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第2章

電磁加速砲—レールガン—

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「あ、あれ!な、何をしているですっっ!?
り、猟奇的過ぎるですっ!!完全にサイコパスですぅ!!」


ガキンチョのヒステリックな声が響く。
うるせーな。ゴブリン共に気付かれんだろ馬鹿が。
俺が何してんのかって見りゃわかんだろ。岩食ってんだよ。
他に何してる様に見えんだよ?
弾丸装填してんだよ。常識だろ。ジョーシキ。


「彼はね、常識を覆す魔法使いなのかも知れない。
詠唱や魔法陣を一切使わないから魔法使いじゃないかも知れない。
……ゴメン。本当は全く解らない(笑)

おかしな言動と猟奇的行動が目立つから
精霊か悪魔とか……何か良からぬ物に取り憑かれてるんじゃないかと少し心配なんだ。
小さい子には本当に怖いよね。僕も怖いと感じる事が沢山あるし。
打ち解けてみると…と言うか慣れると彼を理解する事が少しは出来るかも知れないね。

そして彼は時々…本当に極稀にだけど
到底人間には起こせない事を平然とやってのける事があるんだ。
そう。奇跡って言うヤツさ。
だからね、彼を言葉で表現するのだとしたら

彼は…奇跡を起こす者自称マジックキャスターなんだと僕は勝手に思っているよ。
こんな説明で彼を信じる事なんて出来ないと思うけどね。まぁ見ててよ。」


「ま、魔法使いなら分かるのですー!!
で、でもでもあんな猟奇的な原始人みたいなのが魔法使いとは思えないのですぅ…

ルシエラは魔法使いは世の為人の為にその力を使う良い人達だって勉強したです。
いっぱいいっぱい勉強したですー!!
あんな猟奇的な原始人みたいなのが魔法使いとは到底思えないのですー!!絶対サイコパスですー!!」


※ ※ ※


弾丸補給を済ませユラリと立ち上がる。
大きく息を吸ってーー、吐いてーー、



「ですですうるせーよっ!!勝手に俺の事説明してんじゃねーよ!!
トンチキ共が!!黙ってそこで見てろ!!
猟奇的でサイコパスって俺の事馬鹿にしてんだろ?な?あ?ガキンチョ?
テメーからプシャらせて血祭りにすんぞ!!」


頭にカッ!!と血が昇りゴブリンに向けるべき殺意をガキンチョにぶつけた。
「ヒッ、ヒグゥ…完全に悪魔に取り憑かれてるですぅ…」と泣きベソで小さく呟いていた。


かったるい子守はロドリゲスに任せ
林の中からピョーンっと躍り出た俺はゴブリン達が暴れている方向にケツを向け、四つん這いになる。

へへへ、全然俺なんか眼中に入ってねーか。
まぁそうだよな。だからお前らはそこで終わるんだよ。

ペロリと腰巻きを捲り上げ、更に射角調整を行った。




———ストレスチャージ0% 開始———



ああ、言われなくても分かってんだよ?
俺、みっともねぇ格好してんだろ。
猿ですら思うとよ!!博多弁かよ!!只の入力ミスだよ!!
こっち見んなよ!!ほっとけよ!!
臭い、汚い、気味悪い、文法がおかしい、だから何だよ!?
不細工が不恰好して必死に生きようと足掻いてんだよ!!
期待してた恩恵はデリケートな部分でしか発動しねーんだよ!!
気持ち良くねーよ!!ちょっと恥ずかしいんだよ!!
少しそれに慣れてきて…感覚がズレてきてんの分かってんだよ!!
ワケも分からず毎日毎日……勢いに任せて走り続けねーと息が詰まるんだよ!!死にそうになるんだよ!!俺は鮫かっ!!
聖剣振り回してハーレム作ったりしてーのによ、
ケツやチ◯ポしか振り回せねえから仲間ガチムチしか寄ってこねぇし怖いんだよ!!
不安なんだよ!!虚勢張ってんだよ!!
実は人目につかないところでシクシク泣いてんだよ!!
こんな事しか出来ねー俺に!!
何が異世界だ馬鹿野郎!!マジで死ねよ!!
お前ら全員まとめてブッ殺してやる!!




———ストレスチャージ120% 完了———




「行くぜ!!圧縮空気発射+岩石生成レ ー ル ガ ン    発射ァァァッーーー!!!!」
※注  電磁加速なんて全くしてません



 ※ ※ ※



射角を調整し無数の岩石弾をバフンバフン放つ。
緑色の肌をしたゴブリン共を文字通り血祭りに上げる。
銀色の鎧着てる騎士もかなり巻き込んじゃいるが、知ったこっちゃねぇ。
死にたくなけりゃ必死にダンス踊れや。
ドンドン行くぜ?もっと行くぜ?派手に脳漿ブチ撒けなァ!!




「ギィィーーーッ!」
「ッップッシャーーー!」
「たすっ、ッップッシャーー!」
「ギャァワーーーッ!」
「ギッ…ッップッシャーー!」
「ンギッモッ…ッップッシャーー!」
「ちょまッップッシャーー!」
「イッ!…ッップッシャーー!」
「ほ、砲撃!?ッッップッシャーー!」
「ギギ?…ップッシャーー!」



圧縮空気発射+岩石生成レールガンの展開を解除し土煙の隙間から見える景色は凄まじく、
つい先程までは疎らな木々に囲まれた閑静な街道だったのだが

今では歩いて通る事すら億劫になるぐらい地面はエグれ荒れ果てている。
転がる無数の岩石と辺り一面に広がった緑色と赤色のミンチによる彩りに
ゴブリンに殺された騎士達の鎧や武器も四方八方へ砕け飛んで
悪魔的調和をこれでもかと醸し出しており、立ち入ろうとする気力を一瞬で萎えさせてくれるだろう。
血溜まりの中を四肢欠損したナニカ達が這いつくばる姿がチラホラと見える。
ところどころから上がる呻き声と言うトッピングを添え今夜の夢に出て来る事を保証しよう。


まさに阿鼻叫喚の地獄絵図ってヤツだな。


チラリとロドリゲスの顔を伺うと血色が抜けて真っ白な顔をしながらも
ガキンチョが悪夢にうなされないよう目を隠していたので思わず吹き出してしまった。

この地獄絵図を作り出した本人が言うのもなんだが、アレだ。
ちょっとばかりプシャり過ぎたかな?やり過ぎたかな?なんてな。
ガキンチョがPTSDになっても本人希望の案件だから俺は知らんがな。

いやしかし、いい事したから清々しい気分になんね。
景気付けにオマケの数発ぶっ放し生き残りの苦しみを解放してあげましたとさ。チャンチャン。



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