」
「上級ダンジョンは?」

上級ダンジョンは確か5個あったと思う。

「上級ダンジョンはもう少し後でやろう」
「そうね。ティナちゃんはまだ5歳だからね」
「年齢が関係あるのですか?」
「上級ダンジョンを制覇すればあっという間にポイントが貯まるのよ」

それならばいいことなのでは?

「ポイントが貯まればBランクになるために冒険者学園に行かないといけないでしょう? 流石に5歳では早いと思うのよ」
「普通は何歳くらいで通ってるのですか?」
「早い子で10歳かしら。平均したら10代後半が多いわね」
「因みに何年くらい通うのでしょうか?」
「それは人によって違うわ。ティナちゃんは多分、早く卒業するでしょうね」

前世の学校みたいに揃って入学したり卒業式したりしないようだ。

「ティナは読み書きが出来るしマナーも取得してる。魔法も学ぶことはないだろうから最短で卒業が出来る」
「殆どの人が読み書きとマナーやダンスで時間を取られるからね」

冒険者は平民出身が多い。その辺りが難所となるのだろう。私は既に習ってるなら問題ない。魔法も使いたいものは思っただけで使えるから、冒険者学園にはBランクになるための条件を果たすためだけに通うことになりそうだ。

「それで他の街に行くんだけど、定期馬車の護衛を受けたからね。出発は5日後だよ」
「ハルトさん、定期馬車の護衛とは何ですか?」
「街から街を繋いでる馬車が定期的に出てる乗り合い馬車だよ。それの護衛ね。お金は少ししか入らないけどポイントが1日で1,000ポイント貰えるからね」

お金は既に沢山あるから大丈夫。それよりもポイントが嬉しい。

「今回はティナちゃんの単独任務で僕たちは付き添いになるからね」
「他パーティはいるのですか?」
「いないよ。定期馬車の護衛は少ししかお金が入らないから皆やりたがらないからね。Bランク以上の人が依頼されて嫌々やるって感じが多いよ」

完全に1人での護衛か。責任感が半端ない。

「支援魔法とかも自由に使って大丈夫ですか?」
「うん。今回はソロだから自由にしていいよ。取り敢えず南の隣町ルーカスまでの3日間だからね」

準備は万端にしておこう。



定期馬車の護衛当日、時間前に待ち合わせ場所に行くと既に馬車と沢山の人たちがいた。

「今回、護衛を担当させていただきますCランク冒険者のティナと申します。よろしくお願いします」

御者さんに挨拶をすると驚いた表情をされる。

「ちっこいのに偉いなぁ。後ろの人たちと一緒に護衛をしてくれるのか?」
「いいえ。彼らは私の付き添いなだけです。護衛は私1人でします」

会話を聞いてた人たちがざわつき始めた。

「あんな子供が1人で?」
「おいおい。今回の旅マズイんじゃねぇのか?」
「どうする?やめるか?」

5歳児だからね。周りが不安に思うのは仕方ない。

「でも虹色の雫のエンブレムしてるぞ?」
「ということは実力があるのか?」
「いざとなったら後ろにいる虹色の雫が出てくるだろう」
「それならば逆に安全だな」

シルたちには一切助けてもらわないつもりだけど、ここでは何も言わず笑顔でいる。そのうち私だけで安全だと思ってもらうように頑張るだけだ。

馬車は1台だけだし私は馬車の前を浮いて移動する。私の後ろにシルたちがついてきた。雪が積もってるためゆっくりとしたペースだ。

お昼の休憩地点までは何もなく終える。再出発して暫くしたところで魔物が探知魔法に引っかかった。出てきたのは3体のビッググリズリーという物凄く大きな熊だった。

「【聖】」
「おおー!1撃で3体も倒したぞ!」
「小さくても虹色の雫のメンバーだな」

周りが騒いでる間に解体を済ませる。その後も何回かビッググリズリーに遭遇した。野営地点に着き、それぞれテントを出してる。全員のテントが張り終わったの見計らって可視化した結界魔法を展開した。

「これは?」
「結界魔法です。この中でしたら安全に過ごせます」
「凄い子供だな!」
「魔法は得意ですから!」

ない胸を張って自慢する。夕食は鍋にした。寒い時は鍋に限る。

「見張りはどうしたらいいの?」

1人でずっとは無理だ。

「この結界があるからいらないだろう」
「そうだね。何かあればティナちゃんなら分かるでしょう?」

探知魔法は切らさないで置くけど、それでいいのかな?

