上 下
32 / 37

デート

しおりを挟む
わたくしとフォルトゥナート様の休みが被った今日は一緒に街まで出かけることになった。

「この馬車はいいね。アレクシアが作ってくれて有り難いよ」
「喜んでもらえて何よりですわ」
「次はどんなの作るのかな?」
「今は案がないのです」

冷蔵庫は作ったしね。洗濯機は作ってない。洗濯機を作ると下女の仕事がなくなってしまうの。それに、今は専用化粧品を作るのに忙しかったりする。

街について馬車を降りる。先にフォルトゥナート様が降りてわたくしをエスコートしてくれる。

「あの、手……」
「はぐれると困るからね」

指を絡めるように手を繋がれ、鼓動が高鳴る。頬も熱くなってきたわ。

「雑貨屋に行こうか」
「え、ええ……」

緊張のあまり吃ってしまったわ。どうしましょう。

可愛らしい外観の雑貨屋に到着した。

「アレクシア、これはどう?」
「まぁ! 可愛いですわ!」

小さな花が書かれた羽根ペンをフォルトゥナート様に買ってもらった。

「わたくし、次に作りたいものを見つけましたわ」
「何を作るの?」
「一々、インクを付けなくてもよいペンです」

万年筆やボールペンがない。色も黒と青しかない。沢山の色のペンとかあると便利よね。

「それは出来たら素晴らしいね」
「はい! 中級の魔石で作れそうですし、普及も出来ます」

初級の魔石は火を出すや水を出すといった簡単なことしか出来ない。

「出来ましたらフォルトゥナート様に贈りますね」
「いつもありがとうね。アレクシアがいてくれて本当に助かってるよ」
「わたくしと婚約して良かったと思ってくださいます?」
「それは勿論、日々思ってるよ。アレクシアが何の能力がない令嬢でも僕はアレクシアと婚姻したいよ」

それって見た目や中身も好んでいてくれるということよね。嬉しいわ。

「わたくしもフォルトゥナート様とずっと一緒にいたいです」
「うん。良い家庭を作っていこうね」

フォルトゥナート様とだったら素敵な家庭が築けますわ。

その後、服屋に寄ってローブを数着ほど買ってもらった。性能も素晴らしいものでわたくしには勿体ないのではと思ってしまう。

「次はダンジョンデートしようね」
「はい! 行きたいです」

昼食は高級料理店を予約してくれていた。

「アレクシアの美味しそうだね」
「はい。どーぞ」

そう言って魚の煮込みをフォークに刺して差し出した。あれ? これって……。やってしまってから、自分が何をしてるのか理解して顔が赤くなる。

ひっこめようとしたが、その前にフォルトゥナート様が食べた。

あーん。しちゃったよ……。恥ずかしい!

「このステーキも美味しいよ。あーん」

これは、食べないといけないやつかしら?

真っ赤になりながらもステーキを頂いた。恥ずかしすぎて味はさっぱり分からなかった。

その後は顔を熱を下げるのに一杯一杯で何を話したのかさえ覚えていなかった。

昼食のあとは、魔道具店で上級魔石を端から端まで買い占めて帰りについた。

夕食をとってから工房に篭もる。

ペンを作りましょう!

材料を錬金窯に入れて魔力を込めた。淡く光り出来上がる。普通の万年筆は出来たから、次は神級魔石で作る。それは120色のペンで、自分が思った色が出る仕組みになった。ペンの頭に付いてる小さな魔石を交換することで永久的に使用可能ですの。

出来上がったものをお父様に見せに行く。

「久しぶりに何かを作ってきたのか?」
「そうですの」

ペンをテーブルの上に置く。

「普通の万年筆と120色のペンで出したい色を思い浮かべながら使うものです」

紙に実際に書いてみる。

「120色だと!?」
「ええ。120色のほうは神級ですが、こちらの万年筆は魔石も中級ですから普及も出来ますわ」
「画家も欲しがるな。万年筆というやつは中級なら城の錬金術師でも余裕で作れるだろう。レシピを売ろう」

わたくしだけでは作りきれないからそれがいいわね。その場でレシピを書いてお父様に渡した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

聖女じゃないからと婚約破棄されましたが計画通りです。これからあなたの領地をいただきにいきますね。

和泉 凪紗
恋愛
「リリアーナ、君との結婚は無かったことにしてもらう。君の力が発現しない以上、君とは結婚できない。君の妹であるマリーベルと結婚することにするよ」 「……私も正直、ずっと心苦しかったのです。これで肩の荷が下りました。昔から二人はお似合いだと思っていたのです。マリーベルとお幸せになさってください」 「ありがとう。マリーベルと幸せになるよ」  円満な婚約解消。これが私の目指したゴール。  この人とは結婚したくない……。私はその一心で今日まで頑張ってきた。努力がようやく報われる。これで私は自由だ。  土地を癒やす力を持つ聖女のリリアーナは一度目の人生で領主であるジルベルト・カレンベルクと結婚した。だが、聖女の仕事として領地を癒やすために家を離れていると自分の妹であるマリーベルと浮気されてしまう。しかも、子供ができたとお払い箱になってしまった。  聖女の仕事を放り出すわけにはいかず、離婚後もジルベルトの領地を癒やし続けるが、リリアーナは失意の中で死んでしまう。人生もこれで終わりと思ったところで、これまでに土地を癒した見返りとしてそれまでに癒してきた土地に時間を戻してもらうことになる。  そして、二度目の人生でもジルベルトとマリーベルは浮気をしてリリアーナは婚約破棄された。だが、この婚約破棄は計画通りだ。  わたしは今は二度目の人生。ジルベルトとは婚約中だけれどこの男は領主としてふさわしくないし、浮気男との結婚なんてお断り。婚約破棄も計画通りです。でも、精霊と約束したのであなたの領地はいただきますね。安心してください、あなたの領地はわたしが幸せにしますから。 *過去に短編として投稿したものを長編に書き直したものになります。

婚約破棄されたので、聖女になりました。けど、こんな国の為には働けません。自分の王国を建設します。

ぽっちゃりおっさん
恋愛
 公爵であるアルフォンス家一人息子ボクリアと婚約していた貴族の娘サラ。  しかし公爵から一方的に婚約破棄を告げられる。  屈辱の日々を送っていたサラは、15歳の洗礼を受ける日に【聖女】としての啓示を受けた。  【聖女】としてのスタートを切るが、幸運を祈る相手が、あの憎っくきアルフォンス家であった。  差別主義者のアルフォンス家の為には、祈る気にはなれず、サラは国を飛び出してしまう。  そこでサラが取った決断は?

ゲームと現実の区別が出来ないヒドインがざまぁされるのはお約束である(仮)

白雪の雫
恋愛
「このエピソードが、あたしが妖魔の王達に溺愛される全ての始まりなのよね~」 ゲームの画面を目にしているピンク色の髪の少女が呟く。 少女の名前は篠原 真莉愛(16) 【ローズマリア~妖魔の王は月の下で愛を請う~】という乙女ゲームのヒロインだ。 そのゲームのヒロインとして転生した、前世はゲームに課金していた元社会人な女は狂喜乱舞した。 何故ならトリップした異世界でチートを得た真莉愛は聖女と呼ばれ、神かかったイケメンの妖魔の王達に溺愛されるからだ。 「複雑な家庭環境と育児放棄が原因で、ファザコンとマザコンを拗らせたアーデルヴェルトもいいけどさ、あたしの推しは隠しキャラにして彼の父親であるグレンヴァルトなのよね~。けどさ~、アラブのシークっぽい感じなラクシャーサ族の王であるブラッドフォードに、何かポセイドンっぽい感じな水妖族の王であるヴェルナーも捨て難いし~・・・」 そうよ! だったら逆ハーをすればいいじゃない! 逆ハーは達成が難しい。だが遣り甲斐と達成感は半端ない。 その後にあるのは彼等による溺愛ルートだからだ。 これは乙女ゲームに似た現実の異世界にトリップしてしまった一人の女がゲームと現実の区別がつかない事で痛い目に遭う話である。 思い付きで書いたのでガバガバ設定+設定に矛盾がある+ご都合主義です。 いいタイトルが浮かばなかったので(仮)をつけています。

ロリ悪役令嬢、6歳にしてざまあを極めます!

 (笑)
恋愛
6歳にして悪役令嬢に転生した少女は、幼い外見に反して前世の知識と知恵を駆使し、周囲を驚かせる存在として成り上がっていく。無邪気に見える仮面の裏で、運命を変えようと奮闘する彼女の策略と、子供扱いする周囲の反応が交錯する中、果たして彼女は悪役令嬢としての道を切り拓けるのか――?

どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~

涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!

悪役令嬢より取り巻き令嬢の方が問題あると思います

恋愛
両親と死別し、孤児院暮らしの平民だったシャーリーはクリフォード男爵家の養女として引き取られた。丁度その頃市井では男爵家など貴族に引き取られた少女が王子や公爵令息など、高貴な身分の男性と恋に落ちて幸せになる小説が流行っていた。シャーリーは自分もそうなるのではないかとつい夢見てしまう。しかし、夜会でコンプトン侯爵令嬢ベアトリスと出会う。シャーリーはベアトリスにマナーや所作など色々と注意されてしまう。シャーリーは彼女を小説に出て来る悪役令嬢みたいだと思った。しかし、それが違うということにシャーリーはすぐに気付く。ベアトリスはシャーリーが嘲笑の的にならないようマナーや所作を教えてくれていたのだ。 (あれ? ベアトリス様って実はもしかして良い人?) シャーリーはそう思い、ベアトリスと交流を深めることにしてみた。 しかしそんな中、シャーリーはあるベアトリスの取り巻きであるチェスター伯爵令嬢カレンからネチネチと嫌味を言われるようになる。カレンは平民だったシャーリーを気に入らないらしい。更に、他の令嬢への嫌がらせの罪をベアトリスに着せて彼女を社交界から追放しようともしていた。彼女はベアトリスも気に入らないらしい。それに気付いたシャーリーは怒り狂う。 「私に色々良くしてくださったベアトリス様に冤罪をかけようとするなんて許せない!」 シャーリーは仲良くなったテヴァルー子爵令息ヴィンセント、ベアトリスの婚約者であるモールバラ公爵令息アイザック、ベアトリスの弟であるキースと共に、ベアトリスを救う計画を立て始めた。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。 ジャンルは恋愛メインではありませんが、アルファポリスでは当てはまるジャンルが恋愛しかありませんでした。

次女ですけど、何か?

夕立悠理
恋愛
美人な姉と、可愛い妹。――そして、美人でも可愛くもない私。  道脇 楓(どうわきかえで)は、四歳の時に前世の記憶を思い出した。何とかそれに折り合いをつけた五歳のころ、もっと重要なことを思い出す。この世界は、前世で好きだった少女漫画の世界だった。ヒロインは、長女の姉と三女の妹。次女の楓は悪役だった。  冗談じゃない。嫉妬にさいなまれた挙句に自殺なんてまっぴらごめんだ。  楓は、姉や妹たちに対して無関心になるよう決意する。  恋も愛も勝手に楽しんでください。私は、出世してバリバリ稼ぐエリートウーマンを目指します。  ――そんな彼女が、前を向くまでの話。 ※感想を頂けると、とても嬉しいです ※話数のみ→楓目線 話数&人物名→その人物の目線になります ※小説家になろう様、ツギクル様にも投稿しています

強すぎる力を隠し苦悩していた令嬢に転生したので、その力を使ってやり返します

天宮有
恋愛
 私は魔法が使える世界に転生して、伯爵令嬢のシンディ・リーイスになっていた。  その際にシンディの記憶が全て入ってきて、彼女が苦悩していたことを知る。  シンディは強すぎる魔力を持っていて、危険過ぎるからとその力を隠して生きてきた。  その結果、婚約者のオリドスに婚約破棄を言い渡されて、友人のヨハンに迷惑がかかると考えたようだ。  それなら――この強すぎる力で、全て解決すればいいだけだ。  私は今まで酷い扱いをシンディにしてきた元婚約者オリドスにやり返し、ヨハンを守ろうと決意していた。

処理中です...