20 / 259
第1章
武蔵ワイナリー 小川小公子/小川猫小公子/杉樽は及ばざるが如し(寝落ち)
しおりを挟む
「おじゃましまーす」
ニコニコとほほ笑みながら、玄関を入ってくる瀬戸さん。
私は、何本かのワインと保冷バッグをキッチンにおいた。
(ワインを全部は車から持ってこれなかった。)
「片付けるからちょっと待っててくださいね。」
リビングに散らかっている着替えや本を片付ける。
一人暮らしとしてはちょっと広めの1LDK。
家賃は安くはないが、まぁしょうがない。
「結構広いですね。」
「さぁ、どうぞ。」
とソファに座ってもらう。
「ちょっと待っていてくださいね。あと瀬戸さんが買ったチーズとかはとりあえず冷蔵庫に入れますね。」
そう言って、キッチンに入る。
冷蔵庫にチーズをしまう。
そして、自分用に買ったカマンベールチーズと、トマトを取り出す。
あとは買ってきたピザも出そう。
ピザはオーブンに入れて温める。
その間に、トマトとチーズを切って、お皿に交互に重ねる。
エクストラバージンオイルを上からかけて胡椒を散らす。
皿の周囲にバルサミコ酢を数滴散らせば完成。
ピザも出来上がったようだ。
「お待たせしました。おつまみにカプレーゼとピザを持ってきました。」
「うわぁ、すごいですね、今作ったんですか?あっという間ですね。」
「まぁ、ピザはアトリエドフロマージュで買ってきたものを温めただけなんですけどね。」
「すごいですね、私は、全然料理できないので尊敬します。」
いや・・・料理というほどのことはしていないんだけど・・・
「さて、ワインの試飲ですね、酔っ払うと大変なのでちょっとずつですよ。」
「はい!楽しみです。」
まずは、先ほど行った埼玉県小川町の武蔵ワイナリー。小川小公子から。
瓶の封を切り、ふたを開けてからワイングラスに指一本分ほどだけ注ぐ。
「この栓。ガラスなんですか? きれいですね。」
「そうなんですよ、珍しいんですけどね。」
このワインのふたはガラス製。コルクやスクリューキャップではない。
非常に珍しいものだ。
「さぁ、飲んでみて下さい。」
「ありがとうございます。」
ニコニコと笑って、ワイングラスを受け取る。
笑顔はかわいいんだけどなぁ。
先ほどまで、助手席で駄々をこねる頑固な女の子ところっと変わっている。
「すごい、美味しいです。なんていうか果物感がすごいです。渋くも酸っぱくもないし。でも甘すぎなくて。」
「さっきのジュースと比べてどうですか?」
「香りがもっと華やかです、味も結構変わるんですね」
「じゃあ、こちらもちょっとだけ飲んでみます?」
「はい、ぜひお願いします。」
同じワイナリーのラベルがそっくりなワイン。小川猫小公子。
こちらは金色のスクリューキャップだ。
「このワインはさっきのワインと同じ原料なんですけど。違うところで作られているそうなんですよ。」
じつはどちらも委託製造されたワイン。武蔵ワイナリーはできたばかりなので、まずは委託製造で作ったらしい。
こちらも新しいグラスにちょっとだけ入れた。
「いただきます。・・・やっぱり凄く果物感があります。あれ?」
「どうしました?」
「さっきの、もうちょっと飲ませてもらえませんか?」
「いいですよ」
ちょっとだけ、グラスに注ぐ。
それぞれのグラスを飲んでみて、首をひねっている。
「微妙に違うんですね、両方の見比べないとわからないくらいですね。」
「まぁそうですね、同じ原料でも微妙に変わるのが面白いところなんですけどね。」
カプレーゼを食べながら答える。
やはり、アトリエドフロマージュのチーズはおいしい。
賞味期限が短いから早く食べないといけないのが残念だ。
瀬戸さんもカプレーゼを食べる。
「うわぁ。おいしいですね。こんなおいしい料理をすぐ作れちゃうんですね。ワインにも合います。」
「いや、これはチーズがおいしいんですよ。」
「もうちょっとだけ・・こちらのワインいただいてもいいですか?」
小川小公子を指さす。どうやら気に入ったらしい。
「ちょっとだけですよ。」
グラスに注いだワインを飲み、カプレーゼを食べる。
「ほんと、とっても美味しいです・・」
それはよかった。
さて、そろそろ帰ってもらおうかな。
送っていくためにも、私は全く飲んでいないんだが。
「じゃあ、そろそろ・・・」
「そういえば、さっきのワイナリーでもう一種類買っていましたよね。それはどんなワインなんですか?」
やばい・・
「えーっと、”杉樽は及ばざるが如し”というワインですよ。」
「へえ、見せてもらってもいいですか?」
しぶしぶ、キッチンからワインの瓶を持ってくる。
「へえ・・・きれいなラベルなんですね。」
独創的な絵が描かれている美しいラベルである。実はそのラベルは2種類あり、それぞれ異なる絵が描かれている。
「これも、小公子で作られているですね。」
「そうですね、このワイナリーの特徴ですね。」
どうにかごまかして、帰らせようと考える。どうしたらいい・・・?