「ティナ、俺たちもいるから安心していいぞ」
「シルたちは付き添いでしょう?」
「頼って?ティナ」

そう言われてしまえば嫌とは言えない。ここは甘えておこう。

夕食を食べたあと魔法テントの中に入る。魔法テントにも冷暖魔道具を設置した。そのため快適に過ごせる。

「顔が冷たくて痛かったー」

手はローブの中に隠れるから平気だったが顔が辛かった。

「鼻が少し赤くなってるな」
「ううー」

古代竜が羨ましいよ。平気そうにしてるシルを無意味にバンバン叩くがダメージは全くあたえられなかった。

2日目も熊の魔物がいっぱい出てくる。その中で青銀色の大きな犬と遭遇した。

「【せーー】」
『待て!!』

倒そうとしたら犬から声がする。ビックリして魔法を止めた。

「しゃべった?」
『我はフェンリルだ』
「フェンリル?」

フェンリルが何だか分からず首を傾げる。

「ティナちゃん聖獣だよ」

ハルトさんが教えてくれた。フェンリルは聖獣といわれドヤ顔をしてる。

「そのフェンリルさんが何用ですか?」
『そなたの魔力に惹かれてやってきた』
「そうですか」
『それだけか?もっとこう感動するとかないのか?』

特にフェンリルとは会いたいとは思ってないから感動も何もない。

『フン。光栄に思え! そなたに仕えてやろう』
「え? お断りします」
『そうかそうか。嬉しいか……、は? 断る?』
「はい。お断りします」

嬉しいなんてこれっぽちも思わないよ。

『何故だ!? 我はフェンリルだぞ?』
「お世話が大変そうなので」

私は猫派だし、犬なんて散歩したりシャンプーをこまめにしないといけない。それに拠点でペットを飼っていいか分からないしね。

『世話は大丈夫だ。自分のことは自分で出来る』

そうは言われても困るなぁ。

「シル、どうしたらいい?」
「いらないのか?」
「うん。いらないの」

そう言うとシルはフェンリルの首根っこを持ち投げた。フェンリルはあっという間に見えなくなる。

「あはは。フェンリルを投げ捨てたよ。流石はマスター。いや、いらないと言ったティナちゃんが流石なのか?」

ハルトさんがぶつぶつと何か言ってる。

「皆さん、お時間を取らせてしまって申し訳ありません」
「い、いや。大丈夫……」

護衛中に話しかけてくるなんて、あの犬は気遣いも出来ないのね。次に会ったら問答無用で攻撃魔法を放とう。

3日目、街まであと少しと言うところで盗賊が18人ほど出てきた。

「ティナちゃん、街まで近いし殺さないで連れていった方がいいわよ」
「【捕縛】」

ミーアさんに言われて聖魔法でなく捕縛魔法に切り替える。盗賊たちは黒い蔦に捕らわれた。魔法で浮かせて連れて行く。

ルーカスの街に着いて定期馬車とは別れた。私は盗賊のこともあるので門兵に部屋へと案内される。

「あれはお嬢ちゃん1人のは本当なのかな?」

そう言って真偽の水晶を差し出された。子供だし疑われてるのだろう。

「私1人で捕縛しました」

水晶に手をかざして答えた。水晶は青く光る。

「誰にも手助けしてもらってないか?」
「してもらってません」

再び水晶は青く光った。

「悪いな。お嬢ちゃん、中には上のランクの手柄を下のランクの者に渡すクランもあるからよ」

へぇー。そんなクランもあるんだ。

ギルドカードを渡して情報をインプットしてもらう。後は冒険者ギルドでポイントと報酬を獲得出来る。

「ティナ様、定期馬車の護衛ありがとうございます。3,000ポイントの報酬となります。盗賊捕縛で1人あたり1,000ポイント10,000ギルとなりまして18人の捕縛でしたので18,000ポイント180,000ギルとなります。残り49,967ポイント、冒険者学園の卒業でBランクとなります」

