魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

紗南

文字の大きさ
上 下
9 / 24

08

しおりを挟む
今日は初ダンジョン!朝からうきうきだ。

「楽しそうだな」
「うん!」

北の城門から出て、数時間いった所にダンジョンがあった。ダンジョンの入口には冒険者ギルドの職員が立っていてギルドカードを確認してもらってから中に入る。

「初級ダンジョンだしティナちゃん1人体制でやってみようか」
「危なくなったら助けるからな」
「はい。ジョンさんありがとうございます」

ハルトさんの提案で私1人での討伐になる。ここの初級ダンジョンは今までに倒したことのある魔物の系統しかいないため楽に攻略が出来るだろう。

1層から10層まではスライムとスライムキング。

「ティナちゃん、物理攻撃もしてみる?」

小さなナイフをミーアさんに渡されたが、直ぐにシルが取り上げた。

「ティナに物理は必要ない」

うん。レベルが400以上なのに物理攻撃100もないからね。

「ティナ、普段使わない属性の魔法を使ってみろ」
「ほぇ?」
「多分、ティナの場合はその方がスキルレベルが上がる」

そうなの? シルが言うなら、その通りにしてみるよ。

「【闇】」

黒い塊がスライムを包み消えていった。その後にポロリとドロップする。

「【土】」

尖った岩が下から突き出しスライムを魔石ごと砕いた。それなのに出てきたのは魔石のドロップ。不思議だ。

「【水】」

スライムに水は悪手だが、スライムの吸収以上に与えたら破裂した。

「【重力】」

スライムが圧迫死する。ダンジョンでは、どのように倒してもドロップする仕組みぽい。

「あとは何があるかな?」

全魔法と一括りにされてるから詳しくが分からない。

「そんなものでないか」
「……あれね。外では使えないのが多いわね」

ミーアさん、私もそう思う。闇なんて全部無くしちゃうから外で使ったら素材が取れない。ダンジョン用の魔法だね。

10層はボス部屋でスライムキングがいた。ダンジョン専用の魔物になる。闇魔法で1撃だった。ドロップは魔石とスキル書。スキル書はボスからドロップする。スキル書は読んだだけでスキルが獲得出来るもので、今回のスキル書は剣術だった。スライムからなので、そんな良い書は出ない。ギルドに売って僅かばかりなお金を手にしよう。

11層から20層はゴブリン、ゴブリンアーチャー、ゴブリンメイジ、ボブゴブリン、ゴブリンキングになる。

11層に入ったら人が沢山いた。

「凄い人だね」
「ここから暫くは、こんな感じだ」
「そうなの?」
「皆、小麦採取のためにいる」

11層から15層には小麦が生えてるところで、ここで小麦を採取して売って生活してる人が沢山いるみたいだ。魔物はゴブリンだし、人が多いからゴブリンが出ても瞬殺される。安全に採取が出来てお金になる。上を目指さない人は、ここで留まる。

16層に入るまでは素通りで過ぎていった。

「ねぇ、ここまで最短距離じゃない?」
「スキルのマップ機能を使っていますので」

マップはダンジョン内でも有効でマッピングしなくても使えてる。

「便利なスキルを持ってるのね」

神通販には感謝しかない。

20層はゴブリンキングで炎魔法で燃やし尽くした。炎魔法も素材のことを考えたら使いにくいからダンジョン専用になる。

ここでは魔石のみでスキル書は出てこなかった。

「21層に入ったらセーフティーゾーンで1泊しよう」

ダンジョンの中はいつでも明るいが、時間は既に夕方になってる。シルの言葉に皆が頷き、セーフティーゾーンに向かった。セーフティーゾーンには魔物が入ってこれない安全地帯になってる。

セーフティーゾーンに入り魔法テントを出す。皆で食事を取り別れた。護衛中は魔法テントを出してもお風呂には入れなかったが、ここは完全に安全なところなのでお風呂に入れる。シルと一緒にお風呂でマッタリして疲れを取った。

【名前】ティナ
【年齢】5歳
【レベル】462
【体力】472
【魔力】∞
【物理攻撃】92
【物理防御】92
【魔法攻撃】46,200,000
【魔法防御】46,200,000
【属性】全属性
【スキル】全属性魔法Lv6、鑑定Lv5、無限収納、マップ
【ユニークスキル】神通販、経験値10,000倍、必要経験値1/100