「あの・・・このワイン、ちょっとだけ飲ませてもらえませんか?」
まじか・・・
せっかく2種類のラベルをそろえたのに・・・
「だめですか・・・?」
上目遣いにうるうるとうるんだ瞳で見上げてくる。
結局、開けることになってしまった・・・
「ぜんぜん違う味なんですね。」
「このワインは、名前の通り杉の樽で熟成しているから、その成分が香りや味にしみ込んでいるんですよ。」
「ちょっと渋い?でもおいしいです」
そう言って、小川小公子と飲み比べている。
もう結構飲んでいるのでは?
嬉しそうにワインを飲む女性の前で素面でワインを飲むことができない。
何の拷問なんだろう?
瀬戸さんは、ようやくワイングラスをテーブルに置いて、ソファに深く座りなおした。
「ほんと美味しかったです。それに、今日は楽しかったです。」
「それはよかった。」
「ほんとに、ありがとうございます。」
瀬戸さんはそういうと、にへら っと笑った。
そして、うつむいた。
「瀬戸さん、そろそろ帰りませんか?送っていきますよ。」
返事がない。
「瀬戸さん?」
すーっ・・・・すーっ
あ・・・・この娘、寝落ちしやがった。
そのあと、起こそうとして何度も呼び掛けたが、全く起きなかった。
ニコニコとほほ笑みながら、玄関を入ってくる瀬戸さん。
私は、何本かのワインと保冷バッグをキッチンにおいた。
(ワインを全部は車から持ってこれなかった。)
「片付けるからちょっと待っててくださいね。」
リビングに散らかっている着替えや本を片付ける。
一人暮らしとしてはちょっと広めの1LDK。
家賃は安くはないが、まぁしょうがない。
「結構広いですね。」
「さぁ、どうぞ。」
とソファに座ってもらう。
「ちょっと待っていてくださいね。あと瀬戸さんが買ったチーズとかはとりあえず冷蔵庫に入れますね。」
そう言って、キッチンに入る。
冷蔵庫にチーズをしまう。
そして、自分用に買ったカマンベールチーズと、トマトを取り出す。
あとは買ってきたピザも出そう。
ピザはオーブンに入れて温める。
その間に、トマトとチーズを切って、お皿に交互に重ねる。
エクストラバージンオイルを上からかけて胡椒を散らす。
皿の周囲にバルサミコ酢を数滴散らせば完成。
ピザも出来上がったようだ。
「お待たせしました。おつまみにカプレーゼとピザを持ってきました。」
「うわぁ、すごいですね、今作ったんですか?あっという間ですね。」
「まぁ、ピザはアトリエドフロマージュで買ってきたものを温めただけなんですけどね。」
「すごいですね、私は、全然料理できないので尊敬します。」
いや・・・料理というほどのことはしていないんだけど・・・
「さて、ワインの試飲ですね、酔っ払うと大変なのでちょっとずつですよ。」
「はい!楽しみです。」
まずは、先ほど行った埼玉県小川町の武蔵ワイナリー。小川小公子から。
瓶の封を切り、ふたを開けてからワイングラスに指一本分ほどだけ注ぐ。
「この栓。ガラスなんですか? きれいですね。」
「そうなんですよ、珍しいんですけどね。」
このワインのふたはガラス製。コルクやスクリューキャップではない。
非常に珍しいものだ。
「さぁ、飲んでみて下さい。」
「ありがとうございます。」
ニコニコと笑って、ワイングラスを受け取る。
笑顔はかわいいんだけどなぁ。
先ほどまで、助手席で駄々をこねる頑固な女の子ところっと変わっている。
「すごい、美味しいです。なんていうか果物感がすごいです。渋くも酸っぱくもないし。でも甘すぎなくて。」
「さっきのジュースと比べてどうですか?」
「香りがもっと華やかです、味も結構変わるんですね」
「じゃあ、こちらもちょっとだけ飲んでみます?」
「はい、ぜひお願いします。」
同じワイナリーのラベルがそっくりなワイン。小川猫小公子。
こちらは金色のスクリューキャップだ。
「このワインはさっきのワインと同じ原料なんですけど。違うところで作られているそうなんですよ。」
じつはどちらも委託製造されたワイン。武蔵ワイナリーはできたばかりなので、まずは委託製造で作ったらしい。
こちらも新しいグラスにちょっとだけ入れた。
「いただきます。・・・やっぱり凄く果物感があります。あれ?」
「どうしました?」
「さっきの、もうちょっと飲ませてもらえませんか?」
「いいですよ」