ギルドカードを返してもらってシルに抱きつく。

「凄いポイントとお金になったよ!」
「盗賊を生きて捕まえるのは難しいからな」

犯罪奴隷なるのは確定してる。そうならないように逃げようとしたりと殆どは抵抗するだろうからね。それでも倒した時が5ポイントだから全然違うよ。

「これから彼らは尋問を受け住処を吐かされるだろうね。そうすれば騎士たちが討伐に行く。捕まった彼らはその後に犯罪奴隷となるよ」

人生終わりだね。盗賊なんてにならなければいいのに。どうして盗賊なんかになるんだろうか。

この街には拠点がないため高級宿に泊まった。私は勿論シルと同室だ。ほかの人たちはそれぞれ個室に泊まってる。

翌朝起きると喉が痛くてだるかった。ヤバい……、熱あるよ、これ。

「【治癒】」

喉の痛みはとれたがだるさはそのままだ。

「ん? ティナどうした?」
「起こしちゃってごめんね。熱がある感じだったから治癒魔法かけたの」

シルは慌てて起きて私の具合を確認する。

「大丈夫か?」
「だるさは治らなかった」

しゃべるのも辛いかも。

「ご飯は食べれそうか?」

んー……、お粥なら食べれるかな。後、りんごをすったのと桃缶が食べたい。

神通販で食べたいのを購入する。ついでにシルの朝ご飯も。シルは自分の食事は後回しで私に食べさせくれた。

「全部、食べれていい子だ。後は結界魔法を解いて寝るんだ」

言われた通りに結界魔法を解くと、ほんの少しだけ楽になった気がした。



シルヴェストルはティナを寝かすとハルトの部屋に行き、他の皆を呼び寄せる。

「ティナが体調を崩した」
「ええー!? ティナちゃん、大丈夫なの?」

ミーアが身を乗り出して聞いた。

「自身で治癒魔法を使って熱はなくなったみたいだが倦怠感が残ってる状態だ」
「ティナちゃん、まだ5歳だからね。この寒さはキツイかもしれないね」

ハルトの言葉に皆が頷く。

「この先、どうするか?」
「ランロワに戻って冬は休むか?」

ジョンとユーグがこの先の予定について話し始めた。

「でも、それだとずっと弱いままじゃない?」
「子供の頃って、どうだったっけ?」

皆で考えるか子供の頃なんて覚えてなかった。その中で弟妹の面倒を見てきたシルヴェストルが今後について話す。

「様子を見ながら予定通りに中級ダンジョンをやってその後に定期馬車の護衛依頼をこなしながらスレーナフスの王都に行く」
「それで大丈夫なの?」

ミーアが心配そうに聞くがシルヴェストルは問題ないと言った。

「体調をみながらだからペースは落としていく。ダンジョン攻略も日数を多くとる。そのつもりで準備をしてくれ」

番のシルヴェストルが言うならば大丈夫だろうと了承する。

「とりあえず5日ほど休みにする」

だるさだけだから、それほどの日数はいらないがティナのことが大事なシルヴェストルはかなりの休みをとった。

シルヴェストルが部屋に戻ると、ティナが起きていてぐずっている。

「シルぅ、どこに行ってたの?」
「起きてたのか?」

ティナは両手を前に出してシルヴェストルに抱っこをせがむ。シルヴェストルはティナを抱き上げて腕の中に閉じ込めた。

「シルのばかぁ。何でいなかったの?」
「悪いな。この後はずっとそばにいるから安心して寝ろ」
「絶対だよ?」
「ああ」

シルヴェストルはティナに魔力を流して寝かしつける。



2日目には体調は完全に良くなっていたが、念の為と5日もベッドから出してもらえなかった。

「大丈夫か?」
「もう元気だよ!」

シルは本当に大丈夫なのか、私のおでこや首を触ってる。本当に過保護なんだから。

「ね? 大丈夫でしょう?」
「だが、無理はするなよ?」

うんと頷いて、準備をしてもらう。今日の服はもこもこのワンピだった。勿論、ミニだ。心配してるならばロングしてくれてもいいと思うんだけどね。

まぁローブを着れば中が何であろうと変わらないけどさ。

「ティナちゃん、元気になった?」
「皆さん、ご心配をお掛けしてごめんなさい」

頭を下げてお詫びをする。私のせいで予定を狂わせてしまってるからね。

「いいのよ。ティナちゃんが元気なれば」

気にしないの。と、ミーアさんが言ってくれた。

「さて、ダンジョンに行くか」
「そうだね。ティナちゃん、嫌なことは先にしたい?それとも後回しにしたい?」

ハルトさんの言い方に嫌な予感がする。私は何も言わず首を振った。

「行かないというのはなしだからな」
「シル……」

涙目でシルを見つめるが効かない。行くのは決定らしい。

「さ、先に済ませます」

よし!行こうと出発した。私はまだダンジョンじゃないというのにシルから離れなくなってる。

「急ぎでお願いしますね」
「ダメよ。ティナちゃん、体調を崩したばっかりなんだから、いつもよりゆっくり行くわよ」

ああー……。何故に体調を悪くしたんだ?私。
せめて行った後にしてくれれば……。

向かったのは案の定、虫ダンジョンだった。

前回同様にシルの胸に顔を埋めて耳を塞ぐ。そしてマップで赤い反応が出たら即座に魔法を撃った。

「まだ9層だよ?」

もっと行こうよとせがむが聞いてくれない。セーフティーゾーンだから大丈夫だと宥められて終わった。その後も10層ずつに1泊するという工程で進められる。

ようやく50層のボスを倒して終わったと胸を撫で下ろした。

「凄いよ!ティナちゃん! 初級無属性魔法のスキル書が出たよ!」

ミーアさんが興奮してるが私はさっさと出たい。

無属性魔法のスキル書は希少で市場にも出回ってない。攻撃魔法はないけど生活魔法が充実していてとても人気のあるスキル書だ。特に女性には大人気だ。上級で脱毛魔法がありムダ毛のお手入れをすることもなくなるから。

「いらないのであげます」
「お金払うわよ?」
「虫が元のなったと思うだけで無理なので差し上げます」
「本当にいいの?」

何度も頷く。ミーアさんは大喜びでスキル書を使った。

ダンジョンから出てからミーアさんに話しかける。

「初級では大したこと出来ないけど嬉しいものなのですか?」
「クリーンが出来るだけで嬉しいわ。それにティナちゃんといると中級も上級も手に入りそうだしね」

私のドロップ率はおかしいみたいだから、確かにそのうちドロップしそうだ。

他2つの中級ダンジョンは普通のダンジョンで問題なく終えた。

「次はどうするの?」
「6日後に定期馬車の護衛依頼を受けた」

次の街に行くのね。こうやって旅するのも冒険者って感じがしていい。

【名前】ティナ
【年齢】5歳
【レベル】496
【体力】506
【魔力】∞
【物理攻撃】98
【物理防御】98
【魔法攻撃】49,600,000
【魔法防御】49,600,000
【属性】全属性
【スキル】全属性魔法Lv7、鑑定Lv5、無限収納、マップ
【ユニークスキル】神通販、経験値10,000倍、必要経験値1/100

ついに全属性魔法のスキルがレベル7になった。

ポイントも残り46,967になる。

ルーカスの次はディアムというルーカスから西に行ったところにある街だった。

やはり私1人の護衛は胡散臭がられた。

「どうやって1人で護衛するんだよ?」
「虹色の雫に入ってるからっていい気になってるのか?」

好き放題言われるが耐える。彼らは命が掛かってるんだから仕方ないと自分に言い聞かせた。

「ティナの実力は虹色の雫のマスターである俺が保証する」

シルの言葉に全員が黙る。心なしか震えてるようにも見える。もしかして、シルが威圧してる?

「し、しかしディアムまでに出てくる魔物はBランクかAランクの討伐対象だぞ? そこの嬢ちゃんがそれ以上だとは思わないが?」
「ティナはランクこそCランクだがAランクくらい問題ない。ワイバーンすら1発の魔法で何体も倒せる」

乗客たちは目を見開いて私を見た。

「夜の見張りは? 1人だと無理だろ? それともディアムまでの4日間ずっと起きていられると?」
「夜はティナが結界魔法を掛けるから問題ない。下手な護衛より安全だ」
「本当かよ?」
「はい。魔法は得意ですのでご安心ください」

ようやく納得がいったのか出発となった。

「シル、面倒を掛けてごめんね」
「見た目でしか判断できない奴らが悪いから気にするな」

見た目は重要だから仕方ないよ。私のことを知らなければ誰でも5歳児が1人では不安がるよ。

探知魔法に魔物が引っかかりとまる。出てきたのはオーガ14体だった。オーガはBランクの討伐対象だ。

「【聖】」

一気に倒して解体する。

「おおー! 1撃で10体以上倒したぞ!?」
「子供なのにすげぇー!」

乗客たちが凄い凄いと褒めてくれる。あまりの褒めように恥ずかしくなった。でも、これで安心してくれるならそれにこしたことはない。

それからも魔物が出る度に倒して行った。

【名前】ティナ
【年齢】5歳
【レベル】498
【体力】508
【魔力】∞
【物理攻撃】98
【物理防御】98
【魔法攻撃】49,800,000
【魔法防御】49,800,000
【属性】全属性
【スキル】全属性魔法Lv7、鑑定Lv5、無限収納、マップ
【ユニークスキル】神通販、経験値10,000倍、必要経験値1/100

「物理が後少しで100になるよ!」
「ティナに物理は必要ないよ」

攻撃はいらないけど防御は必要だと思うよ。

「ティナちゃんのステータスはどうなってるの?」

夕食時に話したため聞いていたミーアさんが質問してきた。

「魔法特化のステータスです。なので他は壊滅的です」
「数値は?」
「それは秘密です」

古代竜のシルと比べたら弱いけど、人族の中では異質だと思う。今まで仲良くしてくれた人の態度が変わってしまうのが怖いため言うのは避けた。

「ティナちゃんが1撃で倒せないものってないの?」
「シルは無理ですね」

攻撃しようとは思わないけどね。

「魔物では?」
「まだ戦ったことのない魔物が多いのでなんとも言えません」
「ティナちゃんはデバフが異常だから倒せないもなはないよ」

ハルトさんが話しに加わってきた。それにジョンさんが頷いてる。

「あれはヤバかった。もう2度と受けなくねぇ」

効果が分かったから仲間に掛けることはないよ。

「そうねぇ。そのデバフがあれば厄介な魔物も楽勝ね」
「厄介な魔物とはどんなのがいるのですか?」
「凄くすばしっこいのとか、精神異常攻撃してくる魔物とか、姿を消す魔物とかがいるわね」

色んな魔物がいるんだね。デバフでそれらの特性がなくなれば助かるかもね。

今回は盗賊には遭わずに街まで到着した。4,000ポイントゲットして残りが42,967ポイントになる。

「この街でも中級ダンジョンを攻略するの?」
「ここには初級ダンジョンしかないからスルーして次の街に移動する」
「定期馬車の護衛依頼は?」

何故か全員が黙った。何か嫌な予感がする。話を聞いてないのに私は既に涙目だ。

「……ここから暫くの間、虫の魔物が出てくる」
「いやーー!!」

予感は当たったよ! 

「戻ろう? ランロワに!」
「目的地は王都だ」

目的地があったのね。だけど、それは今はどうでもいい。

「何で虫がいるルートにしたの!?」

王都までの道なんだからいくつも道はあるはずだ。

「このルートが1番、中級ダンジョンがあるんだ」

寒期なんだから虫も冬眠してればいいものを!魔物だから冬眠しないの?寒さに強いの?

うわーと叫びだしたい気分だ。

「ティナ、抱っこしていくからな?」

シルそれは決定してる事項だよ。

「但し! ダンジョンみたいに倒しちゃ駄目だからね」
「ミーアさん何を……」

近くに虫がいるのに我慢しろと?

「全部を倒しちゃったら生態系が変わっちゃうからね」

虫なんて全滅しても困らないよ。

「虫素材は中級ランクまで使えるからな」

え? 思わずみなを見てしまう。すると全員が目を逸らした。

「シル……、何か虫素材のものを装備してるの?」
「……服がアラクネだ」
「いやーー!!」

そうだ。アラクネは最高級品。シルが着てないわけなかった。今まで自分のことで精一杯でそこまで考えが及ばなかったよ。

神通販を起動させるとオススメにシルの服がある。沢山の服を購入した。

「シル、これに着替えて!」

シルに押し付けて着替えてくるように促す。着替え終わって戻ってきたシルは満面の笑みを浮かべてた。私はシルの姿に顔を赤らめる。まさか、金色の刺繍が入ってるとは……。リュヌ様、気を遣いすぎなのでは?

「ティナの色を身に纏えて嬉しいよ」

本当に嬉しそうだ。私は恥ずかしいけどね。

皆のところに戻るとシルが注目される。

「凄いラブラブだね」

お互いがお互いの色を纏ってるんだもん。バカップルだよね。それでもアラクネよりかはいい!

「あら? 鑑定してみたら世界樹の葉なんて出てきたのだけど、何かの間違いかしら?」

ミーアさんはシルの服を鑑定したようだ。私の場合は結界魔法で鑑定できないから知らなかったのだろう。

「リュヌテラーシャス神の加護だ」
「ティナちゃんのためならば何でもするのね」

虫は無理だから有難いよ。まぁリュヌ様も私の魔力で神格が上がるみたいだからWinWinの関係だね。



暫くの間は魔導馬車での移動になった。魔導馬車に虫が当たるのもいやなので魔導馬車の半径2メートルの結界魔法を掛ける。魔導馬車にも冷暖魔道具を設置した。

それでも嫌なためシルの上から動かない。勿論、外も見ないようにシルの胸に顔を埋めた。

「いつまで虫の地域なの?」
「3つ先の街までだな」

うわー、長いよ。

「途中でダンジョン攻略していくからな?」
「……虫じゃないよね?」

涙目でシルを見上げた。もう虫はお腹いっぱいです。

「海ダンジョンがあるぞ」

海ダンジョンと聞いて少しだけテンションが上がる。また刺身や蟹が獲得出来る。無限収納の中にまだ入ってるがいくらでも欲しい。

「この地域を抜けたら虫は出てこないし虫ダンジョンもないから安心して」
「ミーアさん、ありがとうございます」

良い情報をもらえた。今だけ我慢すればいいなら何とかなりそうだ。

途中で盗賊が出てきたが、私は外に出るのが怖くて中に引き篭っていた。

「どうする? 私たちで行ってくる?」

ミーアさんたちはポイントが貯まってる状態だし、今回は私のために同行してもらってる。倒してもらうのは気が引けた。

「多分いけます」
「ティナちゃん、外に出られるの?」

外には出られない。でもマップ機能があれば見なくても倒せる。

「【聖】」

殺す相手のことを覚えていられないのは申し訳ない気持ちになった。それでも虫を見てしまうかもしれない恐怖には勝てない。

そのまま炎魔法で燃やす。

「来世では真っ当に生きてください」

祈りだけは捧げた。

「ティナちゃん、偉いわね。盗賊の来世を願うなんて」

未だに盗賊といえど殺すことには忌避感がある。それを少しでも和らげるためだけに祈ってるようなものだ。高尚な考えがある訳では無い。

ディアムの隣町、ワーズナに到着する。盗賊13人の討伐で65ポイントもらえて残り42,902ポイントになる。やっぱり倒した時は捕まえた時に比べてポイントが低い。ランクの違いかと思ったがそうではないみたいだ。

「どうした?」
「何で倒した時と捕まえた時ではポイントの差があるの?」
「捕まえるのが難しい点、捕まえた時の利点が大きい点がある」

ハルトさんが尋問受けて拠点を吐かされるって言ってたな。それで騎士が潰しに行くと。

「それと盗賊といえど人の命を奪ってるからな。それに殺しになれて殺しを快楽と捉えてしまう者も中にはいる。討伐した際の報酬を大きくすれば捕まえるより殺した方が楽だと思う者が沢山出るだろう?だから敢えて討伐した際の報酬は低いままなんだ。捕まえた場合はランクによって報酬が異なり捕縛した方がいいと思えるようになってる。だからといって捕縛すると抵抗が激しくて大変なことにもなるから要注意だ」

確かに、半分のポイントでも連行していく手間暇を考えたら殺してしまった方が面倒はないと思うのかもしれない。私は捕縛魔法&浮遊魔法で楽してるけど、これを使わないとなると道中で暴れられたりとかもあるのかもしれないしね。

「冒険者ギルドも冒険者が快楽殺人鬼にならないように配慮してるんだね」
「ああ。冒険者から犯罪者になる奴らは結構多いからな」

まだ、それほど討伐してない私だって忌避感はあるが初めて殺した時のような恐怖はあまり感じてない。

いつか間違って道を外さないように今一度、気を引き締めよう。
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