「シル、全属性魔法のスキルが6レベルになったよ」

嬉しくて直ぐに報告した。

「やはり万遍に使うのが良いのかもな。それにしても5歳で6とは、あっという間に10レベルになれそうだな」
「うん。ユニークスキルのおかげでね」

加護がなければ、2か3くらいだったと思う。

朝早く起きてダンジョン攻略の続きをする。

21層から30層はフォレストウルフ、ダークウルフ、ハイウルフの3種だ。

順番に属性を変えて倒していく。

「ダークウルフに闇属性で攻撃してるのに1撃とは……」

ハルトさんが呆れたように言い放った。

「それだけ魔法攻撃が高いってことか?」

ジョンさんの言葉にハルトさんが「多分ね」と答える。

「属性のお勉強が出来ないわね」
「ミーアさん、相手の弱点属性は理解してるので大丈夫ですよ」

基本属性魔法だと火は水に弱く、水は土に弱く、土は風に弱く、風は火に弱い。闇と光は双方が弱点となってる。

「ティナちゃんの強敵は魔法耐性のある魔物ね」
「いや、魔法無効だな。耐性くらいではティナの方が強い」

ミーアさんの発言にシルが訂正した。

「魔法無効なんていう魔物がいるの?」

出会ったらお終いだよ。

「いないな」

いないのか! いるのかと思っちゃったよ。ジト目でシルを見上げるが頭を撫でられて終わった。

「ティナちゃん、ボス戦だぞ」

ユーグさんに言われ気を引きしめる。ボスはハイウルフ3体だった。

「【重力】」

ぺしゃんとハイウルフ3体が潰れる。ドロップは毛皮、肉、魔石、スキル書2枚だった。スキル書は初級水魔法と短剣術。2つとも私には必要ないので売る。

後天的にスキル書で魔法を覚える場合は初級Lv10→中級Lv10→上級と覚えていかないといけない。先天的に魔法が使える場合でも簡単な魔法から習っていく。私の場合は使いたいと思えば使えるけどね。

「あっという間に初級ダンジョン制覇したな」
「まるで散歩してるかのようだったわ」

ジョンさんとミーアさんが感想を述べた。初級ダンジョンだし、こんなものでは?

「それにしてもダンジョンのドロップ率が凄かったな」
「必ずドロップしてたしスキル書も2枚もゲットした」
「ああ。ありえないドロップ率だった」
「運の能力値が高いんだろう」

運?

「シル、運の能力値って何?」
「ステータスには腕力、敏捷、器用さ、知能、運と5つの能力が隠されててレベル1,000を越えると確認ができる」
「何で隠されてるの?」

最初から見えてた方が便利なのに。

「5つの能力にはそれぞれの神がいる。はるか昔は生まれて直ぐに5つの能力を確認することが出来た。これは神々が能力にあった人生が送れるようにとの配慮だった。だが、その家が信仰してる神の能力値が低いと生まれてこなかったものとされたり捨てられたりすることが多かった。それを嘆いた神々がステータスを今のように変えて5歳の洗礼後にしか確認できないようにしたのだ。それでもそれぞれの神はいるから元々あった5つの能力をなかったことにはできなくてレベル1,000で開示する形になったと言い伝えられてきてる」

悲しい歴史があるのね。実父だったら絶対に生まれて直ぐに確認して期待した能力でなかったら殺してるか捨ててるね。そう思ったら鳥肌が立った。

私のステータスが生まれて直ぐに分かってたら魔力0と勘違いされて殺されてたかも……。

「今のステータスには神様がいないということですか?」
「いないとされてる。剣神や愛の女神など沢山の神々はいるけどな」

それぞれのスキルの神はスキル書があるから持っていなくても棄てられるという悲劇は起きないだろう。

「因みにダンジョンは神々からの贈り物とされてるのよ」

確かにダンジョンの外と比べると違いがはっきりと分かるしドロップも神々からの贈り物ならば納得できる。

「それで私の運の能力値が高いって予想してるのですね」
「ティナちゃんは高いぞ! 俺に比べたら雲泥の差だ」
「ジョンさんは盾職ですよね? どうやって運を調べたのですか?」

まさか盾で魔物を倒したとか?

