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今日は錬金術ギルドにやってきた。冒険者ギルドに比べて人が少ない。

「錬金術ギルドに登録したいのですが」

登録受付カウンターで30代くらいの男の人に声を掛ける。浮いてる私を驚いた表情で暫く見た後、水晶を出てきた。

「適正があるかどうか判断しますので水晶に触れてください。適正があれば青く無ければ赤く光ります」

ここでも一緒なのね。水晶に触れると青く光った。

「では、こちらに必要事項を記載してください」

出された紙に記入して提出する。

「ありがとうございます。カードを作りますので魔力をこちらに流して下さい」

ここも冒険者ギルドと同じだ。どこのギルドでも一緒なのかな?魔力を流すとカードが出てきて渡される。

【名前】ティナ
【職業】錬金術師
【ランク】G
【ポイント】0

「では錬金術ギルドについて説明します」

GランクからスタートでSSSランクまである。
ポーションや魔道具を錬金術ギルドに売ることでポイントを得られる。
ポーションや魔道具にはランクがあり、それによって貰えるポイントが変わるが、ギルドランクが上がったからといって貰えるポイントが変動することはい。
つまり最低ランクのポーションだけでも時間を掛ければ高位ランクになれる。
未だにないポーションや魔道具のレシピも売ることが出来て、その場合は売上げの1部を受け取ることが出来る。
Bランクからは依頼があるが受けるのも断るのも自由。
但し、依頼を受けて失敗すればポイント減点と違約金が発生する。
Sランクになれば、どこの国にも所属しない中央都市に住めるようになる。
報酬は5%がギルドに5%が街の税金として引かれるが、どこの国、街にいても別途税金が取られることはない。
報酬はカードに貯めることが出来て、そのままカードで買い物が出来る。

冒険者ギルドと同じところもあれば違うところもある。1番大きいのはポーションや魔道具のポイントや報酬がどのランクでも変わらないというところと、ランクアップに条件がないというところだろう。

「何か質問はありますか?」
「大丈夫です」
「沢山、納品してくださいね。特にポーションは万年不足しておりますので」

迷宮都市だからポーションの需要が高いんだろう。

「早速、納品してもよろしいですか?」
「勿論です」

下級ヒールポーションを10本カウンターに出した。受付の男性は1本1本、鑑定の魔道具にあてて品質をチェックしている。

「どれも最高ランクの品質のポーションでした。1本当たり2ポイント20ギルとなります。10ポイント超えましたのでFランクになり残り90ポイントでEランクになります」

ポイント持ち越し出来るんだ。ギルドカードを出してランク変更とお金をカードに入れてもらった。

まだ無限収納の中にはポーションが沢山あるが別の日に売りにこよう。錬金術の方はマッタリと上げていけばいい。

錬金術ギルドを出てザンド商会に行く。ザンド商会は中央通りにあり大きな建物だ。

「こんにちは」
「お嬢ちゃん、どうしたのかな?」
「Eランク冒険者のティナと申します。会長さん?はいらっしゃいますか?」

そういえば名前知らないんだよね。店員さんは確認してきますと言って奥に引っ込んだ。暫くすると戻ってきて中に案内される。心持ち最初より対応が丁寧になってる気がした。

案内された部屋に行くとご夫婦が出迎えてくれる。

「ティナ様、どうぞいらっしゃいました」

席を勧められて座った。奥さんがお茶を煎れてくれる。

「錬金術ギルドに登録しましたのでレシピの件で伺いました。突然の訪問をお詫びします」

頭を下げ謝罪した。本当は先触れを出してから来るのがマナーだが相手の名前を知らないので出しようがなかった。

「ほほほ。構いませんよ」

快く許してもらって商談へとはいる。

今回売るのは柔らかいパン、マヨネーズ、ケチャップ、ドレッシング数種類、コーンスープ、プリン、ヨーグルトのレシピになった。他にも売って欲しいのはあったみたいだが、それはまた今度にってことになった。

提示された金額に驚いたが、今までないレシピなのだから当然だと言われる。

「調味料はそれほど難しくないので、すぐに真似をされると思いますよ」
「そんなことはないですぞ。まず食材を混ぜるという概念がありませんからなぁ」

魔物が跋扈してるため農業なんかはなく、塩や胡椒、野菜などは殆どダンジョン産になっている。ダンジョンは食材を狩り尽くしても翌日には元に戻るという仕様でダンジョンで取れたものを焼くか茹でるかして食べてる。因みに魔物の場合は狩り尽くすと数時間で出現する。