ちょっとだけ、グラスに注ぐ。
それぞれのグラスを飲んでみて、首をひねっている。
「微妙に違うんですね、両方の見比べないとわからないくらいですね。」
「まぁそうですね、同じ原料でも微妙に変わるのが面白いところなんですけどね。」
カプレーゼを食べながら答える。
やはり、アトリエドフロマージュのチーズはおいしい。
賞味期限が短いから早く食べないといけないのが残念だ。
瀬戸さんもカプレーゼを食べる。
「うわぁ。おいしいですね。こんなおいしい料理をすぐ作れちゃうんですね。ワインにも合います。」
「いや、これはチーズがおいしいんですよ。」
「もうちょっとだけ・・こちらのワインいただいてもいいですか?」
小川小公子を指さす。どうやら気に入ったらしい。
「ちょっとだけですよ。」
グラスに注いだワインを飲み、カプレーゼを食べる。
「ほんと、とっても美味しいです・・」
それはよかった。
さて、そろそろ帰ってもらおうかな。
送っていくためにも、私は全く飲んでいないんだが。
「じゃあ、そろそろ・・・」
「そういえば、さっきのワイナリーでもう一種類買っていましたよね。それはどんなワインなんですか?」
やばい・・
「えーっと、”杉樽は及ばざるが如し”というワインですよ。」
「へえ、見せてもらってもいいですか?」
しぶしぶ、キッチンからワインの瓶を持ってくる。
「へえ・・・きれいなラベルなんですね。」
独創的な絵が描かれている美しいラベルである。実はそのラベルは2種類あり、それぞれ異なる絵が描かれている。
「これも、小公子で作られているですね。」
「そうですね、このワイナリーの特徴ですね。」
どうにかごまかして、帰らせようと考える。どうしたらいい・・・?
「あの・・・このワイン、ちょっとだけ飲ませてもらえませんか?」
まじか・・・
せっかく2種類のラベルをそろえたのに・・・
「だめですか・・・?」
上目遣いにうるうるとうるんだ瞳で見上げてくる。
結局、開けることになってしまった・・・
「ぜんぜん違う味なんですね。」
「このワインは、名前の通り杉の樽で熟成しているから、その成分が香りや味にしみ込んでいるんですよ。」
「ちょっと渋い?でもおいしいです」
そう言って、小川小公子と飲み比べている。
もう結構飲んでいるのでは?
嬉しそうにワインを飲む女性の前で素面でワインを飲むことができない。
何の拷問なんだろう?
瀬戸さんは、ようやくワイングラスをテーブルに置いて、ソファに深く座りなおした。
「ほんと美味しかったです。それに、今日は楽しかったです。」
「それはよかった。」
「ほんとに、ありがとうございます。」
瀬戸さんはそういうと、にへら っと笑った。
そして、うつむいた。
「瀬戸さん、そろそろ帰りませんか?送っていきますよ。」
返事がない。
「瀬戸さん?」
すーっ・・・・すーっ
あ・・・・この娘、寝落ちしやがった。
そのあと、起こそうとして何度も呼び掛けたが、全く起きなかった。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
こじらせ中年の深夜の異世界転生飯テロ探訪記
陰陽@2作品コミカライズと書籍化準備中
ファンタジー
※コミカライズ進行中。
なんか気が付いたら目の前に神様がいた。
異世界に転生させる相手を間違えたらしい。
元の世界に戻れないと謝罪を受けたが、
代わりにどんなものでも手に入るスキルと、
どんな食材かを理解するスキルと、
まだ見ぬレシピを知るスキルの、
3つの力を付与された。
うまい飯さえ食えればそれでいい。
なんか世界の危機らしいが、俺には関係ない。
今日も楽しくぼっち飯。
──の筈が、飯にありつこうとする奴らが集まってきて、なんだか騒がしい。
やかましい。
食わせてやるから、黙って俺の飯を食え。
貰った体が、どうやら勇者様に与える筈のものだったことが分かってきたが、俺には戦う能力なんてないし、そのつもりもない。
前世同様、野菜を育てて、たまに狩猟をして、釣りを楽しんでのんびり暮らす。
最近は精霊の子株を我が子として、親バカ育児奮闘中。
更新頻度……深夜に突然うまいものが食いたくなったら。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる