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7歳から10歳くらいの少年3人とその後ろに3人の男性がいる。
「この子たちがEランクで後ろにいるのが教育しているAランクメンバーよ」
ミーアさんが教えてくれた。この人たちがわざわざ私のためにランロワに来てくれたのね。
「Eランクの剣術士レオ10歳だ。このメンバーのリーダーをしている」
「レオを教育しているカイルだ」
溌剌とした元気の良い少年が挨拶してくれた。カイルさんは寡黙な感じがする。
「Eランク槍術士ロメロ7歳だよ。よろしくね」
「ロメロの教育者ソルトだ。ロメロ共々よろしくな」
ロメロくんはメンバーの中では1番背が低い。自身より少し長い槍を持っていた。ソルトさんは逆に背が高くて大きな槍を装備している。
「Eランク魔術師のアーク8歳です。火魔法が1番得意で、他に風魔法と闇魔法を使います」
「アークの指導者のサイガと申します」
アークくんはペコりとお辞儀してくれた。サイガさんは、そんなアークくんの頭を撫でている。仲の良さが見てとれた。
「今回ティナちゃんは治癒魔術師として、このパーティに参加するのよ」
魔術師はアークくんがいるものね。
「ティナと申します。5歳になります。治癒魔術の他にも攻撃魔術、支援魔法も得意としてます。この度は私のためにランロワに来ていただきありがとうございます」
「ランロワには来たかったから大丈夫だぞ! それにそんな堅苦しい喋り方じゃなくてタメ口でいいからな!」
レオくんがそう言った瞬間、Eランクの少年たちが失禁し教育者のAランクメンバーが震えだした。
え? 何事?
「マ、マスター、威圧を抑えてください」
威圧? シルを見ると怖い顔をしていた。何に怒ってるの?
「ティナが敬語を使わないで話すのは俺に対してだけだ」
ああー……。古代竜の独占欲ね。
「大丈夫。私がこの口調で話すのはシルだけだから。他の誰かに何を言われても使わないから安心して」
ここまで来てくれたのに怯えさすのは可哀想だ。シルの怒りが収まるように甘えた声で宥める。
「皆もそれでいいですよね?」
威圧を向けられてる全員がこくこくと頷いた。それによってシルの威圧が解かれる。粗相してしまった少年たちにサイガさんがクリーンを掛けて綺麗にしてあげた。
落ち着いたところでロメロくんがミーアさんの傍に行きミーアさんの手を取る。
どうしたのか? 皆の視線が集まった。
「綺麗なお姉さん、今宵僕と素晴らしい夜を過ごしませんか?」
な、何を言ってるの? 頬が熱くなった。
「あら、まあ! ふふ。そうねー、後5年経ったら考えてもいいわよ。それにしても誰に教わったの?」
「ソルトさんが独り身の女性は必ず口説くのが礼儀だと教わりました」
ミーアさん、5年経ってもまだ12歳よ! 12歳の子を食べる気でいるの?
ソルトさんもなんて事を教えてるの!? ロメロくんをナンパ師にでもするつもり?
ソルトさんはよく出来ましたとロメロくんの頭を撫でていた。ミーアさんも偉いわと褒めてる。他の皆も微笑ましい感じに見ていた。
もしかして私の常識の方がおかしいのかしら? 貴族も女性を見たら褒めるのがマナーだし、口説くのもそう変わらないのかもしれないわね。
「お仕事のお話をしようか」
ハルトさんが話題を変えた。皆の表情が真剣なものになる。
「10日後、Cランク商会のザギンバ商会の護衛依頼を持ってきたからね。まだ他にどこのパーティが護衛に付くかは決まってないけど、うちを合わせて3つの護衛がつくよ。マンハールまでの往復護衛で片道2日間の行程になる。1人当たり1日ポイント10ポイントで100ギルの報酬で失敗時は80ポイントの減点800ギルの違約金が発生する。各自、準備を怠らないように」
「「「はい!」」」
こうやってクランが依頼を受けてくることがあるのね。10日間の猶予もあるし準備は万端に備えられる。
「マンハールまでの過程で出現する魔物はゴブリンくらいだけど、巣が近くにいくつもあるから気を抜かないようにね」
最後に要注意事項を言われて解散となった。少年たちは1階の大部屋で寝泊まりするらしい。Aランクメンバーは2階の個室。因みに私が過ごしてる3階は幹部専用階で各部屋にトイレとお風呂がある。本来であれば私も1階の大部屋での生活に共有風呂に入るのが通常であったが、シルの番というこでシルと共に過ごしてる。
ハルトさんに後で確認したところ拠点での生活は強制でないのでお金に余裕ある人は宿に泊まったり、家を買ったりしてるそうだ。シルも中央には持ち家があるって教えてくれた。
◆
部屋でポーション作りをしてるとハルトさんがやってきた。
「ティナちゃん、ザンド商会の会長さんが2日後に会いに来ても大丈夫かの先触れが来たんだけど、どうする?」
「大丈夫です」
「そのように返事しておくね」
返事の手紙まで書いてくれるのか。本題に入るまでの季語やら挨拶文が面倒だからとても助かる。ハルトさんが出ていきシルと2人きりになる。
「ねぇ、シル」
「どうした?」
「ザンド商会の会長さんのお名前って何か知ってる?」
今さら本人に尋ねるのは気が引ける。
「会長の名前はザンドで第1夫人がマーラだ」
「そのままなんだ」
この世界は多重婚が可能であり一夫多妻はよくあることで珍しいことでもない。因みに同性婚も可能な世界である。
「ザンド商会はザンドが1代でAランクまでの仕上げた商会で、あと一息でSランクになる」
「詳しいね」
ザンド商会の護衛もやってるし色々と調べてるのかな。褒めたことで気分が良くなったのか更に教えてくれた。
「ザンドは男爵家の5男で10歳の時に商会ギルドに入った。最初から一等地で商売を初めて、周りからは直ぐに潰れると思われてたがザンドの審美眼は確かなもので、みるみるうちに商会をでかくしていった。宿屋から食事処、服屋や雑貨、魔道具店と幅広く手に掛けてる」
貴族でも三男以降は家を出なくてはならない。成人の15歳までには自立しないといけない。国の機関に仕える人がほとんどだが、ザンドさんのように商人などギルドに登録する人もいる。ギルドに登録する殆どの人が子供のうちに入り成人するまでに力をつけていく。
「凄い人なんだね」
シルがムスッとした。
「俺のが凄い」
「クスッ。そうだね。シルはもの凄く強くてかっこいい」
「俺の番。ティナ、可愛いよ」
蕩けた瞳で甘い声で囁かれては自然と顔が赤くなった。それを隠すようにポーション作りを再開する。
「ティナ、今作ってるのは上級ポーションか?」
「そう。高ランクの人は下級ポーションでは不便でしょう?」
下級ポーションがぶ飲みなんて体にも良くない。
「クランのことを考えてくれてるの?」
「うん。お世話になってるから何かでお礼したいの」
「皆はティナの食事目当てだよ」
それは知ってる。だけど神通販だし自分で何かしてあげたい。まぁ錬金の仕方もリュヌ様の御加護みたいだけど。
「半分は売って錬金術のランクも上げようね」
「別に錬金術のランクは低くても構わないよ」
元々レシピ売るためだけに登録したようなものだしね。
「ランクは上げておいた方がいいよ」
「そうなの?」
「ランクが低いと馬鹿にされ、余計な揉め事にも巻き込まれやすいからね」
それは嫌だな。私は平穏に暮らしたい。そのためにはランク上げるしかないのか。まぁ錬金術ギルドは指名依頼が断れるし、ポーションだけ納めてればランク上がるからいいかな。
◆
2日後、ザンド商会の会長さんが訪ねてきた。
「ティナ様ご無沙汰しております」
「こちらこそ。本日はわざわざお越し頂きありがとうございます」
お茶はハルトさんがいれてくれる。お菓子は神通販で買ったクッキーを出した。
「これも美味しいですな」
「喜んで頂けて何よりです」
お茶を楽しんでもらい、それから本題に入る。
「この度、ティナ様に売って頂いたレシピの料理を販売するに至りまして挨拶に参りました」
これから売りますよって報告しに来てくれたのか。
「それは楽しみです。是非とも伺わせて頂きますね」
「お待ちしております。それで他にも売っても良いというレシピがありましたらお願いしたいのですが」
まだ売れてないのに次に行くの? こういうところが大きくなっていった要因なのかな。
何がいいかな? 悩んでるとシルがぼそりと唐揚げと言った。
「揚げ物はいかがでしょうか?」
「揚げ物ですか?」
焼くか茹でるしかない世界で揚げるという料理方法がない。会長さんの前に唐揚げ、とんかつ、ポテトフライなどを出した。試食してもらうのが1番分かりやすい。会長さんは1口、食べると目を輝かせて次々と口にいれていった。
「私のような年寄りには少し重いですが、若者であれば非常に好まれますな」
「クランメンバーにも大人気ですよ」
レシピの金額を提示される。その金額をハルトさんが確認した。
「流石はザンド商会ですね。適切な額です」
高いなって思ってたんだけど違うんだね。これが妥当なのか。
「ほほほ。売れるものには大金でも支払いますよ」
子供の私でも安く買い叩こうとしない姿勢は好感がもてる。
お金を錬金術ギルドのカードでやり取りし、会長さんは気分良く帰っていった。
◆
上級ポーションをそれぞれ200個作って、クランに100個ずつ売って残りを錬金術ギルドに納品した。上級ヒールポーションが1つ200ポイント2,000ギルで上級マナポーションが1つ300ポイント3,000ギルになった。一気にCランクになって残り60,840ポイントでBランクになる。
錬金術の方が早くSランクになるかも。
「錬金術の方がランク上がりやすいね」
「ティナの場合はな。普通は下級ヒールポーションを1日で作れる個数は10個がせいぜいだ。上級になれば何日もかけて1つ作る」
そんなに違うのか。素材は神通販で買うし、後は魔力で簡単に作ってる。1つ作るのに1分と掛からない。
ハルトさんも驚いていたし、錬金術ギルドのお兄さんも目を剥いていたわけだ。
これが露見すると身の危険が……。絶対に結界魔法を解かない。そしてシルから離れない。そう心に強く誓った。
冒険者の方も薬草集めもして残り415ポイントでDランクになる。皆に助けてもらいながらだけど順調にポイントが貯まってることに嬉しくなった。
◆
今日から護衛依頼が始まる。前回が最悪だったから少し気が重い。マンハールまではゴブリンしか出ないためなのか今回もEランクパーティのみの参加だった。他2パーティが私たちのエンブレムを見て、羨ましいそうな顔をしていた。大クランには、なかなか入れないため、この視線には慣れないといけないのかもしれない。
レオくんたちは、そんな視線を受けて満更でもない様子にしてる。
今回は馬車3台の商隊で私たちは先頭を任された。
1番前にレオくんとロメロくん、その後ろに私とアークくんが並んで進む。
暫くすると魔法探知に魔物が引っかかった。思わず止まってしまい、それに合わせて周りも止まる。
「ティナさん、どうしたのですか?」
アークくんに聞かれたが答えていいものだろうか。止まってしまったのものは仕方ない。素直に言うか。
「魔物が来ます」
その言葉に戦闘態勢に入った。出てきたのはゴブリンが21体ほど。直ぐ様、レオくんとロメロくんが突っ込んでいき、アークくんが魔法を放つ。私は前衛の2人が傷付く度に治癒魔法を使った。
戦闘は終始、こちらの優勢で終わる。後始末をしてるとレオくんが近寄ってくる。
「凄いな、お前! 傷があっという間に治ったぞ!」
治癒魔法とは、そういうものではないの?
「ティナちゃん、普通の低ランクの治癒魔術師は戦闘が終わってから治すからね」
ハルトさんに言われても分からず首を傾げた。
「それでは強敵が現れた時はどうなるのですか?」
怪我を負ったまま戦い続けるの?
「怪我したら一旦、離戦してポーションを飲むんだよ。その方が治りが早いからね。高ランクの治癒魔術師は別だけどね」
「それでは低ランクの治癒魔術師の役割はどうなるのですか?」
ポーションあれば低ランクの治癒魔術師はいらないってことだよね。
「ポーションも限りはあるからね。だから戦闘が終わったら治癒魔術師の出番になるんだよ」
戦闘中はやることがないと。それって暇だな。
「ティナはティナの思うようにすればいい」
「シル、いいの?」
それで迷惑かけることはない?
「構わない」
シルがいいって言うならばいいかな。
後処理が終わって再出発する。その後は魔物や盗賊に会うことなく野営地点に到着した。私たちのパーティは2番目の見張りになった。夕食を終えて仮眠をとる。時間になって目が覚めた。
「大丈夫か?」
「何とか……」
見張りは何事もなく終わり再び眠りにつく。
翌朝も何とか起きて、シルに準備をしてもらう。
「後少し頑張ろうな」
「うん」
シルにぎゅってしてもらって気合いが入った。
その後は魔物にも会わず盗賊にも会わず街に到着する。
「それでは明後日朝7時にお願いします」
商会の人と別れて冒険者ギルドに向かった。採取以外の依頼はなくギルドを出ようとした時、1組の冒険者が慌てて入ってくる。
「魔物の氾濫だ!」
冒険者ギルドが騒然となった。
「Eランク以上の冒険者は討伐に参加してください!Fランク以下は後方支援をお願いします」
受付の人の声で、飲んでる人も立ち上がり武器を手にする。
「シル、私たちも参加?」
「勿論だ」
魔物が来てるという北の城門を出る。魔法探知に数え切れないくらいの魔物が引っかかった。
「【バフ】」
視界に入る全員にバフを掛ける。
「すげー力が沸いてきたぞ!」
「おおー!これならやれるぞ!」
人が多くて前方確認出来ないため、いい高さまで浮かんだ。
前衛の人達は前に行き、後衛の人達は後ろに陣取る。パーティ関係なく人が入り乱れていた。
「ティナ、遠慮せずにやっていいからな」
「シルは前に行かないの?」
「ティナを1人にはしない」
こんな時まで私のことを考えてくれて幸せな気持ちになる。
魔物が見えてきて前衛の人達が飛び出した。私はなるべく後方を狙って魔法を放つ。シルも隣で魔法を使っていた。倒した魔物を無限収納に入れる。
怪我した人は一旦離れ、治してからまた突撃していく。そんな事を続けていたら、空から大軍のワイバーンがやってきた。
「ワイバーンだ!」
「Aランク対象だぞ!」
ワイバーンの登場に周りが慌てる。AランクといってもSランクに近いAランクで、これだけ沢山いるならばSランク以上の対象になるだろう。矢を放ってる人がいるが少しも傷付けることは出来なかった。
「ティナ、ワイバーンを優先に倒すぞ」
シルに言われて魔法を放つ。魔力特化した私の攻撃は通り1撃で倒せた。落ちてくるワイバーンをそのまま無限収納にしまう。シルは風魔法でワイバーンの首を落とし倒してる。そしてそのままマジックボックスにしまっていた。
ワイバーンを倒し終わったところで魔物の氾濫も終える。
「【治癒】」
怪我した人に治癒魔法を掛けた。
「今回の魔物の氾濫の原因はワイバーンだね」
ハルトさんがやってきて告げる。
「何故、ワイバーンが来たのかが問題だがな」
ワイバーンは憤慨してる感じで襲ってきていた。彼らが怒る原因があったということだ。
「そこは冒険者ギルドも調べてるでしょうし、戻りましょう」
メンバー全員が揃ったところでギルドに行く。
「ティナ、魔物の素材は売っていくからな」
魔物の氾濫時の素材は、その地のギルドに売るのが通例だと教わった。今回は街に被害がなかったけど、被害があった場合はその素材を売って街の復興をするみたいだ。
冒険者ギルドの受付はごった返していて行列が出来ている。漸く順番になった時は日も暮れていた。
「ティナ様はEランクですのでそれぞれのポイントが支援魔術師の参加で100ポイント、支援した人数が138人で138ポイント。魔術師としての参加で100ポイント、倒した魔物ゴブリン46体で460ポイント、ハイウルフ25体で1,250ポイント、ワイバーン52体で26,000ポイント。治癒魔術師としての参加で100ポイント、治癒した人数が41人で41ポイントとなります。魔物の氾濫でのポイントは持ち越し可能となりまして27,533ポイントの持ち越しとなります」
魔物の氾濫はポイント持ち越し出来るのか。確かに残り僅かでアップという時に持ち越し出来なかったら魔物の氾濫が起きた時のモチベーション下がるもんね。
しかも1体でポイントが入るから倒したら倒した分だけ貰えるのはいい。それに最初にEランクって付けたからもしかしたらランクが上がったら貰えるポイントも変わったりするのかもしれない。
次にシルが受付にカードを渡した。
「シルヴェストル様、魔物の氾濫に参加いただきありがとうございました」
それだけ言われてカードを返却された。
「ポイントはないの?」
「SSSランクの上はないからな。貢献したと示すだけだ」
そっか。SSSになればポイントないんだ。
ワイバーンは全てが素材となるため、かなりの金額になった。
「それをパーティメンバーに等分して下さい」
「おい! 待て!」
レオくんに止められる。何がおかしいのと首を傾げた。
「わ、分かった。ありがたくもらう。但し! 1/6ずつだ! お前は3人分の働きをしたんだからな! 3/6がお前の取り分だ!」
お金には困ってないし1/4でも構わないんだけどな。まぁここが落とし所かな。
「ティナちゃん、ありがとうね。これで強い武器が買える」
ロメロくんがやった!と喜んでる。それをソルトさんが止めた。
「ロメロは、まだ成長中だから強い武器や防具は駄目だ」
今買ってもすぐに使えなくなったら勿体無いね。落ち込んでしまったロメロくんにソルトさんが提案する。
「代わりに将来でも使える魔道具を買おうな」
「はい!」
「よし! ランロワに戻ったら魔道具店に行こう」
ロメロくんは笑顔になり嬉しそうにしていた。
「ティナも何か買うか?」
「んー。欲しいものがないの」
私も何か買ってみたいが欲しいものがないし、神通販があるからそこで購入すればいい。お金は貯まっていく一方だ。
【名前】ティナ
【年齢】5歳
【レベル】458
【体力】468
【魔力】∞
【物理攻撃】91
【物理防御】91
【魔法攻撃】45,800,000
【魔法防御】45,800,000
【属性】全属性
【スキル】全属性魔法Lv5、鑑定Lv5、無限収納、マップ
【ユニークスキル】神通販、経験値10,000倍、必要経験値1/100
ワイバーンが強かったからか100以上もレベルが上がってる。最近、上がり幅が低くなってたから嬉しいな。
帰りの護衛は何事もなく終えることが出来た。
誰にも絡まれることなく護衛依頼をこなしたのは初めてだ。
「ティナ様、魔物の氾濫の討伐お疲れ様でした。残りの護衛2件でDランクとなります」
「優先的に護衛を回してもらってもいいかな?」
「勿論です」
ハルトさんが要望すると当然とばかりに受付のお姉さんが答えた。
「今回の魔物の氾濫なのですが、ワイバーンの卵を盗んだ人がいたため起きたものだと報告が来ました」
ワイバーンは集団で子育てする習慣があり、卵を何より大事にしている。それを盗めば襲撃にあうのも納得だ。他の魔物はワイバーンの怒りに逃げるようにして街に来たんだろう。卵は闇市場で売るつもりだったんだろうが、どうやって盗んだのだろうか。
「それで盗った人やワイバーンの卵はどうなるのですか?」
「盗んだ人は犯罪者奴隷となり卵は国の竜騎士に預けられることとなりました」
犯罪者奴隷になれば人権はなくなり一生解放されることはなく生涯を終える。竜騎士はドラゴンを懐け飼育し、竜に乗って戦う組織でそこにはワイバーンもいる。孵す技術もあるため無事に産まれてくるだろう。
◆
私が後2件でランクが上がるということを知ったザンド商会が護衛依頼を出してくれて1件解決して、残り1件も無事に終えることが出来た。
「ティナ様Dランクおめでとうございます。Cランクになるための10,000ポイントは既にクリアしており、17,533ポイントが持ち越しとなります。初級ダンジョン制覇でCランクとなります」
ダンジョンはそれぞれ初回のクリアで初級100ポイント、2回目以降10ポイント。
中級ダンジョンで初回1,000ポイント、2回目以降100ポイント。
上級ダンジョンで初回10,000ポイント、2回目以降1,000ポイント。
聖級ダンジョンで初回100,000ポイント、2回目以降10,000ポイント。
神級ダンジョンで初回1,000,000ポイント、2回目以降100,000ポイント貰える。
ここからは殆どダンジョンに潜っていればポイントは増え続ける。後は条件をクリアするだけだ。
◆
「パーティ組んでくれてありがとうございました」
レオくんたちにお礼を伝える。Dランクになったため私は抜けることになったから。
「おう! こちらこそありがとうな!」
「元の場所にお帰りになる感じですか?」
ここでお別れになるのは、ちょっと寂しいな。
「いや! このままランロワにいることにする。ダンジョンいっぱいあるしな」
初級ダンジョンで6個あるから将来を考えてもランロワにいた方がお得だ。
「それならば、またお会い出来ますね」
同じ拠点にいるし、いつでも会える。
「おう! いつかは追いつくからな!」
「はい。お待ちしております」
彼らのステータスは分からないけど、戦い方をみても安定してるし高ランクの冒険者になれると思う。
いつかまたパーティ組めるといいなぁ。
「この子たちがEランクで後ろにいるのが教育しているAランクメンバーよ」
ミーアさんが教えてくれた。この人たちがわざわざ私のためにランロワに来てくれたのね。
「Eランクの剣術士レオ10歳だ。このメンバーのリーダーをしている」
「レオを教育しているカイルだ」
溌剌とした元気の良い少年が挨拶してくれた。カイルさんは寡黙な感じがする。
「Eランク槍術士ロメロ7歳だよ。よろしくね」
「ロメロの教育者ソルトだ。ロメロ共々よろしくな」
ロメロくんはメンバーの中では1番背が低い。自身より少し長い槍を持っていた。ソルトさんは逆に背が高くて大きな槍を装備している。
「Eランク魔術師のアーク8歳です。火魔法が1番得意で、他に風魔法と闇魔法を使います」
「アークの指導者のサイガと申します」
アークくんはペコりとお辞儀してくれた。サイガさんは、そんなアークくんの頭を撫でている。仲の良さが見てとれた。
「今回ティナちゃんは治癒魔術師として、このパーティに参加するのよ」
魔術師はアークくんがいるものね。
「ティナと申します。5歳になります。治癒魔術の他にも攻撃魔術、支援魔法も得意としてます。この度は私のためにランロワに来ていただきありがとうございます」
「ランロワには来たかったから大丈夫だぞ! それにそんな堅苦しい喋り方じゃなくてタメ口でいいからな!」
レオくんがそう言った瞬間、Eランクの少年たちが失禁し教育者のAランクメンバーが震えだした。
え? 何事?
「マ、マスター、威圧を抑えてください」
威圧? シルを見ると怖い顔をしていた。何に怒ってるの?
「ティナが敬語を使わないで話すのは俺に対してだけだ」
ああー……。古代竜の独占欲ね。
「大丈夫。私がこの口調で話すのはシルだけだから。他の誰かに何を言われても使わないから安心して」
ここまで来てくれたのに怯えさすのは可哀想だ。シルの怒りが収まるように甘えた声で宥める。
「皆もそれでいいですよね?」
威圧を向けられてる全員がこくこくと頷いた。それによってシルの威圧が解かれる。粗相してしまった少年たちにサイガさんがクリーンを掛けて綺麗にしてあげた。
落ち着いたところでロメロくんがミーアさんの傍に行きミーアさんの手を取る。
どうしたのか? 皆の視線が集まった。
「綺麗なお姉さん、今宵僕と素晴らしい夜を過ごしませんか?」
な、何を言ってるの? 頬が熱くなった。
「あら、まあ! ふふ。そうねー、後5年経ったら考えてもいいわよ。それにしても誰に教わったの?」
「ソルトさんが独り身の女性は必ず口説くのが礼儀だと教わりました」
ミーアさん、5年経ってもまだ12歳よ! 12歳の子を食べる気でいるの?
ソルトさんもなんて事を教えてるの!? ロメロくんをナンパ師にでもするつもり?
ソルトさんはよく出来ましたとロメロくんの頭を撫でていた。ミーアさんも偉いわと褒めてる。他の皆も微笑ましい感じに見ていた。
もしかして私の常識の方がおかしいのかしら? 貴族も女性を見たら褒めるのがマナーだし、口説くのもそう変わらないのかもしれないわね。
「お仕事のお話をしようか」
ハルトさんが話題を変えた。皆の表情が真剣なものになる。
「10日後、Cランク商会のザギンバ商会の護衛依頼を持ってきたからね。まだ他にどこのパーティが護衛に付くかは決まってないけど、うちを合わせて3つの護衛がつくよ。マンハールまでの往復護衛で片道2日間の行程になる。1人当たり1日ポイント10ポイントで100ギルの報酬で失敗時は80ポイントの減点800ギルの違約金が発生する。各自、準備を怠らないように」
「「「はい!」」」
こうやってクランが依頼を受けてくることがあるのね。10日間の猶予もあるし準備は万端に備えられる。
「マンハールまでの過程で出現する魔物はゴブリンくらいだけど、巣が近くにいくつもあるから気を抜かないようにね」
最後に要注意事項を言われて解散となった。少年たちは1階の大部屋で寝泊まりするらしい。Aランクメンバーは2階の個室。因みに私が過ごしてる3階は幹部専用階で各部屋にトイレとお風呂がある。本来であれば私も1階の大部屋での生活に共有風呂に入るのが通常であったが、シルの番というこでシルと共に過ごしてる。
ハルトさんに後で確認したところ拠点での生活は強制でないのでお金に余裕ある人は宿に泊まったり、家を買ったりしてるそうだ。シルも中央には持ち家があるって教えてくれた。
◆
部屋でポーション作りをしてるとハルトさんがやってきた。
「ティナちゃん、ザンド商会の会長さんが2日後に会いに来ても大丈夫かの先触れが来たんだけど、どうする?」
「大丈夫です」
「そのように返事しておくね」
返事の手紙まで書いてくれるのか。本題に入るまでの季語やら挨拶文が面倒だからとても助かる。ハルトさんが出ていきシルと2人きりになる。
「ねぇ、シル」
「どうした?」
「ザンド商会の会長さんのお名前って何か知ってる?」
今さら本人に尋ねるのは気が引ける。
「会長の名前はザンドで第1夫人がマーラだ」
「そのままなんだ」
この世界は多重婚が可能であり一夫多妻はよくあることで珍しいことでもない。因みに同性婚も可能な世界である。
「ザンド商会はザンドが1代でAランクまでの仕上げた商会で、あと一息でSランクになる」
「詳しいね」
ザンド商会の護衛もやってるし色々と調べてるのかな。褒めたことで気分が良くなったのか更に教えてくれた。
「ザンドは男爵家の5男で10歳の時に商会ギルドに入った。最初から一等地で商売を初めて、周りからは直ぐに潰れると思われてたがザンドの審美眼は確かなもので、みるみるうちに商会をでかくしていった。宿屋から食事処、服屋や雑貨、魔道具店と幅広く手に掛けてる」
貴族でも三男以降は家を出なくてはならない。成人の15歳までには自立しないといけない。国の機関に仕える人がほとんどだが、ザンドさんのように商人などギルドに登録する人もいる。ギルドに登録する殆どの人が子供のうちに入り成人するまでに力をつけていく。
「凄い人なんだね」
シルがムスッとした。
「俺のが凄い」
「クスッ。そうだね。シルはもの凄く強くてかっこいい」
「俺の番。ティナ、可愛いよ」
蕩けた瞳で甘い声で囁かれては自然と顔が赤くなった。それを隠すようにポーション作りを再開する。
「ティナ、今作ってるのは上級ポーションか?」
「そう。高ランクの人は下級ポーションでは不便でしょう?」
下級ポーションがぶ飲みなんて体にも良くない。
「クランのことを考えてくれてるの?」
「うん。お世話になってるから何かでお礼したいの」
「皆はティナの食事目当てだよ」
それは知ってる。だけど神通販だし自分で何かしてあげたい。まぁ錬金の仕方もリュヌ様の御加護みたいだけど。
「半分は売って錬金術のランクも上げようね」
「別に錬金術のランクは低くても構わないよ」
元々レシピ売るためだけに登録したようなものだしね。
「ランクは上げておいた方がいいよ」
「そうなの?」
「ランクが低いと馬鹿にされ、余計な揉め事にも巻き込まれやすいからね」
それは嫌だな。私は平穏に暮らしたい。そのためにはランク上げるしかないのか。まぁ錬金術ギルドは指名依頼が断れるし、ポーションだけ納めてればランク上がるからいいかな。
◆
2日後、ザンド商会の会長さんが訪ねてきた。
「ティナ様ご無沙汰しております」
「こちらこそ。本日はわざわざお越し頂きありがとうございます」
お茶はハルトさんがいれてくれる。お菓子は神通販で買ったクッキーを出した。
「これも美味しいですな」
「喜んで頂けて何よりです」
お茶を楽しんでもらい、それから本題に入る。
「この度、ティナ様に売って頂いたレシピの料理を販売するに至りまして挨拶に参りました」
これから売りますよって報告しに来てくれたのか。
「それは楽しみです。是非とも伺わせて頂きますね」
「お待ちしております。それで他にも売っても良いというレシピがありましたらお願いしたいのですが」
まだ売れてないのに次に行くの? こういうところが大きくなっていった要因なのかな。
何がいいかな? 悩んでるとシルがぼそりと唐揚げと言った。
「揚げ物はいかがでしょうか?」
「揚げ物ですか?」
焼くか茹でるしかない世界で揚げるという料理方法がない。会長さんの前に唐揚げ、とんかつ、ポテトフライなどを出した。試食してもらうのが1番分かりやすい。会長さんは1口、食べると目を輝かせて次々と口にいれていった。
「私のような年寄りには少し重いですが、若者であれば非常に好まれますな」
「クランメンバーにも大人気ですよ」
レシピの金額を提示される。その金額をハルトさんが確認した。
「流石はザンド商会ですね。適切な額です」
高いなって思ってたんだけど違うんだね。これが妥当なのか。
「ほほほ。売れるものには大金でも支払いますよ」
子供の私でも安く買い叩こうとしない姿勢は好感がもてる。
お金を錬金術ギルドのカードでやり取りし、会長さんは気分良く帰っていった。
◆
上級ポーションをそれぞれ200個作って、クランに100個ずつ売って残りを錬金術ギルドに納品した。上級ヒールポーションが1つ200ポイント2,000ギルで上級マナポーションが1つ300ポイント3,000ギルになった。一気にCランクになって残り60,840ポイントでBランクになる。
錬金術の方が早くSランクになるかも。
「錬金術の方がランク上がりやすいね」
「ティナの場合はな。普通は下級ヒールポーションを1日で作れる個数は10個がせいぜいだ。上級になれば何日もかけて1つ作る」
そんなに違うのか。素材は神通販で買うし、後は魔力で簡単に作ってる。1つ作るのに1分と掛からない。
ハルトさんも驚いていたし、錬金術ギルドのお兄さんも目を剥いていたわけだ。
これが露見すると身の危険が……。絶対に結界魔法を解かない。そしてシルから離れない。そう心に強く誓った。
冒険者の方も薬草集めもして残り415ポイントでDランクになる。皆に助けてもらいながらだけど順調にポイントが貯まってることに嬉しくなった。
◆
今日から護衛依頼が始まる。前回が最悪だったから少し気が重い。マンハールまではゴブリンしか出ないためなのか今回もEランクパーティのみの参加だった。他2パーティが私たちのエンブレムを見て、羨ましいそうな顔をしていた。大クランには、なかなか入れないため、この視線には慣れないといけないのかもしれない。
レオくんたちは、そんな視線を受けて満更でもない様子にしてる。
今回は馬車3台の商隊で私たちは先頭を任された。
1番前にレオくんとロメロくん、その後ろに私とアークくんが並んで進む。
暫くすると魔法探知に魔物が引っかかった。思わず止まってしまい、それに合わせて周りも止まる。
「ティナさん、どうしたのですか?」
アークくんに聞かれたが答えていいものだろうか。止まってしまったのものは仕方ない。素直に言うか。
「魔物が来ます」
その言葉に戦闘態勢に入った。出てきたのはゴブリンが21体ほど。直ぐ様、レオくんとロメロくんが突っ込んでいき、アークくんが魔法を放つ。私は前衛の2人が傷付く度に治癒魔法を使った。
戦闘は終始、こちらの優勢で終わる。後始末をしてるとレオくんが近寄ってくる。
「凄いな、お前! 傷があっという間に治ったぞ!」
治癒魔法とは、そういうものではないの?