泡立て器もないのかな? と思い出してみると初めて見たと興奮して使用方法を聞かれた。結局泡立て器もいくつか売り大金を手にする。お金は錬金術のギルドカードに入れてもらった。どんな仕組みになってるのかカード同士を合わせてお金のやり取りをした。

ギルドカードで買い物できるのは知ってたけど、今まで物を買ったことが無かったからどうやるのかまでは知らなかった。宿賃は神通販から購入したものだから金貨で払ってる。

たまには街をぶらついて何か買ってみるのもいいかもしれない。



次の日、冒険者ギルドに行くとガルクさんがいた。

「嬢ちゃん、今から大丈夫か? 早速、中央から幹部達が来て嬢ちゃんに会いたいとよ。しかも今回はマスターがわざわざ来てるんだぞ!」

面接か、緊張する……。
しかもトップが来てるなんて尚更だよ。

ガルクさんに着いていくと大きな屋敷に到着する。

「虹色の雫の拠点の1つだ。中に入ってくれ」

中は少し散らかってて男暮らしって感じがした。案内された部屋に入ると男の人が2人いる。そのうちの1人が私に駆け寄ってきて抱き締めた。突然のことに目を白黒させてるが抱っこされたままソファーに男は座る。私は男の膝の上だ。見上げると黒髪虹色瞳した凄いイケメンがいた。肩甲骨までの長さのある髪を緩く縛って流している。虹色の瞳は吸い込まれそうな色気を放っていた。

「あの……」

声を掛けるが男の人は蕩けた瞳で私を見るばかりで何も言わない。困ってガルクさんを見やるがガルクさんは固まったままでいた。

どうしたらいいんだろう?と思ってたらもう1人の男の人が声を発してくれる。

「マスター、その子がどうしたの?」
「番だ。俺の番」

番? 意味がわからず首を傾げた。

「ガルク、よくやった。俺の資産から褒美をやる」
「は、はい!ありがとうございます」
「後は俺が話すから下がれ」

ガルクさんは頭を下げて部屋から出ていく。唯一知ってる人がいなくなってしまったため心細くなった。

「マスター、面談はしないの?」
「ハルトも下がっていいぞ」
「面談は複数人ですることになってるから」
「……チッ」

舌打ちしたよ、超絶イケメンさん。

「名前はティナで良かったかな?」

甘い。声が甘いよ! 他の人に話しかけてる時は威厳があるのに、さっぱりだよ!

「はい。マスターさん」
「俺はシルヴェストル。シルって呼んで?」

いきなり愛称呼び?  でも長いと言いにくいから少し有難いかも。

「シルさん」
「ん? 敬称はいらないよ。呼び捨てで」
「シ、シル……」

超絶イケメンを呼び捨てなんてハードルが高いよ。前世合わせて30年間彼氏なんていたことないから。

「番とは何ですか?」
「敬語もやめて? 番とは人族でいうと伴侶ってことかな」

は、伴侶!?  意味がわかって顔が熱くなる。絶対に真っ赤になってるよ!

「お、お会いしたばかりですよ?」
「敬語ダメ。竜はひと目見ただけで己の番が分かるんだよ」

竜? ドラゴンってこと? つまりは人じゃないということだ。この世界、人族以外にも獣人やエルフがいるのは知っていたが生国でもランロワでも人族以外いなくて見たことがなかった。

「りゅ、竜なの?」
「うん。俺は古代竜エンシェントドラゴン。この虹色の瞳が証拠」

虹色イコール古代竜なんて初めて知った。

「人族以外に初めてお会いしました」
「敬語ダメ。人族以外の種族に嫌悪感ある?」
「驚いただけで、そういうのはないかな」

今世は敬語以外で話したことないから敬語を禁止されると、どう話していいか分からない。

「それは良かった。うちのクランは獣人もいるしエルフもいるからね」

人族以外に会えるのはちょっと楽しみだ。

「ところでティナ?」
「はい?」
「結界魔法を解いてくれるかな? ティナを鑑定したいんだけど結界魔法が邪魔なんだよね」

結界魔法してると鑑定出来ないんだ。これも初めて知った。それにしても私が結界魔法を使用してるって分かったのは凄い。流石は上位ランク者だ。

「大丈夫。ティナの情報は俺だけのものにするから」
「マスター! 幹部達にもある程度は能力を教えて貰わなければ彼女を配属させる時に困るよ!」

シルはハルトさんをチラッと見るがすぐに私を見つめる。

「ティナは俺専属にするから問題ない」
「はぁー。古代竜が独占欲が強いとは聞いてたけど、ここまでとは……。ほんのちょっとでいいから教えて? スキルが何あるかだけでいいから……。分かった分かったよ。属性だけでいいよ」

シルの眼力に負けてハルトさんは意見を変えた。

「さぁ、ティナ。結界魔法を解いて」

言われた通り結界魔法を解く。すると何かが体の中を巡った気がした。それは不快ではなくて、どちらかというと気持ちいい感じがする。

「すごいね、ティナ。5歳でこれはありえないよ」
「なに、なに。マスターが驚くほどなの?僕、知りたいんだけど!?」
「ダメだ」
「属性は?」 
「全部だ」
「ぜ、全部って?全部?」
「ハルトうるさい。俺とティナを邪魔をするなら出ていけ」

ハルトさんは出ていきたくないのか黙った。

「ティナ、俺のステータス見る?」
「見ていいの?」

古代竜のステータスなんて見る機会ないだろうし気になる。

「ふふ。ティナならいいよ」

許可をもらえたのでシルを鑑定する。

【名前】シルヴェストル
【年齢】1047歳
【レベル】832
【体力】723,284,000
【魔力】480,541,000
【物理攻撃】820,255,000
【物理防御】1,325,367,000
【魔法攻撃】566,452,000
【魔法防御】871,286,000
【属性】火、風、水、土、光、闇、無
【スキル】ブレスLv10、威圧Lv10、双剣術Lv10、火魔法Lv10、風魔法Lv10、水魔法Lv8、土魔法Lv8、光魔法Lv7、闇魔法Lv9、無属性魔法Lv10、鑑定Lv10、物理攻撃耐性Lv10、魔法攻撃耐性Lv10、状態異常無効Lv10、自然回復Lv10、アイテムボックス、人化

「うわー! うわー! すごい! 強い!」

見た目が20歳くらいなのに1047歳は驚きだし、レベルもステータスも高い。スキルも最高のLv10が11個もあるし他も高レベルばっかりだ。

私なんて足元にも及ばないよ。種族の違いかもしれないけどこれこそチートだ。

「ティナも強くなれるよ」

魔法ならばね。物理は諦めてるよ。

「シルって長命種?」
「古代竜は何千年と生きるね。万年生きた者もいると聞いたことがあるかな」
「そっか……、私は人族だから先に老いちゃうね」

ちょっと嫌だなって思ってるとシルから爆弾が落とされた。

「ティナは多分、不老不死だよ?」

不老不死? 何で? そんな情報がステータスにあった?ステータスを確認してるがそんなことは何処にも書いてない。

「私、普通の人間だよ?」
「ん? 人種は関係ないよ。魔力量で寿命は決まるからね。知らなかった? まぁ大概が種族によって保有している魔力は決まってるから種族によって寿命が違うって認識が一般だけどね。そこからいくとティナは特別だね」

何度も頷いた。そんなの公爵家の令嬢だった時にも学んでないし、リュヌ様からも聞いてないよ。しかも種族によって魔力量が決まってるのに、それを超えてしまってるなんて……、私は人外?

「それにしてもシルは私の魔力が無限って何で分かったの?」
「あの記号は今は使われてないけど大昔はあったからね」

そうなんだ。そう言われてみればそうだよね。元々ない文字を使うなんてないよね。

「魔力無限? 無限ってどういうこと?」
「ハルト、黙れ。邪魔するな」

ハルトさんに対しての扱いが酷い。それでもハルトさんは大人しく口を閉じた。

「私、不老不死なの?」
「理から行くとそうなると思う」
「成長しないの?」
「15歳から20歳くらいまでは成長するがそこで止まる」

死なないってことに怖くなる。だって周りから置いてかれるということだから。

「古代竜のシルも先に死んじゃうの?」

やばい、泣きそうかも。そう思った時、シルが優しく髪を撫でてくれる。

「いや。番の契りをすれば長命の方に引き摺られる」

初めて聞く単語に首を傾げた。

「番の契り?」
「うん。ティナが15歳になったらしよう?」

番の契りが何かは分からないけど……。

「道ずれにしちゃっていいの? それに会ったばかりなのに」
「俺の番。ずっと一緒にいるよ。それにティナも俺の事嫌ではないでしょ?」

そう言われて赤くなる。そう嫌じゃないんだよね。超絶イケメンだし甘いし。それに何故かドキドキしてるのにシルの腕の中は落ち着く。

「ティナちゃんはうちに入る感じでいいのかな?」
「当然だ」
「それじゃクランのルールを説明するね」

クランで揉め事があった場合は自己解決しないで必ず上に報告する。ギルドに言えば中央都市にいるSランク以上のメンバーに連絡が出来るみたいだ。
報酬の1%が自動的にクランに入る。そのお金でクランの運営している。クランによっては取る金額が違っていて1%から10%の間が多いそうだ。
拠点への家賃は必要なし。食事は基本、各自。
低ランクのうちは武器や防具などの貸出可能。
更に低ランクのうちは申請すればポーションの支給も可能。
冒険者学園の学費も借入可能で卒業してから少しずつ返していけばいい。Bランクになるのには冒険者学園を卒業してないとなれない。貴族の依頼も受けるようになるためマナーなどもここで学ばないといけない。
魔物の氾濫スタンピード時を除き、高位魔物の素材は優先的にクランに売ること。

「何か質問はあるかな?」
「大丈夫です」
「職業は魔術師?」
「全属性だし魔法特化みたいだから支援魔法や治癒魔法も使えると思うが?」

シルの言葉に頷いて肯定する。

「支援魔法は使ったことないけど大丈夫だと思う」
「ん?支援魔術師は登録してないのか?」

支援魔術師? 何それ。

「登録する時、職業欄になんて書いたの?」
「魔術師です」

ハルトさん聞かれ答えた。

「治癒は使える?」
「はい。何度か使ったことあります」
「それなのに治癒魔術師の登録はしてないの?」
「魔術師だけ書けばいいのかと」

1つだけかなぁって思ってたし魔術師って書けばそれでいいと思ってた。だって治癒魔術師とかって知らなかったもん。

「これからクランの加入登録に行くし、そっちもやっておくか。ティナ、俺に支援魔法かけてみて」
「【バフ】」

シルに言われてバフをかけた。シルはステータスを確認してるのか暫く動かなかった。

「マスターどうしたの?」
「あー、使えるな。支援魔法、強力なのが」

なんか歯切れが悪い。何か問題でもあったのだろうか。

「すごいの?」
「お前も掛けてもらえば分かる」
「ティナちゃん、僕にも掛けて」
「【バフ】」

ハルトさんにもバフを掛ける。が、ハルトさんは固まった。おかしいな、デバフを掛けたわけじゃないのに。

「あはは。僕のステータスが3倍になったよ……」
「やっぱりか。俺もだ」

3倍、つまり200%プラスされたということか。

「しかも体力も魔力も強化されてる。こんな支援魔法は聞いたことがないよ。超一流の支援魔術師でさえステータスの上昇率が25%だよ……あはは」

ハルトさんは壊れたように笑った。

「支援魔術師は登録しない方がいいでしょうか?」

問題になるならば、それでもいい。

「いや、登録はしよう。その方がランクが上がりやすいから」

そんな規定があるんだ。分からないでいるとシルが説明してくれた。

「主に影響が出るのが魔物の氾濫スタンピードになる。魔術師として参加すればそれだけで最低でも100ポイント貰え、更に支援魔法を使えば支援魔術師として参加したことになり最低でも100ポイント貰え、終わってからでもいいから治癒魔法使えば治癒魔術師とし参加したことになり最低でも100ポイント貰える」

つまり1回の魔物の氾濫で300ポイントは貰えるということね。それは大きいかも。ランクが上がれば上がるほど必須ポイント増えるし。

「デメリットは悪巧みする連中に狙われるってことと、妬みを買いやすいってことだね」

ハルトさんの言葉に顔がこおばる。

「あはは。そんな顔をしないでよ。大丈夫。ティナちゃんは可愛いから何もしなくても同じだから」

登録しなくても狙われ妬みを買うと……。全然、大丈夫じゃないよ。

「安心しろ、ティナ。俺が守るから」
「うん。お願い」

頼れるものは頼る。私1人では防ぎきれないかもしれないから。

「ティナ、これからよろしくな」

シルが手に出したのは黒い竜の絵が描かれていて竜の胸の位置に虹色の雫の形した鱗のあるエンブレム。それを私のローブの胸の部分に付けた。

「よろしくね。ティナちゃん」
「はい。よろしくお願いします」

シルの膝の上のまま頭を下げる。

「ティナちゃんは錬金術ギルドにも登録してるんだよね?」
「はい。先日、登録しました」
「月に何個か、無理のない程度でいいからクランにもポーションを売ってくれると助かるかな」
「不足してるのですか?」
「何処でもポーション不足に頭を悩ませてるよ。錬金術師のほとんどがランク上がるとポーション作りよりも魔道具作りに精を出すからね」

迷宮都市だからではなく世界的に不足してるのか。多分、有能な魔道具を開発したり作ったりした方がポイントも多く貰えるだろうしお金もいいんだろうな。

私はレシピを売るためだけに登録したようなものだし錬金術ギルドのランクは気にしない。

「分かりました。暇を見つけては作っておきます」

これから守ってもらうんだから貢献出来るところではしておく。

「それではギルドに行くか」

シルが立ち上がりハルトさんが続く。私は抱っこされたまま。

「シル、自分で歩けるよ?」

シルは答えず、私の頭を優しく撫でるだけで歩いていく。どうやら下ろしてはもらえず、このままギルドに行くみたいだ。力では適わないし諦めることにする。

冒険者ギルドに着くと登録受付カウンターに向かう。

「クランへの加入登録と職業の追加登録を頼む」
「ギルドカードとクランカードをお願いします」

クランカードはシルが出し、私はギルドカードを出した。

「ティナ様をクラン虹色の雫への加入でよろしいでしょうか?」
「そうだ」

魔道具に2つのカードを重ねて何かした後、カードを返されるがシルが私のカードを受付けのお姉さんに再度渡す。

「ティナの職業に支援魔術師と治癒魔術師の追加登録を」
「適正判断しますのでこちらの水晶に手をかざして下さい。青くなれば適正あり赤くなれば適正なしとなります」

水晶が2つ差し出された。1つずつ手を翳す。両方とも青くなり適正ありと判断された。ギルドカードを魔道具にあてたあと返される。戻ってきたギルドカードを確認した。

【名前】ティナ
【職業】魔術師、支援魔術師、治癒魔術師
【ランク】E
【クラン】虹色の雫
【ポイント】202

追加されたものが記載されてるのを確かめてから体内にしまう。用事は終わりギルドを出た。

「ティナはどこの宿を使ってるの?」
「スーナの宿だよ」
「チェックアウトして今日から拠点に住もうね」

クランに入ったらそうなるの?

「……お風呂はある?」

重要なことなので聞く。魔法でクリーンはあるけどお風呂に入れないのは無理。

「あるよ」
「それなら大丈夫」

あれだけ大きな屋敷だからあって当然よね。ほっとして胸を撫で下ろした。宿に行きチェックアウトを告げると残ってた宿代を返金される。

拠点に戻ると最上階3階の1番奥の部屋に連れていかれた。途中でハルトさんとは別れた。

「ここが今日から暫くの間、俺とティナの部屋な」
「え? シルも?」
「番だから当然」

番の言葉で片付けちゃうくらい常識なの?古代竜の番ってどうなってるの? 誰かに1から説明してほしい。だってベッド1つしかないんだよ? 一緒に寝るってことだよね? まだ5歳だから何かされるということはないと思うけど。ないよね? あったら変態だよ!?

「さて、ティナ。お話しようか」
「話?」

何の?

「ティナはまだ俺に言ってないことあるでしょ?」

ギクリとしてしまう。何で分かったの? 

「教えて?ティナ」

駄目だ。シルの虹色の瞳には勝てない。
前世があること神界でのこと公爵令嬢で親に捨てられたこと全部を話した。話し終わった後にシルの顔を見ると少しだけ怖い顔をしていた。

もしかして嫌われちゃった?

「ねぇティナ、前世では結婚してた?」
「へ? してないよ」

何のお話し?

「本当に?」
「うん。誰かと付き合ったこともないよ」

正直に告げると額にキスされた。その後、頬にされ最後に軽く口にもされる。

「こういうことも?」
「今初めてされた!」 

赤くなった顔を隠すように両手で覆った。指の間からシルを見ると怖い顔はどこかへ行き、蕩けるような顔をしていた。前世に嫉妬してたんだね。

「嬉しいよ。全部、俺の。俺だけのもの」
「私、5歳だからお手柔らかにお願いします!」

私の年齢を忘れないで! そこ重要だから!

「ところでシル、番の契りって何するの?」
「深く深く愛し合ってる時に噛んで魔力を流し合うんだよ」

話題を変えようとしたけど失敗した。限界以上に恥ずかしくなって倒れそうだ。深くって意味あり気に強調してるし、そういうことをするってことだよね。15歳になったらしようって言ってたのは私が大人になるまで待ってくれるということなのね。ハルトさんがいるところで言ってたから、そんな意味があるとは思わなかったよ。人前で15歳になったらHしようねって言われたってことだよね。やばい! 恥ずかしすぎる。次、ハルトさんに会う時にどんな顔をすればいいの?

「か、噛むってどこを?」
「古代竜同士だと腕を含んで噛むだけど、ティナには無理だから指辺りかな?」

そうだね。腕は私の口では入らない。シルの腕を見ながらしみじみ思った。色々と悶えていたら夕食の時間になった。

「ご飯、食べに行こうか?」
「ご飯?」

どうしよう。神通販のご飯じゃないと無理だよ。

「ティナのためにドラゴンの肉を取り寄せたんだ」

ドラゴンの肉? 興味あるかも。

「シルは共食いにならないの?」
「古代竜の肉じゃないよ? 確かレッドドラゴンだったかな」

同じ竜じゃないの? その辺の定義はどうなってるの?

「ティナ、古代竜と他の竜を一緒にしちゃダメだよ。全くもって別物だからね。竜は俺ら古代竜ほど知能が高くないし凶暴な魔物だからね」

同じ括りにしたら失礼なことなんだね。素直に分かったと伝える。

食堂に着くとハルトさんやガルクさん、他数名がいた。サーシャさんがいなくてホッとする。ハルトさんとは視線を合わせられなかった。

私はシルの膝の上のまま。まさか、このまま食事? 机は高いから1人だと背が足りないけど、このままは恥ずかしいよ。

「俺の番のティナだ。今日から虹色の雫の一員になった」
「よろしくお願いします」

ぺこりと頭を下げて挨拶した。食事が始まると皆、ガツガツと口にドラゴンの肉を運ぶ。

「ティナ、あーん」

あの他の皆さんがいますが?

「古代竜の習性だから諦めた方がいいよ。雄は番の世話をしたがるし、それに幸せを感じてるからね」

ハルトさんに言われ渋々口を開けると、ちょうど良い大きさに切られた肉を放り込まれる。肉はあっという間に口の中で蕩けて美味しかった。なくなるとまた差し出されて口を開けて食べる。塩胡椒だけなのに止まらなくなる美味さだ。この世界のものを食べて美味しいと初めて感じた。気がつけばお腹いっぱいになっていた。

「もう無理」
「ティナは少食だな」

いつものより、かなり多く食べたよ。これ以上食べたら戻す。

「マスター、明日からのティナちゃんの育成のためにSランク以上のメンバー呼んだよ」
「ハルトさん、育成依頼はAランクだと伺っているのですが」
「マスターが自身で育てるつもりだろうから、それを補佐するのにAランクだとついていけないから」

特別処置が取られるということなのね。Sランク以上の人に申し訳ない気持ちになる。

食事が終わり部屋に戻ると、風呂だと続いてる部屋に連れてかれる。まさか……

「1人で入れるよ!」
「大丈夫だから」

何が大丈夫なの? 何も大丈夫でないよ。

悲しいことに力では勝てない。抵抗虚しく風呂まで甲斐甲斐しく世話をされ、出た頃には疲れ果てた。

疲れを取るためのお風呂なのに入る前より断然疲労したんだけど?

恨めし気に睨みつけても、シルは鼻歌を歌って楽しそうにしてる。髪も乾かされ服も着せされ、何から何まで世話をされた。トイレだけは辛うじて1人でさせてもらえた。

ベッドに入ると腕枕され空いてる方の手で髪を梳かれる。

「明日から頑張ろうな」
「色々と教えてね」
「ああ。任せろ」

魔力を流され、その心地良さに眠りについた。


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