「俺は元は大剣使いだったんだよ。だけどよ、運が低すぎてドロップがほとんどしなくてな。それで運が関係ない盾職に変更したんだ」
「ジョンのドロップ率は壊滅的だったからな」

ジョンさんは声を出して笑ってる。どれだけ酷かったんだろうか。1,000レベルにならないと分からないから実際に試してみないといけない。それで低かったら職変更なんて手間がかかるな。

「もっと低い段階で分かられば便利ですのに……」

10レベルとかだったら楽に到達出来るから早い段階で路線変更が可能だと思う。

「神々の好意を無駄にしたから1,000レベルになったんだろうと言われてる」
「それでは普通の人は確認が出来ないよ」

1,000歳を過ぎてるシルでさえ到達が出来てないからね。

「運以外は子供のうちに確認が出来るし問題ない」

確かに運以外はそうかもしれないね。でも……、

「そうなると隠した意味がなくなるよ」
「運さえ分からなければ問題なかったからな。特に信仰されてたのが運神で、運のステータスだけはレベルが上がっても変わらない。そのため運が高いということは運神から寵愛されてると言われてた」

「さぁ、ティナちゃん。ここにギルドカードを翳して」

ハルトさんに言われた所を見ると大きな水晶が設置してあった。言われた通りにギルドカードを翳すが特に何が起きるわけではなかった。

「これでここのダンジョン制覇したとギルドカードに記録されたよ。後は帰るだけだよ」
「初級ダンジョン制覇したので、ここで皆さんとはお別れですか?」
「いや。マスターがティナちゃんから離れることはないから僕たちも一緒にいるよ」
「大丈夫なのですか?クランのお仕事とかもあるのでは?」
「他の幹部に任せてるから問題ないよ。幹部全員がクランカード持っているからマスターもいなくても大丈夫」

大丈夫ならいいけど。

帰りは帰還の魔法陣で1層まで戻る。帰還の魔法陣は最下層にしかなく片道使用になってる。

そのまま街に戻り冒険者ギルドへと行った。

「初級ダンジョン制覇おめでとうございます。条件クリアしましてCランクとなります。Bランクまで残り82,467ポイント、そして冒険者学園の卒業となります」

うわー。8万以上もどうやって貯めていくの?望んではいけないけど魔物の氾濫を望んでしまう。

「ポイント貯めるの大変ですね」
「ふふ。ティナちゃん大変なのは今だけよ。上位のランクになればなるほど条件の方がキツくなるのよ」
「そうなんですか?」
「私もジョンもユーグもポイントは揃ってるのよ。でも条件がクリア出来なくてランクが上がらないのよ」

ジョンさんもユーグさんも頷いていた。

「ティナの場合は条件の方が簡単だ」
「マスター、本当に?」
「ああ」
「因みにどんな条件か伺っても差し支えありませんか?」

私の質問にハルトさんが答えてくれる。

「AランクになるにはBランク以下のメンバーで中級ダンジョン制覇。Sランクになるには初心者育成と物理、魔法の4つのステータスのうち1つが10,000超え。SSランクになるにはSランク以下のメンバーで聖級ダンジョン制覇。SSSランクになるのに物理、魔法の4つのステータスのうち2つが50,000超えと職業に適したスキルが10レベルであることだよ」

うん。ステータスは既にクリアしてるね。スキルレベルも今のままいけば問題ない。後はダンジョン制覇だけだ。

「問題はダンジョンだな」
「シル、ダンジョン制覇ってそれほど難しいの?」

シルは難しい顔をしてる。

「……俺が入れない。Sランクになれないと中央で住めないからAランクになるための中級ダンジョン制覇は我慢するが、Sランクでランク止めような」

出来ればSSSランクになりたいよ!  私には古代竜の独占欲が立ち聳えてるのね。

「遠くに離れてても顔を見て話せる魔道具を造るよ。そうすれば寂しくないでしょう?」

スマホを作ればいい。詳しい構造は知らないけど、ここは異世界で魔法がある。魔力を使えば出来るはずだ。

「触れられないではないか。ティナは平気なのか? 俺と一緒でなくても」

超絶イケメンが落ち込んでる。落ち込んでいてもカッコイイけどね!

「私も寂しいよ。でもね、会えない時が愛を育てるって言うし、最短で戻れるよう努力するよ」

だから元気になってと頬にキスをする。私からキスするのは珍しいためシルも笑顔になった。

「ティナちゃんって大人っぽいところがあるね」

それはねミーアさん、私には前世の記憶があるからなのよ。

心の中で返事をし、顔では笑って誤魔化した。

ドロップ品を素材買取カウンターで売って拠点に帰る。まだ時間も早いし、早速魔道具造りをしてみた。神通販を起動させると、オススメにスマホの材料に必要そうなのがあった。毎回思ってたけど、オススメってリアルタイムで欲しいって思った物が出てくる。リュヌ様に見られていたりするのかしら? それはかなり恥ずかしいかもしれない。

魔力を込めて造ってみると出来上がったのは、前世のスマホそっくりなもの。

「出来た!」

スマホを掲げて喜んでると、シルに取られた。

「これは?」
「さっき言っていた通信機器だよ」

もう1台造り、画面をタップしてみるが動かない。どうやって使うのかスマホを弄ってみた。スマホの裏側に魔石が2つ嵌め込まれていて、1つが空の状態だった。そこに魔力を流してみる。するとスマホが起動した。

ーー魔力登録しました。

出てきた画面に納得する。魔石に魔力を流して登録が必要だったのね。

シルも私を真似て登録してた。

アプリは時計、カレンダー、電話、カメラ、RINE、ゲームがある。電話が出来るか確認するため電話アプリを開く。登録のところを押した。

ーー相手の魔力を登録してください。

「シル、ここに魔力を流してみて」

魔力を魔石に流してもらう。

ーーシルヴェストルの魔力を登録しました。

魔力だけで名前も登録されるのね。顔写真も既に登録されてるし前世のよりハイテクだったりする?

早速、電話してみようと通話をタップした。

ーー相手にこちらが登録されてませんので通話できません。

と表示が出る。片側だけでは駄目なのね。シルが持ってるスマホに私の魔力を登録して再び試してみる。

シルのスマホが鳴り出でもらう。するとスマホから小さなシルの姿が浮かび上がった。

「立体?」

シルのスマホにも私のミニチュアが飛び出している。シルはそれに触れようとしてるけどすり抜けていた。

「触れないが小さなティナが可愛い」

ミニチュアがしゃべってる。ハイテクなものが出来たよ。

「これならば寂しさが和らぐでしょう?」
「そうだな。しかし、これは……現在ある通信機器や魔法手紙より優れている」

魔法手紙とは魔力を頼りに飛んでいく手紙で相手が何処にいても着く。通信機器は見たことがないから分からないが各ギルドに設置されててギルド同士でやり取り可能だ。

「RINEがあるから似たようなことができるよ」

RINEを開きシルにメッセージを送った。

「既読となったが読んだかどうかも分かるのか?」
「うん。相手が見てないと未読ってなるの」
「これを世に出すつもりは?」

そこまで考えてなかったな。

「これを皆の分を造ってたら冒険する時間がなくなりそう」

それは嫌だなと顔を歪めた。

「魔道具のレシピを錬金術ギルドに売って、売り上げの何%かもらう手段もある」

レシピか。あるのかなって神通販を見たらオススメにあった。普及させていいってことだね。レシピを買ってシルに見せると眉間に皺を寄せた。

「これは難しい手法だな。これを造れる錬金術師は1人か2人だろう」

正規の方法だと、そんな感じなんだね。

「どうする?」
「1人でも造れる人がいるならば売ろう。これは色々と助かるものだ。例えば窮地に陥った冒険者が救援を求めることが出来る。今までどこで行方不明になったか分からない者が沢山いたが、それが減ればいいことだ」

そこまで考えてなかった。ただ前世にあって便利で、条件クリアのダンジョン制覇のために作っただけだ。

「これだけのものだから、手に入れられるのは高位ランク者になるだろうがな」

高価な魔道具になるのね。前世みたいに殆どの人が持ってるなんてことは長い年月を掛けないと無理なのかもしれない。

その後は他のアプリを確認して終わった。ゲームアプリはこちらのボードゲームが2種とRPGの合計3つがあった。ボードゲームは魔力登録した人との対戦が可能になってる。シルと勝負してみたが全敗だった。

【名前】ティナ
【年齢】5歳
【レベル】464
【体力】474
【魔力】∞
【物理攻撃】92
【物理防御】92
【魔法攻撃】46,400,000
【魔法防御】46,400,000
【属性】全属性
【スキル】全属性魔法Lv6、鑑定Lv5、無限収納、マップ
【ユニークスキル】神通販、経験値10,000倍、必要経験値1/100



錬金術ギルドにレシピを売りに来た。シルの他に交渉事に強いハルトさんも同行している。

「レシピを売りに来た。出来れば中央の人を呼んでもらいたい」
「それほどの物なのですか?」

受付けのお兄さんの質問にシルが肯定した。

「通信に関する魔道具だ」

シルがスマホを取り出し、私に電話してきた。私とシルのやり取りに受付けのお兄さんは言葉を失ってる。

「こういう物ですので中央の方をと我がマスターは申してます」

ハルトさんが促すと受付けのお兄さんは慌てて奥に行った。暫くすると戻ってきて部屋へと案内される。

「中央の人は直ぐに来れるのですか?」
「中央は各ギルドに転移の魔法陣を施しているから問題ないよ。僕達もランロワには転移の魔法陣で来たんだからね」

ギルド職員でなくてもSランク以上であれば申請してお金を払えば使えると教えてもらった。

暫くすると50代くらいの男の人がやってくる。その人は向かいのソファーに座った。

「中央の錬金術ギルドのマスターをしているフェルディナンドだ」

うわ!1番お偉い人が来ちゃったよ。

「虹色の雫のマスターのシルヴェストルだ」
「虹色の雫の幹部をしてるSSSランクのハルトです」
「ティナと申します」

こちらも挨拶してから本題へと入る。

「そちらの子供が通信の魔道具を造ったと?」

5歳だから疑われてるのかな。

シルがスマホを出してさっきと同じようにした。フェルディナンドさんは目を見開いてる。

「こ、これは、世紀の大発明ではないか!?」

フェルディナンドさんは私からスマホをひったくると隅々まで調べ始めた。

「分からん! 何がどうなってるのかさっぱりだ!」

私も詳しい構造は知らないよ。

「ギルドマスターの貴方にさえ理解できない物を売りに来たのですよ。いくらで?」

ハルトさんに言われてフェルディナンドさんが金額を提示するがハルトさんが首を振った。

「これはこの先、何千年と使われていくものですよ」
「ぐぬぬ……」

フェルディナンドさんは歯軋りしながら金額を上げていく。それに何度もハルトさんが拒絶した。

「これ以上は……」
「そうですね。これくらいが妥当でしょう」

ハルトさんが満面の笑みを浮かべてる。ちょっとフェルディナンドさんが気の毒だ。今の金額に、この先も売り上げの2割が自動的にはいってくる。

必要な書類を記入する。商品名にはスマホと記入したがそれでは何の魔道具か分からないと言われ、通信機器(持ち運び可能)となった。

「次はポイントだな。どうするべきか……」

ポイントも貰えるのか。

「この際、SSSランクにしてしまうか? 君の納品履歴書を見たが、全てが最高品質ランクだったし問題もないだろう」

多分、素材さえあれば作れないものはない。素材も神通販にあるから無問題だ。

SSSランクになり中央での住民権を手に入れた。

「これで中央で住めるね」
「だが、暫くはランロワにいるぞ。中央は上級ダンジョン以上しかないし、冒険者ランクS以上にならないと聖級ダンジョン以上には入れないからな」

その辺は任せる。どうしたらポイントが貯まりやすいのか知ってるのはシルたちだから。

錬金術ギルドを出て街をぶらつく。私は抱っこ状態だけどね。

「ザンドの食事処に行ってみるか?」
「うん! 行きたい!」

連れて来られたのはお洒落なお店だった。行列が出来ていて、そこに並んでると会長さんがやってくる。

「ティナ様、いらしてくださったのですね。さぁ、こちらへ」
「あの、順番が……」
「ティナ様は特別です」

特別な客のために必ず数席は空けてるものらしい。案内されたのは個室でゆったりとしている。メニューを渡され見ると、商品名だけで金額は書いてなかった。

高級なものには金額がついてないのが普通になってる。私にとって安いと認識してるサンドウィッチがここでは高級料理となっていた。

出てきた料理は見た目もよく美味しかった。

会計はシルがしようとしたが、会長さんが拒み無料だった。

「他のザンド商会の店をまわってみるか?」
「そうだね。ご馳走になりっぱなしは悪いもんね」

シルは女の子が好みそうなアクセサリー店に連れてきてくれた。男の人は入りにくそうな雰囲気なのに平然としてる。ハルトさんも普通に入ってきた。イケメンだから場にそぐわないってことはない。

可愛いものが沢山ある中で腕輪に目がいってしまった。

「腕輪は造らせてるからな」

シルを凝視する。腕輪は婚約の意味がある。人族の風習に合わせてくれるのが嬉しくてシルの首に抱きついた。

「シルの腕輪は私が造るからね!」

特別な腕輪を造ろう!

アクセサリー店でリボンをいくつか買い、服が売ってる店では私の服をオーダーメイドした。直ぐに成長するから既製品で良かったのに、シルが譲らなかった。

拠点に戻ると頭を抱えたミーアさんがいる。

「ミーアさん、どうしたのですか?」
「ちょっと問題事がねー」

もう! と声を荒らげた後、私に甘いものをねだってきた。疲れてる時は甘いものに限るよね。沢山のデザートをミーアさんに出した。

「で? 何があった?」
「えーっとね……」

ミーアさんが私を見る。私に関したことなのかな?

「サーシャと関係のあったCランクの連中が文句を言ってるんだ」

言い淀むミーアさんの代わりにジョンさんが告げた。

まさか、ここにきてサーシャさん関係とは……。

「サーシャは元々そうするつもりでいたから、ティナは関係ないだろう」
「そう説明したけど分かってくれないのよ!」
「サーシャさんはどうなったのですか?」

ここに来てから1度も会ってないということはランロワにいないのだろうが。

「辺鄙なところに飛ばした。ちょうどそこにはサーシャ好みの男がいないからな」
「クランでサーシャさんはどんな感じなのですか?」

そう聞いたところミーアさんが徐に嫌な顔をした。

「見た目の良い男以外はゴミだと思ってる女よ! 私なんて1度パーティ組んだ時なんて後ろから魔法を当てられそうになったんだからね! それも当たれば大怪我するような魔法よ!」

それは卑怯だな。仲間に後ろからなんて有り得ないよ。私が嫌われてた理由はカッコイイ男ではなかったからなのかな?

「それで問題にはならなかったのですか?」
「勿論、報告したわよ! でもサーシャは「悪気はないんですぅ。たまたまミーアがそこにいただけなんですぅ」って涙を流したのよ! そんなの嘘泣きに決まってるでしょう? それなのに!!」

ミーアさんはテーブルをバンバン叩いた。

男は女の涙に弱いって言うからね。男の多い、このクランでは通じてしまうかもしれないね。

「男の人はそれほどにサーシャさんに惚れているのですか?」

全員の男が惚れるほどに見た目が良かったかといえばそうでもない。ミーアさんのが断然、魅力がある。

「魔術師だからねー」

なんの関係が? 魔術師は希少だから? でもそれで惚れた腫れたはないよね。

「ティナちゃんはまだ分かんないよね。あのね、魔力量が多いと……」

その後をミーアさんは私の耳元で囁いた。意味を理解した途端、顔が真っ赤になる。何それ? 何のエロゲーなの?

「あら? ティナちゃんって耳年増?」

普通の5歳児なら意味も分からないよね。話を逸らそう!