「ティナちゃん、普通の低ランクの治癒魔術師は戦闘が終わってから治すからね」
ハルトさんに言われても分からず首を傾げた。
「それでは強敵が現れた時はどうなるのですか?」
怪我を負ったまま戦い続けるの?
「怪我したら一旦、離戦してポーションを飲むんだよ。その方が治りが早いからね。高ランクの治癒魔術師は別だけどね」
「それでは低ランクの治癒魔術師の役割はどうなるのですか?」
ポーションあれば低ランクの治癒魔術師はいらないってことだよね。
「ポーションも限りはあるからね。だから戦闘が終わったら治癒魔術師の出番になるんだよ」
戦闘中はやることがないと。それって暇だな。
「ティナはティナの思うようにすればいい」
「シル、いいの?」
それで迷惑かけることはない?
「構わない」
シルがいいって言うならばいいかな。
後処理が終わって再出発する。その後は魔物や盗賊に会うことなく野営地点に到着した。私たちのパーティは2番目の見張りになった。夕食を終えて仮眠をとる。時間になって目が覚めた。
「大丈夫か?」
「何とか……」
見張りは何事もなく終わり再び眠りにつく。
翌朝も何とか起きて、シルに準備をしてもらう。
「後少し頑張ろうな」
「うん」
シルにぎゅってしてもらって気合いが入った。
その後は魔物にも会わず盗賊にも会わず街に到着する。
「それでは明後日朝7時にお願いします」
商会の人と別れて冒険者ギルドに向かった。採取以外の依頼はなくギルドを出ようとした時、1組の冒険者が慌てて入ってくる。
「魔物の氾濫だ!」
冒険者ギルドが騒然となった。
「Eランク以上の冒険者は討伐に参加してください!Fランク以下は後方支援をお願いします」
受付の人の声で、飲んでる人も立ち上がり武器を手にする。
「シル、私たちも参加?」
「勿論だ」
魔物が来てるという北の城門を出る。魔法探知に数え切れないくらいの魔物が引っかかった。
「【バフ】」
視界に入る全員にバフを掛ける。
「すげー力が沸いてきたぞ!」
「おおー!これならやれるぞ!」
人が多くて前方確認出来ないため、いい高さまで浮かんだ。
前衛の人達は前に行き、後衛の人達は後ろに陣取る。パーティ関係なく人が入り乱れていた。
「ティナ、遠慮せずにやっていいからな」
「シルは前に行かないの?」
「ティナを1人にはしない」
こんな時まで私のことを考えてくれて幸せな気持ちになる。
魔物が見えてきて前衛の人達が飛び出した。私はなるべく後方を狙って魔法を放つ。シルも隣で魔法を使っていた。倒した魔物を無限収納に入れる。
怪我した人は一旦離れ、治してからまた突撃していく。そんな事を続けていたら、空から大軍のワイバーンがやってきた。
「ワイバーンだ!」
「Aランク対象だぞ!」
ワイバーンの登場に周りが慌てる。AランクといってもSランクに近いAランクで、これだけ沢山いるならばSランク以上の対象になるだろう。矢を放ってる人がいるが少しも傷付けることは出来なかった。
「ティナ、ワイバーンを優先に倒すぞ」
シルに言われて魔法を放つ。魔力特化した私の攻撃は通り1撃で倒せた。落ちてくるワイバーンをそのまま無限収納にしまう。シルは風魔法でワイバーンの首を落とし倒してる。そしてそのままマジックボックスにしまっていた。
ワイバーンを倒し終わったところで魔物の氾濫も終える。
「【治癒】」
怪我した人に治癒魔法を掛けた。
「今回の魔物の氾濫の原因はワイバーンだね」
ハルトさんがやってきて告げる。
「何故、ワイバーンが来たのかが問題だがな」
ワイバーンは憤慨してる感じで襲ってきていた。彼らが怒る原因があったということだ。
「そこは冒険者ギルドも調べてるでしょうし、戻りましょう」
メンバー全員が揃ったところでギルドに行く。
「ティナ、魔物の素材は売っていくからな」
魔物の氾濫時の素材は、その地のギルドに売るのが通例だと教わった。今回は街に被害がなかったけど、被害があった場合はその素材を売って街の復興をするみたいだ。
冒険者ギルドの受付はごった返していて行列が出来ている。漸く順番になった時は日も暮れていた。
「ティナ様はEランクですのでそれぞれのポイントが支援魔術師の参加で100ポイント、支援した人数が138人で138ポイント。魔術師としての参加で100ポイント、倒した魔物ゴブリン46体で460ポイント、ハイウルフ25体で1,250ポイント、ワイバーン52体で26,000ポイント。治癒魔術師としての参加で100ポイント、治癒した人数が41人で41ポイントとなります。魔物の氾濫でのポイントは持ち越し可能となりまして27,533ポイントの持ち越しとなります」
魔物の氾濫はポイント持ち越し出来るのか。確かに残り僅かでアップという時に持ち越し出来なかったら魔物の氾濫が起きた時のモチベーション下がるもんね。
しかも1体でポイントが入るから倒したら倒した分だけ貰えるのはいい。それに最初にEランクって付けたからもしかしたらランクが上がったら貰えるポイントも変わったりするのかもしれない。