「それでサーシャさんと関係した男の人たちは何と言ってるのですか?」
「優秀な魔術師を飛ばして、子供をここに置くのがおかしいと言ってる」
「ティナちゃんの方が優秀よ!」

ジョンさんが教えてくれて、ミーアさんが味方してくれる。

「それならば1度、ティナちゃんの実力を見せれば済むね」

ハルトさんが解決策を述べた。

「そうね! それがいいわ! サーシャよりティナちゃんの方が優秀な魔術師だと知ったら文句も言えなくなるわ!」

ミーアさんはノリノリだ。

「それでどうやって実力をみせる?」
「護衛依頼を受けましょう。Cランク相当の護衛ならば途中で魔物なり盗賊なりに逢うでしょう」

ユーグさんの問にハルトさんがサクサクと話を進めていく。



文句を言ってた人達との護衛になった。今回、護衛するのは5台の商隊でBランク商会になる。私たちの他に2つのCランクパーティが担当する。1日500ポイントで5,000ギル貰える。往復護衛で片道5日だ。Eランクの時と比べてポイントも報酬も格段に上がった。高くないとダンジョンに篭って護衛する人がいなくなるのかもしれないからかな。

「先頭は虹色の雫に任せていいかい?」
「おう! 任せろ! 足手纏いはいるがな」

チラッと私を見て言った。そんな事は気にせずパーティの後方に陣取る。

「小さいのに大丈夫か?着いてこれるか?」
「浮いて移動出来るので問題ありません」

別パーティの人が心配してくれた。大丈夫だと実際に浮いてみせる。

「敵が出た時、間違えて魔法当てるんじゃねぇぞ」
「そのような事はありえませんのでご安心を」

サーシャさんじゃないんだから味方に魔法を当てようなんて少しも思ってない。いくら疎まれてるからってそんなことしたら私を信頼してくれてる人たちの信用を無くす。

野営地間近で魔物が出現した。出てきたのはゴーレムだ。

「やべっ!Aランク以上推奨だぞ」

数は3体で1体ずつ担当することになった。魔法を放とうとしたところミーアさんに止められる。

「ふふ。ティナちゃんなしで倒してみせなさい」
「そんな餓鬼は必要ない!」

そう言ってゴーレムに攻撃してるが通用してない。ゴーレムは魔石を破壊しないと復活する。首を落としても腕を落としても直ぐに治った。だんだんと押されぎみになり焦ってきてる。

「す、すみません。俺達には無理です。援護を……」

私以外のメンバーに援護を求める声を掛けてきた。

「ティナちゃん出番よ」
「そんな餓鬼には……」

ミーアさんから漸く攻撃の許可が出る。倒すことは楽だ。ただ魔石を砕くのは勿体ない。

「失敗したらごめんなさい。魔石以外を消す【闇】」

前置きしてから魔法を試してみた。思惑通り魔石だけを残して他は闇に飲まれる。

「シル! ゴーレムの魔石」

成功したことが嬉しくて魔石を手にシルに見せた。

「ゴーレムの魔石はダンジョン以外では取れないからいい値段になるぞ」

魔石を無限収納にしまってホクホクしてると、他のパーティから援護要請が入る。

「魔石はこちらの物になるがいいかしら?」
「構いません」
「ティナちゃん、よろしくね」

残り2体にも闇魔法を使い魔石以外を消した。

「流石は虹色の雫の魔術師だ」

他のパーティの人達は褒めてくれたが、うちのCランクメンバーは苦虫を噛み潰したような表情をしてる。

そのまま野営地に到着して魔法テントを張った。

「テントまで用意してもらうなんてズリィな」

Cランクメンバーがニヤついた顔で言ってきた。少しでも攻める箇所を探してるようだ。

「貴方たち何を見てるの?この魔法テントはティナちゃんのものよ。マスターが逆にお世話になってるのよ」
「ま、魔法テントだと!? 嘘だろ」

いえ、本当だよ。

「何で餓鬼が魔法テントなんて持っていやがる」
「神様の御加護です」
「は? 加護? 何だそれは?」

神様の加護も知らないのか。

「それよこせ!」
「貴様らは強盗か?」

シルの睨みにCランクメンバーは震えた。

「これ以上、言い掛かりをつけるならばクランから出てけ」
「そうだな。正当な苦情なら受け付けるが、イチャモンつけるならクランに必要ないな」
「女に現を抜かして冒険者として駄目になったんじゃないのか」

シルの他にジョンさんユーグさんもクランから出ていってもいいと言う。幹部である彼らにいらないと言われたCランクメンバーは口を噤んだ。

見張り番は1番最後になり、夕食を食べてさっさと魔法テントに入る。

【名前】ティナ
【年齢】5歳
【レベル】465
【体力】475
【魔力】∞
【物理攻撃】93
【物理防御】93
【魔法攻撃】46,500,000
【魔法防御】46,500,000
【属性】全属性
【スキル】全属性魔法Lv6、鑑定Lv5、無限収納、マップ
【ユニークスキル】神通販、経験値10,000倍、必要経験値1/100

寝てると魔力探知が引っ掛かり外に出る。文句は言っててもCランク、彼らも魔物に気が付いたようだ。

出てきたのはBランク討伐対象のビッグベアだった。

「今度はBランクだと!?」
「ここにはこんな強いの出ないぞ」

今度は止められなかったので最初から討伐に加わる。ビッグベアはあっという間に倒し終わった。解体は自分が倒した分だけする。

解体が終わり、再び仮眠をとる。その後の見張りでは何事もなく終わった。

だけど、翌日からも出てくる魔物はBランクかAランクの討伐対象ばっかりだった。そのため私は大活躍した。

街につき商会の人とは別れて、冒険者ギルドに行く。

「魔物がBランクかAランクばっかりだったので生態調査することを勧めます」

ハルトさんが受付けの人に要望した。私や他のメンバーやパーティのカードから読み取った情報にも間違いないと判断される。

「では暫く街道を封鎖します」

上位ランクの人たちの生態調査が終わるまで通れなくなった。

「護衛はどうなるの?」
「ここで終わりだ」

往復護衛だったものが片道護衛に変更される。

「護衛依頼達成で2,500ポイント、25,000ギルになります。残り79,967ポイント、冒険者学園の卒業でBランクとなります」

素材買取カウンターで素材を売る。

「パーティに等分でお願いします」
「餓鬼……」

Cランクメンバーたちが感動して涙を流してた。大したことしてないのに、ここまで感動するなんて彼ら貧乏なのかな。

「Cランクって結構キツイからね」
「そうなのですか?ハルトさん」
「武器や防具の購入に手入れも、ポーションの用意も自力でしてもらってるからね」

うちのクランに入れば低ランクであれば恩恵を受けられるが、Dランクになればなくなる。そうなることで出費が嵩むようだ。私のようにお金が貯まる一方になるのは珍しいのだろう。

「さて、封鎖される前に戻るぞ」

シルの言葉に戻ろうとするがCランクメンバーが待ったをかける。

「俺たちはどうすれば……」
「Cランクなんだから自分で考えて行動しなさい」

ミーアさんが叱責した。彼らをおいて私たちは街の外に出る。

「待ってください! 俺たちも連れて行ってください」

Cランクメンバーが走って追いかけてきた。

「……ティナちゃん、いい?」
「私は構いませんよ」

ハルトさんの問に大丈夫だと返す。

「これはティナちゃんの慈悲だよ。ゆめゆめ忘れないように」

ハルトさんがCランクメンバーに念を押した。私は魔導馬車を無限収納から取り出す。Cランクメンバーは中に入ると驚いて固まった。

「貴方たちは、そこらへんに座ってなさい」

ミーアさんが床を指す。彼らは大人しく床に座った。シルは私を抱っこしソファーに座る。全員が着席したところでハルトさんが魔導馬車を動かした。

Cランクメンバーは「魔導馬車、初めてだ」「揺れがない」と感嘆の声を漏らしてる。

夜も休み無しの行軍で2日でランロワに戻ってきた。


【名前】ティナ
【年齢】5歳
【レベル】467
【体力】477
【魔力】∞
【物理攻撃】93
【物理防御】93
【魔法攻撃】46,700,000
【魔法防御】46,700,000
【属性】全属性
【スキル】全属性魔法Lv6、鑑定Lv5、無限収納、マップ
【ユニークスキル】神通販、経験値10,000倍、必要経験値1/100
しおりを挟む
感想 163

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」  リーリエは喜んだ。 「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」  もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

処理中です...