次にシルが受付にカードを渡した。
「シルヴェストル様、魔物の氾濫に参加いただきありがとうございました」
それだけ言われてカードを返却された。
「ポイントはないの?」
「SSSランクの上はないからな。貢献したと示すだけだ」
そっか。SSSになればポイントないんだ。
ワイバーンは全てが素材となるため、かなりの金額になった。
「それをパーティメンバーに等分して下さい」
「おい! 待て!」
レオくんに止められる。何がおかしいのと首を傾げた。
「わ、分かった。ありがたくもらう。但し! 1/6ずつだ! お前は3人分の働きをしたんだからな! 3/6がお前の取り分だ!」
お金には困ってないし1/4でも構わないんだけどな。まぁここが落とし所かな。
「ティナちゃん、ありがとうね。これで強い武器が買える」
ロメロくんがやった!と喜んでる。それをソルトさんが止めた。
「ロメロは、まだ成長中だから強い武器や防具は駄目だ」
今買ってもすぐに使えなくなったら勿体無いね。落ち込んでしまったロメロくんにソルトさんが提案する。
「代わりに将来でも使える魔道具を買おうな」
「はい!」
「よし! ランロワに戻ったら魔道具店に行こう」
ロメロくんは笑顔になり嬉しそうにしていた。
「ティナも何か買うか?」
「んー。欲しいものがないの」
私も何か買ってみたいが欲しいものがないし、神通販があるからそこで購入すればいい。お金は貯まっていく一方だ。
【名前】ティナ
【年齢】5歳
【レベル】458
【体力】468
【魔力】∞
【物理攻撃】91
【物理防御】91
【魔法攻撃】45,800,000
【魔法防御】45,800,000
【属性】全属性
【スキル】全属性魔法Lv5、鑑定Lv5、無限収納、マップ
【ユニークスキル】神通販、経験値10,000倍、必要経験値1/100
ワイバーンが強かったからか100以上もレベルが上がってる。最近、上がり幅が低くなってたから嬉しいな。
帰りの護衛は何事もなく終えることが出来た。
誰にも絡まれることなく護衛依頼をこなしたのは初めてだ。
「ティナ様、魔物の氾濫の討伐お疲れ様でした。残りの護衛2件でDランクとなります」
「優先的に護衛を回してもらってもいいかな?」
「勿論です」
ハルトさんが要望すると当然とばかりに受付のお姉さんが答えた。
「今回の魔物の氾濫なのですが、ワイバーンの卵を盗んだ人がいたため起きたものだと報告が来ました」
ワイバーンは集団で子育てする習慣があり、卵を何より大事にしている。それを盗めば襲撃にあうのも納得だ。他の魔物はワイバーンの怒りに逃げるようにして街に来たんだろう。卵は闇市場で売るつもりだったんだろうが、どうやって盗んだのだろうか。
「それで盗った人やワイバーンの卵はどうなるのですか?」
「盗んだ人は犯罪者奴隷となり卵は国の竜騎士に預けられることとなりました」
犯罪者奴隷になれば人権はなくなり一生解放されることはなく生涯を終える。竜騎士はドラゴンを懐け飼育し、竜に乗って戦う組織でそこにはワイバーンもいる。孵す技術もあるため無事に産まれてくるだろう。
◆
私が後2件でランクが上がるということを知ったザンド商会が護衛依頼を出してくれて1件解決して、残り1件も無事に終えることが出来た。
「ティナ様Dランクおめでとうございます。Cランクになるための10,000ポイントは既にクリアしており、17,533ポイントが持ち越しとなります。初級ダンジョン制覇でCランクとなります」
ダンジョンはそれぞれ初回のクリアで初級100ポイント、2回目以降10ポイント。
中級ダンジョンで初回1,000ポイント、2回目以降100ポイント。
上級ダンジョンで初回10,000ポイント、2回目以降1,000ポイント。
聖級ダンジョンで初回100,000ポイント、2回目以降10,000ポイント。
神級ダンジョンで初回1,000,000ポイント、2回目以降100,000ポイント貰える。
ここからは殆どダンジョンに潜っていればポイントは増え続ける。後は条件をクリアするだけだ。
◆
「パーティ組んでくれてありがとうございました」
レオくんたちにお礼を伝える。Dランクになったため私は抜けることになったから。
「おう! こちらこそありがとうな!」
「元の場所にお帰りになる感じですか?」
ここでお別れになるのは、ちょっと寂しいな。
「いや! このままランロワにいることにする。ダンジョンいっぱいあるしな」
初級ダンジョンで6個あるから将来を考えてもランロワにいた方がお得だ。
「それならば、またお会い出来ますね」
同じ拠点にいるし、いつでも会える。
「おう! いつかは追いつくからな!」
「はい。お待ちしております」
彼らのステータスは分からないけど、戦い方をみても安定してるし高ランクの冒険者になれると思う。
いつかまたパーティ組めるといいなぁ。
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